エピローグ 魔王は勇者を許さない
時はジークとエミールの戦いから数十分後。
場所は冒険者ギルド。
「まだ、完全に魔法が解けてないから、無理して動かないでね?」
と、聞こえてくるのはユウナの声だ。
そして、そんな彼女にかかる声と言えば。
「うぅ、すまねぇ……すまねぇ」
「俺達はさっき、あんたを殺そうとしたのに……どうしてこんな親切にしてくれるんだ」
「ユウナ……その、すまなかった。今まで本当にすまなかった」
冒険者達の謝罪の声だ。
当のユウナは、そんな冒険者達へと言う。
「このギルドの人は、全員が悪い人じゃないって、あたし知ってるから。でも、エミールさんと一緒に悪さしていた人は、これを機に改心してくれると……うん、あたしすごい嬉しいよ!」
「せ、聖女だ……」
「俺、改心するよ! いつか俺も、あんたみたいに人助けしてみてぇ」
「お、俺も! ユウナちゃんみたいな可愛い女の子から、お礼が言われてみたい!」
などなど。
ジークが柱に寄りかかりながら、そんな様子を見ていると。
「いやぁ~、魔王様! 見てくださいよ、これ! 色々もらっちゃいましたよ!」
と、言ってくるのはアイリスだ。
彼女は大量の食べ物を抱えながら、ジークへと続けてくる。
「すっごくないですか!? 外を歩いているだけで、人間たちが『勇者を倒してくれて、ありがとう!』だの『魔王ジークにこれを』だのだのだの……貢物を沢山くれるんですよ!」
「……あとで返してこような」
「え~~~~! なんでですか! 貰ったんだからいいじゃないですか!」
「いや、この街の人の生活は厳しいんだから、そういうの悪いだろ」
と、ジークはここでとあることが気になる。
故に彼はアイリスへと問いかける。
「っていうか、外ってどうなってるんだ?」
「今ですか? もうすごいお祭り騒ぎですよ! みんな魔王様のことを、神様みたいに褒めたたえてますよ!」
「…………」
勇者が魔王にやられて喜ぶとは、なんともな世の中だ。
まぁそれもこれも現在の勇者の自業自得。
と、ジークがそんなことを考えていると、再びアイリスが言ってくる。
「あ! ちょっと魔王様! アレいいんですか!? ユウナが私の魔法を解除しちゃってますよ!? あぁ~あぁ~あぁ~……冒険者達目覚めちゃってるじゃないですか!」
「ユウナはあいつらが改心してくれるって、信じてるみたいだから別にかまわない」
「違いますよ! 改心とかそういうのじゃなくて、殺しちゃった方が楽っていう――あぁもう! いいですよ! ほんっと、最近の魔王様は甘いですね!」
と、ぷんぷんモードのアイリス。
しかし、彼女はすぐさま表情を一転。
ジークへと言ってくる。
「そういえば魔王様! 上位魔法を使いましたね!?」
「あぁ、使ったけど……それが?」
「いやぁ~、さすが魔王様! 凄まじいですね!」
「そんなにか? 被害が出ないよう、かなり威力を絞って使ったけど」
アイリスからしてみれば、あの程度たいした威力ではないに違いない。
なのに、どうして彼女はこんなに驚いているのか。
ジークがそんなことを考えていると、彼女は言葉を続けてくる。
「それがすごいんですよ! 上位闇魔法 《ディアボロス》は別名国崩しの魔法! 城も街も空間ごと飲みこむ禁忌の魔法! それを手加減してあれだけの規模に留めるって……くぅううううううううううう、すごい!」
「威力を落とすのがか?」
ジークからしてみると、その程度は造作もないことだ。
なんなら、本を読みながらの片手間にだって余裕で出来る。
けれど言われてみれば、エミールは上位魔法のコントロールを出来ていなかった。
(他の奴からすると――アイリスであっても、それはそんなに難しいことなのか?)
しかしそれでもやはり――。
「俺からすると、自分の魔法のコントロールなんて、当たり前すぎてわからないな」
「魔王様がすごいからわからんのですよ! あの規模の魔法の出力を抑えるってことは、一般人からすれば『ドラゴンが蟻を殺さないように、足で愛撫する』くらいに難しいことですよ!」
と、いまいちわからないアイリスの例え。
ようするに、少し加減を間違えば、この街が住民ごと消滅していたということに違ない。
「…………」
(そんなに難しくて危ういことしてたのか、俺。加減を間違えるなんて絶対にない自信はあるが、これからはもっと慎重に魔法を選ぼう……五百年前の人間ならともかく、この時代の人間はあんな魔法防げなそうだし)
などなど、そんな事を考えた。
その時。
「ジークくん、戻ってきたなら教えてよ――遅れてごめんね!」
そんなユウナの声が聞こえてくるのだった。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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