淫魔の?助け3
「ふっ……勝った」
「ばぶっ! ばぶぅ~!」
と、聞こえてくるのは男の声。
先ほど、猫を蹴り飛ばそうとしていた冒険者だ。
なぜこうなっているのか。
その理由は簡単だ。
(いやぁ、やっぱり精神操作魔法で、精神をバブバブちゃんにするのは楽しいですねぇ!)
きっとこの冒険者は今後。
死ぬまで精神が成長する事無く、永遠にバブバブしているに違いない。
アイリスの猫を傷つけようとするから、こういう目にあうのだ。
などなど。
アイリスがそんな事を考えていると。
「あ、あの……」
と、聞こえてくる少女の声。
彼女はアイリスに近づいて来ると、そのまま彼女へと言ってくる。
「助けてくれて、本当にありがとうございました!」
「はい?」
「あ、その……冒険者から守ってくれて、本当にありがとうございました!」
と、同じことを言ってくる少女。
ここでアイリスはふと気がつく。
(あぁ。『猫を守ってくれてありがとう』ってことですね!)
けれど、どうしてこの少女が、そんなお礼をしてくるのか。
だがまぁいい。そんなのは些細な問題だ。
と、アイリスは少女へと言う。
「私は当然の事をしたまでです! あんな状況、見過ごせるわけがないですからね!」
「……っ!」
「ちょっと! なにお祈りしてるんですか!? 私にお祈りとかやめてくださいよ!」
「親切で正義感が強いだけでなく、なんて謙虚な方……まるで伝説の勇者様の様」
「はぁ!?」
アイリス、現代で目覚めてから一番の悪寒がした。
ミアと似ているとか言われるのは、控えめに言って最悪だ。
よし決めた。
ついでなので、この少女で遊んでいこう。
なんせこの少女――冒険者が襲うだけあって、かなり可愛い。
(どうしましょうかねぇ……やっぱり、必死に嫌がってるところは見たいですし)
ゴブリンかオークか。
その辺りが妥当に違いない。
と、アイリスがそんな事を考えたその時。
「にゃ~~っ!」
と、聞こえてくる猫の声。
見れば、追いかけていた猫が再び、走っていってしまった。
こうなればもう、少女に構っている暇はない。
(この子はもったいないですけど、猫を追いかける方が無難ですね!)
なんせよく考えてみれば――。
少女を可愛がれば、確実にジークに怒られる。
しかし、猫は可愛がっても怒られないのだから。
「あ、待って下さい! せめて名前を!」
と、走るアイリスの背後から、聞こえてくる少女の声。
そんな少女は、アイリスへと言葉を続けてくるのだった。
「あ、あたしずっと覚えてます! 助けてくれたあなたの事……真の勇者様のこと、絶対に忘れません!」




