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魔王のゾンビ退治7

「魔王ジークの忠臣が一人、竜姫ブラン――あなたを凍らせる」


 言って、リッチへと杖を向けるブラン。

 同時、彼女の周囲に漂いだすのは無数の氷柱。

 それらは全て、リッチの方へと先端を向けている。


「行って」


 と、ブランが言った直後。

 無数の氷柱は矢のように、リッチへと射出される。

 見た限り、それに込められた魔力は尋常じゃない。

 さらに、射出速度も同じく尋常ではないときている。


 いくら相手が強力なリッチとはいえ、直撃すれば瀕死になるに違いない。

 だがしかし。


 コォオオオオッ!


 そんな音と共に、リッチの前に高速で展開される魔法陣。

 そこから現れたのは、無数の骸骨たち。

 リッチが召喚したに違いない。


 骸骨たちはまるで、リッチを守るように氷柱の前に立ちはだかる。

 結果――。


 凄まじい音を立て、ぶつかる氷柱と骸骨。

 両者は激しく破片を飛ばしながら、等しく砕け散る。

 けれど。


「隙だらけ」


 と、聞こえてくるブランの声。

 彼女は氷柱を囮に、リッチの背後へと回り込んでいたのだ。

 そこから繰り出されるのは。


「上位氷魔法 《ブライニクル》」


 極薄かつ凶悪な切れ味をもつ氷の大剣。

 ブランはそれを超高速で、横凪に振るう。


 さすがのリッチもまずいと判断したに違いない。

 奴は即座に体勢を変え、杖を翳すが。


「ん……ブランの勝ち」


 言って、ブランはその杖ごとリッチを叩き斬る。

 同時、両断されてガラガラと崩れるリッチの身体。

 一見すると、たしかにブランの勝ちにみえる。


(リッチの魔力がまるで弱まってないな。となると、そもそもあの玉座に居たリッチはフェイクか?)


 ジークがそんな事を考えていると。

 爆発的に膨らみだすリッチの魔力。


「っ!?」


 と、警戒した様子のブラン。

 きっと、彼女もリッチの魔力に気がついたに違いない。

 と……その瞬間。


 コォオオオオッ!


 またしても聞こえてくるのは、先ほど魔法陣が描かれる際に聞こえた音。

 見れば、再び骸骨を召喚する魔法陣が描かれ始めている。

 けれど、今回はその量が違った。


「っ……敵がたくさん、面倒くさい」


 ブランの言う通り。

 大きなドーム状になっているこの部屋。

 気がつけば、そこを覆い尽くすように、召喚された骸骨が立っていたのだ。


 さすがに数が数。

 ブランから離れ、ジークの傍にまで召喚される骸骨達。

 やつらはブランを無視し、ジークの方へとやってきてしまう。


「ジークくん、どうする? ブランさんのためにも、なるべく手は出さない方がいいのはわかってるけど」


 と、言ってくるユウナ。

 彼女は剣に手をやりながら、ジークへと言葉を続けてくる。


「こうなっちゃったら、あたし達も戦うしかないよね?」


「いや、この程度なら問題ない」


「え?」


「まぁ、見てればわかるさ」


 ジークがそう言った。

 まさにその時。


 部屋中の温度が一気に下がる。

 同時、漂いだすのは白い靄。


「上位氷魔法 《アイスエイジ》」


 響いてくるのはブランの冷え切った声。

 そして、世界は氷に包まれた。


 ブランを中心とし。

 地面に触れている、あらゆる敵が氷の像と化していく。

 本来ならば氷魔法が効きづらい骸骨達――それすらも、凍らせるのだから、尋常じゃない魔力だ。


「魔王ジークの威光の前に……砕けて消えて」


 言って、ブランは杖を床へと打ち付ける。

 瞬間。


 氷像となった骸骨達。

 奴等は粉々になり、氷の花ビラとなって周囲を漂いだす。


「ブラン、油断するなよ」


「っ!」


 と、ジークの言葉に即座に反応するブラン。

 それでも、彼女は遅かった。

 というのも。


 ブランの背後に突如現れたのはリッチ。

 奴が凄まじい魔力の籠った杖で、ブランの胴体を殴りつけたのだ。

 結果、ブランの身体は砲弾の様な勢いで壁へと吹っ飛んでいく。


「ぶ、ブランさん!」


 と、心配そうな様子のユウナ。

 彼女がそうなるのも当然だ。


 なんせ、ブランがぶちあたった壁。

 それはガラガラと崩れ、ブランを生き埋めにしてしまったのだから。

 だが、ユウナが声を出した僅か数瞬後。


 瓦礫の中から巻き起こったのは、絶対零度の爆発。

 そこから現れたのは、巨大な白竜――ブランが変身した姿だ。


 きっと、ジークが見ている前で不意打ちを受け、それを恥と思い怒り狂ったに違いない。

 白竜ブランは凄まじい咆哮をあげると、リッチの方へと突進して――。


「ブラン、そこまでだ!」


「ぐるるるるるるるっ」


 と、立ち止まり口から冷気を出しながら、ジークの方を見てくる白竜ブラン。

 ジークはそんな彼女へと言う。


「それ以上やれば、お前もただじゃすまない」


「……ぐぅ」


「俺は必要以上に、お前に傷ついて欲しくない。だから、ここから先は俺に任せろ」


 すると、ブランは納得してくれたに違いない。

 彼女は元の人間の姿に戻ると、ジークへと言ってくるのだった。


「残念……まおう様に良い所、見せたかった」


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