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魔王のゾンビ退治5

 時はあれから数分後。

 現在、ジーク達は炭鉱の奥へとやってきていた。

 そして、そんな彼等の前にあるのは。


「やっぱりか」


「ん……ここの壁、つるはしで壊した形跡がある」


 と、ブランが指さすのは壁だ。

 そこは崩れ、向こう側に舗装された通路が見える。

 要するに、そここそがダンジョンという訳だ。


「ジークくん、はやく行こう!」


 と、言ってくるのはユウナだ。

 彼女は険しい様子の表情で、ジークへと言ってくる。


「この奥に、今回のゾンビ事件の黒幕が居るかもなんでしょ?」


「あぁ。そうでなければ、ダンジョンの奥からこうも強烈な魔力と、死臭が漂ってくるわけがない」


 十中八九、今回の事件には黒幕がいる。

 それも、この時代にしては珍しい高位の死霊使いが。


(いや、その表現は適切じゃないか。なんせ、このダンジョンはずっと炭鉱の奥に埋もれていたんだ)


 中に居る死霊使いは、大昔から生きながらえている個体に違いない。

 となると必然、このダンジョン自体もかなり昔のものとなる。

 故にジークは、ブランとユウナへと言う。


「二人は俺の後ろからついてきてくれ。いいか? 絶対に俺から離れるな――それと、不用意に物に触れない事」


「ん……まおう様の言う通りにする」


「わかった。でも、なんでなのかな?」


 と、そんな疑問を投げかけてくる後者――ユウナ。

 ジークはそんな彼女へと言う。


「このダンジョンが何年物かはわからないけど。もしも、数百年前の物だとしたら、仕掛けられているトラップは、現代のダンジョンの非じゃない」


 今のユウナならば、即死してもおかしくない。

 ブランですら、相応のダメージを負う可能性がある。


「だから、俺が先頭を行く」


「そっか! ジークくんなら、《ヒヒイロカネ》以外で傷つけられないから」


 と、さすが察しのいいユウナ。

 ジークはそんな彼女の頭を撫でた後。

 二人を伴って、ダンジョンへと足を踏み出す。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


 そうして進むこと少し。

 結論から言うと、ジークの予想は正しかった。

 というのも。

 

 カチッ。


 何かを踏んだ感覚。

 直後、ジークの真正面から飛んできたのは、凄まじい速度の矢だ。

 見た限り、先端に致死性の毒がついているのがわかる。

 そんな矢はジークに当たる直前。


 粉々に消滅した。


 ジークの障壁のおかげだ。

 などなど、考えている間にも。

 

 カチッ。


 再び聞こえてくる音。

 今度はジーク達全員の足元に、大型の魔法陣が浮かび上がる。

 見た限り、乗っている者に致死の毒を与える魔法トラップだ。

 故にジークは。


 その場に足を打ち付け。

 床ごと魔法陣に亀裂を入れて、無効化してやった。


 そうしてジークは再び歩き出す。

 残してきたアイリスのためにも、どんどん歩く。

 どんどんどんどん歩く。

 そして歩くたび。


 カチッ。

 カチッカチッ。

 カチカチカチカチカチカチ。

 カチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチッ。


 鳴り響くトラップ発動音。

 発動しまくる無数のトラップ。

 その中をジークは歩いて行く。


 転がってきた岩はジークに当たって粉砕。

 急に下がってきた天井は、ジークが支えたら吹き抜けになった。

 床から生えた槍は、ユウナ達に当たる前に切り落とした。

 落とし穴は、穴になる前に凍らせてただの床にした。

 目の前から迫ってきた壁は、全力で目を閉じた風圧で押し返した。


 とまぁ、そうこうしている間にも。

 再び発動するトラップ。


「ジークくん、後ろ!」


 と、聞こえてくるユウナの声。

 見れば、さっき通ってきた道の全てが、崩落し始めている。

 要するに、ジーク達を生き埋めにしようとしているに違いない。


(やれやれ……敵も必死か)


 ジークはそんな事を考えた後、ブランとユウナを下がらせる。

 そして、彼はダンジョンの床へと手を触れ。


「下位氷魔法 《アイス》」


 直後。

 ダンジョンは凍り付いた。

 先ほどまで聞こえていた崩落音も、今ではすっかり収まっている。

 その理由は簡単。


「まおう様、すごい……崩落し始めてるダンジョンを、たった一度の下位氷魔法で凍らせた」


 と、言ってくるブラン。

 そんな彼女は、瞳をきらきらジークへと言葉を続けてくる。


「しかも、氷の薄さがすごい……こんなに薄いのに、このダンジョン全体の崩落を止められるなんて」


「そうでもない。ブランでもその気になれば出来るだろ?」


「ん……無理。ブランなら上位氷魔法に全魔力を込めて使っても、出来るか出来ないか微妙なライン。下位氷魔法じゃ絶対に無理」


「謙遜がすぎるな、ブラン。まぁいい――今はとりあえず前に進もう」


 とはいえ。

 と、ジークは前を見る。

 するとそこにあったのは。


「もうゴールは近いみたいだけどな」


 鋼鉄ででき。

 何重もの魔力障壁に守られた、巨大な扉だった。


『常勝魔王のやりなおし』、書籍版の発売日となります!!

もしイラスト込みで読みたい、エ○シーン読みたい...そう思われた読者さまいましたら、書籍版を手に取ってくれると嬉しいです!!

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