第八章 白竜は堕ちる2
「……ジー」
視線を感じた。
ジークがそちらの方に顔を向けると、そこに居たのは。
「…………」
扉を少しだけ開き、そこからこちらを見てくる冷たそうな瞳。
正直、ものすごく怖い。
もしもジークが一人でいたら、確実にビクンってなっていた。
「っていうか、何してるんだ? 覚醒させたばっかなんだから、もう少し寝てた方がいいんじゃないか?」
「ん……大丈夫」
と、言いながら出てくるのはブランだ。
もっとも、今の彼女はすでに過去の力と記憶を取り戻している。
そのため、厳密にはホワイト・ルナフェルトが名なのだが、彼女曰く。
『長いから……ブランのことは、ブランで』
とのことだ。
「あは♪ 久しぶりじゃないですか! 今はブランでしたか!? いや~懐かしいですね! なんだか同窓会って感じがしますね!」
「あ、あの……はじめまして、でいいのかな? ジークくんの同期の元冒険者兼、勇者見習いのユウナって言います! これからよろしくね?」
と、口々にそんなことを言うアイリスとユウナ。
それに対してブランは、一度だけこくりと頷いたのち。
「ごめんなさい……まおう様も、アイリスも、ユウナも……とっても迷惑かけた。昔の記憶と今が交じりあって……ブランがどんなに悪いことしてたか、ようやく気が付いた」
「あははは! まったく気にしてませんってば、そんなの! だいたい仕方ないじゃないですか! 記憶とんでたなら、あの時のブランは別人なんですから!」
「悪いことをしてたって、気が付いただけまだいいよ! それに今からだって、やり直せるはずだよ!」
と、そんなブランに言うアイリスとユウナ。
ブランはそんなユウナへ言葉を続ける。
「……やり直す?」
「そうだよ! 誰だってやり直すのに遅いことなんてないもん!」
「でも、ブランは手下に命令して……色々な人を――」
「それ以上の人を助ければいいんだよ! そうやって償っている方が、きっとなにもしないより遥かにマシだよ」
「…………」
ポケーっと、何を考えているのかわからないブラン。
けれど、きっと何かを決心にしたに違いない。
ブランはこくりと頷いた後、ジーク達へと言ってくるのだった。
「まおう様たちはブランが守る……いい人間もブランが全員守る。だから……まずはブランが知っていること、全部話す」




