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魔王は誘われてみる4

 時はお肉購入から数分後。

 場所はルコッテの街――公園。

 現在、ジークとブランはそこのベンチに、並んで座っている。


「ん……お肉」


 と、瞳をキラキラ言ってくるのはブランだ。

 彼女のキラキラ瞳は、肉が沢山入った保存袋に向けられているのが容易にわかる。

 きっと、早く肉――ステーキ串を食べたいに違いない。


 ジークはそんな事を考えた後、袋からステーキ串を取り出す。

 そして、それをブランへと渡そうとすると。


「ん……」


 ふるふる。

 と、首を左右にふって来るブラン。

 彼女はジトっとした様子で、ジークへと言ってくる。


「ブラン、食べさせっこがいい。だから、まおう様に食べさせてもらいたい……ダメ?」


「それで思い出になるのか?」


「ん……一生の思い出になる」


 それならば、答えは決まっている。

 ジークはステーキ串を、ブランの口の前へと持っていく。

 すると。


 ぱくりっ。


 ステーキ串へと噛みついて来るブラン。

 彼女はそのままステーキを一切れ口に含むと、もくもく口を動かし始める。

 まるで小動物のようで、非常にかわいらしい。


(転生前のブラン――竜姫ホワイト・ルナフェルトと食事をした時は、牛を丸ごと食べていたからな)


 とても新鮮な感覚だ。

 などなど、ジークがそんな事を考えていると。


「まおう様……!」


 きらきら。

 と、瞳を輝かせながらジークを見てくるブラン。

 見れば、いつの間にやらステーキ串から、肉が消えていた。


 要するに。

 ブランはおかわりを希望しているに違いない。


 よろしい。


 ジークは魔王。

 ブランやアイリス含め、全ての魔物の頂点に立つ存在。

 仲間や部下たちの要求に応え、器を見せてやるのもその定め。


「ほら、ブラン。『あーん』だ」


「ん……あーん」


 ぱくりっ。

 と、再びステーキ串をはみはみするブラン。

 何度見ても可愛らしい。


 故にジークは出来心から、空いている手をブランの頭へと伸ばす。

 そして。


 なでなで。

 なでなでなで。


「?」


 ひょこり。

 と、上目遣いで首をかしげてくるブラン。

 もくもくと、ほっぺが動き続けているのが、余計に可愛さを引き立てる。


(五百年前は、この感情はわかなかった。きっと、アルと混じった事で心が変化したんだろうな)


 などなど。

 ジークはそんな事を考えながらも、なでなでを続ける。

 ステーキ串を与えながら、ただひたすらに。


 なでなで。

 なでなでなで。


 すると次第にブランさん。

 瞳を細め、気持ちよさそうに――。


「ん……♪」


 と、笑みを浮かべてくれる。

 きっと、喜んでくれているに違いない。


 少しでも思い出になったのなら、何よりだ。

 これで魔王のプライドは守られ――。


「まおう様」


 と、突如キリっとブランさん。

 彼女はジトっとジークの方を見て気ながら、言葉を続けてくる。


「ブラン、大変な事に気がついた……食べさせっこなのに、まおう様に食べさせてない」


「俺はいいよ。酒場でも食べたから、そんなにお腹すいてない」


「ダメ……ブランだけ食べさせてもらって、まおう様に食べさせないのは無礼。重大な背信行為……ブランはそんな事許せない」


「背信行為……」


 念のため釈明しておくが。

 五百年前含め、ジークはそんな事で背信行為にしたりしない。

 ただ単に、ブランの中での背信行為基準が低いだけだ。


(まぁそれもこれも、俺の事を思ってくれているからだろうけど)


 と、そこまで考えた。

まさにその時。


「まおう様、『あーん』」


 と、聞こえてくるブランの声。

 同時、ジークの方へとステーキ串が差し出されるのだった。


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