エピローグ 魔王は勇者を許さない2
「ジークくん、戻ってきたなら教えてよ――遅れてごめんね!」
聞こえてくるユウナの声。
彼女はジークの方へとやってくると、言葉を続け――。
「上位回復魔法 《エクス・ヒール》! 上位回復魔法 《エクス・キュア》! 上位回復魔法魔法 《リバース》!」
ると思いきや、いきなり回復魔法三種盛をかけられた。
ジークが頭に?マークを大量に浮かべていると、ユウナは続けて言ってくる。
「大丈夫!? エミールさんに怪我させられてない!? 今ので治ったかな!?」
「あ、あぁ……っていうか、そもそも怪我してないんだが」
「念のためだよ!」
「ね、念のため……」
「うん、念のため!」
念のためで難しい魔法を、三連続で放ってくるユウナ。
末恐ろしい子だ。
「でも、ジークくん。お父さんのこと、大丈夫……なわけないよね」
と、しゅんとした様子のユウナ。
彼女はジークへと言ってくる。
「あたしは体の傷は治せても、心の傷は治せないから……ごめんね」
「大丈夫だよ、ユウナ。俺は心に傷なんか――」
「そんなことないよ。ジークくんはとっても優しいから、お父さんが殺されたって聞かされて、傷つかないなんてありえないよ」
「でも俺は本当に――」
「お父さんが殺されて何も感じない人は、街をエミールさんから解放するために、戦ってあげたりしないよ。ジークくん、なんだかんだ悪い人にすごい怒る優しい人だもん!」
街をエミールから解放したのは、結果論の話だ。
悪人に怒るのも、そいつが鬱陶しいからだ。
別に正義感から、そうしたわけではない。
けれど。
「ジークくんがなんて言っても、あたしはわかってるからね! ジークくんは困っている人や、苦しんでいる人を見過ごせない優しい魔王様だって!」
と、言ってくるユウナ。
不思議と、彼女の言葉を否定する気にはならない。
そんな彼女は、少し意地わるそうな顔で、ジークへ続けてくる。
「それにさっきアイリスさんとの話、聞いちゃったんだけど」
「?」
「威力の指摘されたとき、内心ジークくん街の住民の心配してたでしょ」
「うっ……」
「次からは気をつけようって、そう思ったでしょ?」
「…………」
「優しくない人は、そういうことも考えないんだよ?」
どうして、ユウナはジークの心をこうも容易く読んでくるのか。
まさか、これこそが真の勇者の力……。
そんなことを考えたその時、外から凄まじい音と振動が伝わって来る。
きっと、竜化したブランが親エミール派の残党の処理を終えてきたに違いない。
「魔王様! 次はどこに行くんですか!? 最初はどうなるかと思いましたけど、邪魔者をどんどん潰していくの、結構楽しいじゃないですか!」
「ジークくんと一緒に人助け、あたしはどんな場所でもついて行くよ!」
と、言ってくるアイリスとユウナ。
ジークはそんな彼女達に言う。
「真の勇者を覚醒させる試練。それについて知っている勇者、もしくは人を探す……ようするにまぁ――」
ジーク達の旅はまだまだ始まったばかり。
彼がユウナと歴史に残る試合を行うのは、ずっとずっと先の話である。
明日からは、少しの間幕間となります!!
また、書籍版もよろしくお願いします!!




