第九章 魔王は正々堂々戦いを挑む6
「卑怯者!」
と、響くのはユウナの声だ。
彼女は一歩前に出ると、エミールへと言葉を続ける。
「あなたはいつもそう、強い人とはまともに戦おうとしない。罠に嵌めたり、人をけしかけたり……だけど、力がない人には高圧的な態度でいたぶって!」
「な、なんだと、貴様ぁ!」
「ジークくんが言っていることがハッキリわかるよ! あなたは勇者に相応しくなんかない! 盗賊がいいところ! あなたが勇者を名乗るくらいなら、あたしが――」
「このっ――淫乱の分際で!!」
「エミール、お前はっ――!」
と、ジークはエミールへと言葉を発しようとする。
理由は簡単。
こんな奴がユウナを侮辱していいわけがないからだ。
だがしかし、ジークがそんな言葉を言い切るより先。
「死ね、俺様に意見する淫乱は死んでしまえ!!」
と、エミールはユウナに杖を向け、魔法を放ってくる。
それは普段のジークならば簡単に防げた。
けれど。
(しまっ――!)
ロイのことで思っていた以上に心が揺れていたからに違いない。
ジークの反応は圧倒的に遅れた。
さらに、エミールの魔法発動速度が何故か以前より数倍早かったのだ。
間に合わない。
このままでは、エミールの魔法はユウナに直撃する。
それでも、ジークがユウナ目がけて走ろうとした……その時。
ユウナを守る様に、彼女の前に氷塊が出現する。
エミールが放った魔法は、その氷塊に直撃――相殺されてしまう。
「いい人間は……ブランが守る」
魔法を使ってユウナを守ってくれたのは、ブランだ。
彼女はエミールを睨みながら、彼へと言葉を続ける。
「ユウナはいい人間……それにブランの仲間。だから、ユウナは守る……ブランが絶対に」
「こ、この役立たずが! 子供だった貴様を拾ってやった恩を、仕事をやった恩を忘れたか! 生きるために、金のためになんでもするのではなかったのか!?」
「ん……忘れた」
「っ!」
と、なにやら顔面をピクピクさせているエミール。
彼はジーク達を指さしながら、冒険者達へと言う。
「おい貴様等! あいつらを殺せ! ユウナとブランは出来るだけ、生かして捕えろ! 女に生まれたことを後悔させやる!
」
同時、ジーク達に向かってくるのは冒険者の大群だ。
ジークは仕方なく、剣を抜こうとするのだが。
「あははははっ! ちょっとちょっと、私のことは生け捕りにしないんですか!? どう考えても、この中で一番可愛らしいのは、アイリスちゃんでしょうが!」
そう言って、一歩前に出るのはアイリスだ。
彼女が冒険者達に向けてウインクした途端、それは起きた。
向かってきていた百に近い冒険者。
その全員が、糸が切れたかの様に、いきなりその場に倒れたのだ。
「上位精神操作魔法 《エクス・スリープ》! とびっきり強めにかけてあげたんで、死ぬまで起きませんよ! ご愁傷さまです♪」
言って、尻尾をふりふりしているアイリス。
ユウナにもブランにも、そしてアイリスにも……ジークは本当に申し訳なくなった。
魔王たるものが、一瞬とはいえエミール如きに隙をさらしてしまったことが。
(俺は魔王……ミアのためにもエミールを倒す。だけど、今回だけは――)
ジークはロイの顔を一度だけ思い浮かべた。
その時。
「ジークくん、エミールが!」
と、聞こえてくるユウナの声。
ジークは彼女が指さす方へと、視線をむける。
するとそこにあったのは――。
(エミールのやつ……あいつ、嘘だろ)
全力といった様子で、ギルドから逃走するエミールの姿だった。
部下に戦わせておいて、自分は逃げる。
いくらなんでも情けなさすぎる――さすがのジークも想定外の事態だ。
だが、逃がしはしない。
(もしも、魔王から逃げきれると思っているなら、それは大きな間違いだ)
ジークから逃げようとして、それが成功するのはきっと勇者ミアくらいだ。
もっとも、ミアは逃げることなど、絶対にしないに違ない。
と、ジークはそんなことを考えた後。
「ユウナ、アイリス、ブラン! ここであいつを逃がすわけにはいかない!」
言って、エミールのあとを追いかけるのだった。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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