第十章 世界に災いをもたらす者5
「どうした!? いまさら命乞いか? だがもう遅い! 貴様は俺様の逆鱗に触れ過ぎた! ここで死ね、ジーク! 俺様は魔王を倒して伝説になる!!」
と、エミールはいよいよ魔法陣を起動させようとする。
けれど、その時。
バキンッ。
辺りに響き渡ったのはそんな音。
同時、揺れは治まり、立ち上っていた光も消えていく。
「な、なんだ!? どうして魔法陣が発動しない!?」
と、なにやら慌てだすエミール。
彼はわたわたした様子で、言葉を続けてくる。
「俺様がミスをした!? バカな、ありえない! 転移魔法陣と爆発魔法陣――片方のミスでもありえないのに、二つ同時にミスをするなど絶対にない!」
「エミール」
「だ、黙れ! くそ、どうして、どうしてなんだ!?」
「おい、エミール」
「黙れと言っている! はっ――き、貴様まさか……な、何かしたのか!? 俺様の魔法陣に貴様が!!」
黙ればいいのか、喋ればいいのか。
矛盾した発言は置いておくとして、エミールにしては中々いい勘をしている。
というのも。
「魔法陣なら、俺が細工した。もちろん、転移魔法陣も爆発魔法陣もな」
「う、嘘だ」
と、よろけるエミール。
彼はそのままジークへと、言葉を続けてくる。
「俺様が時間をかけて作った魔法陣だぞ!? ありえない……この短時間で魔法陣をどうこうできるわけがない!」
「あぁ。たしかに、お前が魔法陣の事を自慢気に喋ってから対処したのでは、おそらく間に合わなかっただろうな」
「じ、じゃあどうして……どうして間に合っている!?」
簡単だ。
その答えは子供でも真っ先に思い浮かぶ回答。
すなわち。
「この街に到着した瞬間から、俺はお前の魔法陣への介入を始めていた」
「…………」
と、呆然としているエミール。
ジークはそんな彼へと言葉を続ける。
「あんな巨大な魔法陣を張ってあったんだ。魔王である俺が見落とすとでも? 隠蔽もなにもかもがずさん……お前自身の様に、存在を主張している魔法陣だった」
気がつくに決まっている。
だから、ジークはエミールのギルドへ至る道中――戦いながら魔法陣へ細工したのだ。
エミールが魔法陣を使おうとした瞬間、それが弾け飛ぶように。
「あぁ、安心しろよエミール」
「な、にぃ?」
と、よくわからない様子のエミール。
ジークはそんな彼へと言葉を続ける。
「もし発動できていたら勝っていたのにとか、そんなことを考える必要はないってことだ」
「どういうことだと聞いている!」
「仮にお前が魔法陣を無事に使用できたとしても、俺がその気になれば爆炎を凝縮、そのまま消し去ることも可能だってことだ。当然、転移でお前を逃がすような真似もしない」
もっともその場合、魔法陣への介入より少し疲れてしまうが。
なんにせよ、つまり。
「どう転んでもエミール。お前に勝ち目はなかったってことだ」
「うそだ……うそだ、全部嘘だ!」
と、首を振り始めるエミール。
まるで駄々っ子のようで、本当に情けない。
ジークはため息一つ、そんな彼へと言うのだった。
「もう次の策はないんだろ? それじゃあ最後に、本物の上位魔法を見せてやるよ」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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