淫魔の?助け2
「待って下さいってば!」
「にゃ~~~!」
と、裏路地をどんどん逃げていくニャンコ。
アイリスはそんな猫を見て、ふと思う。
なんだか今日のアイリス、追いかける役が多い気がする。
だがまぁ、別に嫌ではない。
(待ったり逃げたりするよりも、追いかける方が好きですしね!)
中でも、逃げる相手を甚振りながら追い詰めること。
それはもう最高に楽しい。
無論、猫相手にそれをする気はないが。
などなど。
アイリスがそんな事を考えながら、また裏路地を曲がった。
まさにその時。
「おいおいおい! 痛い目見たくなかったら、言う通りにすりゃあいいんだよ!」
「ひっ……い、いや」
聞こえてきたのは、そんな男と少女の声。
見れば、冒険者が少女を追い詰め、服を無理矢理脱がせようとしていた。
アイリスはそれを見て思う。
(さっき、私が追いかけていた冒険者も、そもそもは私に襲いかかってきた所が始まりですからね……やれやれですね)
ジークの気持ちもよくわかる。
現代冒険者は、こんなのばっかだ。
勇者も含めてだが、だいたいが人に迷惑をかけている。
(まぁ、私にはどうでもいいですけどね!)
今は猫だ。
この場はとりあえず放置して、あとから戻ってくればいい。
そして、そこでこの冒険者を捕まえればいい。
少女は冒険者に酷い目に遭わされるだろうが。
そんなのアイリスの知ったことではない。
そもそも、ジークに頼まれたのは残党処理だけだ。
(ん~、でもちょっと惜しいですね)
正直、アイリスにとって猫を追う事は大切だ。
けれど、少女が酷い目にあう状況も見たくはある。
と、そんな事を考えていると。
「た、助けて!」
と、聞こえてくる少女の声。
彼女はアイリスの存在に気がついたに違いない。
少女は怯えと懇願を混ぜた様な瞳で、アイリスを見てくる。
答えは決まっている。
と、面倒な事になる前に、アイリスがおさらばしようとした。
まさにその時。
「にゃ~~~!」
と、聞こえてくる猫の声。
見れば件の猫が、冒険者の足元に寄り添っていた。
しかもその猫、何かを訴えるように冒険者にすりすりしている。
一瞬。
アイリスはその猫が、冒険者の飼い猫なのかと思った。
だがしかし。
「あ、なんだこのクソ猫は?」
と、そんな事を言う冒険者。
どうやらこの猫、冒険者とは無関係に違いない。
(いやぁ、よかったよかった! こんなクソ冒険者の飼い猫となると、愛でる時に少し迷いが出そうですからね!)
などなど。
アイリスがそんな事を考えていると。
「おい、クソ猫! 邪魔なんだよ!」
と、再び聞こえてくる冒険者の声。
彼は足を大きく引くと――。
「死にやがれ!」
言って、冒険者は猫めがけて蹴りを放つ。
猫は小さい――もしもそれが当たれば、きっと致命傷を負ってしまう。
「こんな事をするなんて、さすがに許せませんね」
言って、アイリスは即座に冒険者との距離を詰める。
そして彼女は猫を守るため、彼の腹に蹴りを入れながら言うのだった。
「この子は絶対に、私が傷つけさせません!」




