魔王のゾンビ退治3
「ゾンビ――いつの間にか、だいぶ村に近づいていたか」
見れば、村中にゾンビが溢れかえっている。
奴等はきっと、生前は村人だったに違いない。
ある者は広場を歩き。
またある者は壁に何度もぶつかっている。
だがしかし。
ジーク達が村に一歩、入った瞬間。
「ジークくん、来たよ!」
と、言ってくるユウナ。
そんな彼女の言う通り、ゾンビ達は一斉にジーク達の方へと向いて来る。
きっと、彼等の生命エネルギーや魔力に反応しているに違いない。
なんにせよ。
ゾンビ達はブランが言った通り、もう助からない。
であるならば、することは一つ。
(ゾンビ程度なら、百だろうが千だろうが万だろうが変わらない)
ジークならば一撃で葬り去れる。
と、彼が剣を抜こうとした。
その瞬間。
「待って」
と、ジークの前に手を翳してくるブラン。
彼女は杖を構えながら、彼へと言葉を続けてくる。
「雑魚相手に、まおう様が出る必要ない……ここはブランで十分」
「それはそうだけどさ、でも俺がやった方が早いし面倒じゃないぞ?」
「ブラン、記憶を取り戻してから……まだろくに戦ってない」
「なるほど、準備運動がしたいわけか」
「ん……そうとも言える」
ふんす。と、鼻息荒い様子のブラン。
そして一方のユウナも、剣を抜きながらジークへと言ってくる。
「あたしも、今回はジークくんに下がっていてもらいたいかな」
「理由は――準備運動ってわけじゃなさそうだな」
「あたしが本当に真の勇者なら、いい加減自分で戦わなきゃ。それに……」
「どうした、ユウナ?」
「え、う、うぅん……なんでもない!」
と、ブランに続いて行ってしまうユウナ。
ユウナが最後に言いたかったことは、容易に推測できる。
どうせ――。
『ゾンビは生きてる頃は、何の罪もない村人だったんだよ。そんなの、ジークくんに殺させたくないよ』
とでも言いたかったに違いない。
論外だ。
ジークはそんな事をいちいち気にしない。
何度も言う様に、ゾンビはすでに死んでいる。
極論、生前の村人とは全く別の存在といっても過言ではない。
(というか、俺としてはそんな事を気にしているユウナの方が心配だ)
ゾンビを殺して気負ってしまうのでは。
斬る直前に躊躇いが産まれ、隙を作ってしまうのではないか。
(でも、ユウナは真の勇者として使命を――ゾンビの討伐という小さい事だけど、自らの役目を果たそうとしてる)
止めるのは無粋に違いない。
それに万が一、ユウナがピンチに陥れば助ければいい。
ジークがそんな事を考えたその時。
「っ!」
と、ついにユウナが動くのだった。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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