表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/207

第十章 世界に災いをもたらす者4

「く、くくくく……っ」


 と、ゆっくりと立ち上がるエミール。

 彼は肩を震わせながら、さらに言葉を続けてくる。


「あはははははははははははははははははははっ!」


「どうしたエミール、負けが決まって気でもふれたのか?」


「黙れえぇええええええええええええええええええええええええええええ!」


 と、ジーク目がけてヒヒイロカネの杖を投げてくるエミール。

 ジークはそれを軽く躱し、エミールへと言う。


「自慢げだった武器はもういいのか? あれがなければ、お前が俺に勝つ見込みは完全にゼロになると思うが」


「そうやって、大物ぶるのも今のうちだぞジーク! どうやってそこまでの力を得たのか知らないが、貴様は所詮底辺冒険者だった男だ! 俺様の手の中で惨めに踊っているのが、貴様にはお似合いなんだよ!」


 と言って、エミールは地面へと大きく足を打ち付ける。

 その直後。


 周囲が大きく揺れ始めたのだ。

 さらにルコッテの街――その地面全体から、淡く赤い光の様なものが立ち上り始める。


「どうだジークぅ!? 万が一……本当に万が一、俺様が貴様に負けた時のことを考えて、俺様は奥の手を残しておいたのだ!」


 と、言ってくるエミール。

 彼はニヤニヤと言葉を続けてくる。


「言っただろ? 俺様は最強の魔法使い! 準備さえあれば、一国すら相手どれる男! そして今、俺様は準備を整えた!」


「回りくどいな……結論を言えよ」


「くくくっ、焦っているようだな!」


 と、見当はずれのことを言ってくるエミール。

 そんな彼は上機嫌な様子で、ジークへ続けてくる。


「俺様はこの街の地下全域に、《ヒヒイロカネ》の力を用いた大規模魔法陣を、すでに仕掛けてあったのだ! 発動すればこの街どころか、遠くの山や川まで……あらゆるものをまとめて消滅させる規模の爆発が起きる!!」


「それで、お前自身はどうする?」


「当然、転移魔法陣も仕掛けてある……俺様だけは安全に逃げられるというわけだ!」


「住民の命は……冒険者仲間の命はいいのか? 周辺には小さな村もあるみたいだが」


「バカが! この俺様のために死ねるんだぞ!? むしろ光栄に決まっているだろ!」


「そう、か」


 たいした勇者だ。

 勇者ミアとは比べ物にならない。


 ミアはどんな時でも、一般人や仲間を犠牲にするような戦いは立案しなかった。

 むしろ、周りの方からミアのためにと、望んで犠牲になることが多かった。

 わかりきっていたことだが、エミールは論外だ。


「どうした、もうすぐ街と共に吹き飛ぶ恐怖で声も出ないか!?」


 と、言ってくるエミール。

 彼は嬉しそうに言葉を続けてくる。


「さて、ここいらで貴様との楽しい会話も終わりだ」


「……残念だよ、エミール」


「どうした!? いまさら命乞いか? だがもう遅い! 貴様は俺様の逆鱗に触れ過ぎた! ここで死ね、ジーク! 俺様は魔王を倒して伝説になる!!」


 と、エミールはいよいよ魔法陣を起動させようとするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ