表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/207

淫魔の?助け6

「嫁の精神安定は、夫である私が守りますとも!」


 と、ここでアイリスはすかさず周囲を見回す。

 その理由は簡単。


「私はバカじゃありません! これまでのパターンから、しっかり学習しているのです!」


 この後、起きる展開は簡単だ。

 どうせ冒険者に捕まっていた被害者なりが、アイリスに感謝してくるのだ。

 面倒ったらしょうがない。


(今度ばかりは、阻止してみせますとも! 近づいてきた瞬間に、精神操作魔法……は使いませんけど、蹴り飛ばすくらいはしますよ!)


 と、そんな事を考えるアイリス。

 彼女は構えを取り、なおも周囲を見回し続ける。

 だがしかし。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


 なにもおこらない。

 要するに、アイリスの気にしすぎだったに違いない。

 ここに被害者は居なかったのだ――居るのは冒険者のみ。


 などなど。

 そうこうしている間に、冒険者達も相打ちなりで全滅。


「またしても、完全勝利じゃないですか!」


 となれば、あとすることは決まっている。

 と、アイリスは手をワキワキさせ、倉庫の奥に居る猫へと近づいていく。


「さぁさぁ、もう逃がしませんよ!」


「にゃ、にゃぁ……っ」


 と、ふるふるしている猫。

 明らかに怯えている様子の猫。

だが、そんなのアイリスには関係ない。

 アイリスは手を伸ばし、猫へと飛びかかる。


「よ~しよしよしよし!」


「ふにゃぁあ~~~~~っ!」


「もふもふですよ、もふもふ!」


「にゃあ! にゃにゃあ! にゃんにゃん! にゃああああっ!」


「お~よしよし! こしょこしょこしょ!」


「にゃにゃ! にゃああああっ!」


 と、暴れまくる猫。

 それでもアイリスは、ひたすらに猫をモフり続ける。


 そうしてしばらく。

 きっと、猫は諦めたに違いない。


「ようやく静かになりましたね♪」


「ふにゃ~」


 と、力を抜いた様子で、地面に伸びている猫。

 とても可愛らしい。


 故にアイリスはそんな猫の耳へ、自らの口を近づける。

 そして、彼女はそのまま猫へと言う。


「あなたの変身魔法、可愛さだけなら完璧ですね♪」


「ふにゃっ!?」


「おやおや! また暴れ出して、いったいどうしたんですか!?」


「ふにゃ! ふにゃぁあああああああああああ!」


「ダメですよ! 逃がしませんとも!」


 言って、アイリスは猫を押さえつける。

 そして、彼女はそのまま猫へと言葉を続ける。


「いくつか聞きたい事があるんですけど。あなた――私が最初に追いかけてた冒険者ですよね? まさか変身魔法で猫になった程度で、私から逃げられるとでも?」


「ふにゃ!」


「冒険者の傍に逃げたのは、助けてもらおうと思ったからですよね?」


「……っ」


 ピクリと身体を揺らす猫――いや、冒険者猫。

 きっと図星だったに違ない。

 故にアイリスは、にこにこ笑いながら彼へと言う。


「いやぁ! おかげさまで、助かりましたよ! こうも簡単にエミール派冒険者を、全滅させられたのは、あなたのおかげですからね!」


「っ……ふしゃ~~!」


「おや、怒りました!?」


 これは失礼な事をしてしまった。

 アイリスには純粋に、感謝の気持ちしかなかったのだから。

 お礼とお詫びをして、機嫌をよくしてもらうしかない。


 なんせアイリス。

 受けた恩義は百倍にして返すのを、モットーに生きているのだから。


「猫にしてあげます」


「にゃ?」


 と、意味不明と言った様子の冒険者猫。

 アイリスはそんな彼へと、彼へとさらに言葉を続けるのだった。


「あなたの精神――このアイリスが、猫に変えてあげますよ! 安心してください! 人間だった事など忘れて、一生を猫として過ごせますよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く一気に読んでしまいました これからも更新頑張ってください 応援しています
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ