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第八章 白竜は堕ちる 

 時はジークがブランを倒した夜。

 場所は白竜傭兵盗賊団と戦った村のとある民家二階。

 現在、ジーク達は村人達の好意に甘え、絶賛泊まらせてもらっていた。


「本日のハイライトはなんといっても、ケルベロスを手なずけちゃったところですね!」


「うん、あれはすごかったよ ジークくんの力にひれ伏した感じなんだよね?」


 と、テーブルを挟んで、ジークの向かいで話しているアイリスとユウナ。

 そんな二人は、順に言葉を続ける。


「さすがのユウナでも、何が起きたかわかったみたいですね!」


「さすが……は余計だよ!」


「ではでは、もう一つのハイライトはどうですか?」


「もう一つのハイライト?」


 と、首を傾げているユウナ。

 アイリスはそんなユウナを見たのち、テーブルをばんばんしながらジークへ言ってくる。


「んっもう! 魔王様なんですかあれ! すっごいじゃないですか!?」


「なんかすごいことしたか?」


 ジークとしては、特にすごいことをした覚えはない。

 どちらかというと、覚醒していない身であれだけの攻防をしたブラン。

 彼女の方がすごいことをしていたとさえ思う。

 と、ジークがそんなことを考えていると、アイリスが再び言ってくる。


「とぼけないでくださいよ! 上位氷魔法 《コキュートス》を斬撃で消滅させたやつに、決まっているじゃないですか!」


「あぁ、あたしもあれは凄いなって思ったよ!」


 とアイリスに同調するのはユウナだ。

 彼女はうんうん頷きながら、ジークへと言ってくる。


「剣を振り下ろすのが早すぎて、なんにも見えなかったもん! それに、あの規模の魔法を剣で斬るって……物語に出てくる勇者様みたいで、とってもかっこよかったよ!」


「なーにが勇者様ですか! 魔王様はそれよりもすごい存在なんですよ! それにユウナってば、全然見当違いですよ! 魔法を剣で斬るとか、魔王様にとっては当たり前です!」


 と、ぷいぷいっとユウナに手を振るアイリス。

 彼女は両手を組み、瞳をキラキラさせながらジークへと続けてくる。


「上位魔法 《コキュートス》を消滅させ、ブランを両断しないようコントロールされた絶妙な腕力――魔力のコントロールだけじゃなく、腕力もコントロール自由自在なんてすごいですよ!」


「そんなにすごいか、あれ?」


 あんなもの、所詮は少し気をつけて剣を振っただけ。

 なんなら、寝起きでも出来る自信がある。


 そもそもコントロールどうこうで言うのなら――ジークが本気になれば、相手の魔法を剣で巻き込み、そのまま相手に跳ね返すことだってできる。


(俺がそこまでやっていれば、驚かれるのも納得はするが。もっとも、相手はブランだ……あいつを必要以上に傷つけるようなことは、絶対にしないけどな)


 なんにせよ。

 やはり驚かれるようなことでは――。


「なんか色々考えてるみたいですけど、そう言えるところがすごいんですよ!」


 と、ジークの考えを断ち切る様に言ってくるアイリス。

 彼女はそのまま言葉を続けてくる。


「魔王様以外の魔物が――正直、私だってあの上位魔法を前にしたら、変な手加減できませんよ!? っていうか、全力でやっても危ういくらいですよ!」


「俺がすごいかは置いておいて……たしかに、ブランが最後に放った魔法はすごかった。俺が近くにいたせいで、身体の『魔』が騒いだっていうのもあるかもしれないが」


 あれは完全に五百年前の魔物に迫る力だった。

 さすがはかつて、ジークが頼りにしていた魔物の宿魔人だけある。

 と、ジークがそんなことを考えていると。


「でもまぁ! それを軽くあしらっちゃう魔王様の方が、結局すごいんですけどね!」


 ぺかーっと言った様子で明るく表情を変えるアイリス。

 彼女はさらに続けて言ってくる。


「そうですよ、考えてみれば魔王様はかつての忠臣――最強の竜族の上位魔法を、剣一振りで消滅させたとも言えるんですよ!」


「いや、ブランはまだ覚醒させてなかったから、それは無理が――」


「言えるんですよ!」


「…………」


「これはすごいことですよ! 竜族の姫の一撃を、剣の一振りで軽く打ち消すなんて! いや~すごい! 魔王様尊い! さすが魔王様! それでこそ、私の嫁――魔王様!」


「むぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」


 と、聞こえてくるのはユウナの声だ。

 彼女は突如手を上げると、ジークへと言ってくる。


「あたしはジークくんのハイライト、そこじゃないと思うな!」


 これは間違いない。

 アイリスがジークを褒めまくっているので、対抗心を燃やしている。

 ようするに、いつものやつだ。


(嬉しいけど、張り合わなくてもいいと思うんだけどな……二人とも普段は仲いいみたいだし)


 先ほどなど、二人で一緒に夕飯を作っていた。

 主にアイリスが怪しい薬入れるのを、ユウナが止めていた感じだったが。

 などなど、そんなことを考えている間にも、ユウナはジークへ言葉を続けてくる。


「本日のハイライトは、お爺さんの村を助けようとしたことだよ!」


「…………」


 アイリスにも思ったが、ユウナも思ってもいないところを褒めてくる。

 いったいどうして、彼女はそこがハイライトだと思ったのか。

 と、ジークのそんな疑問に応えるかのように、ユウナは言葉を続けてくる。


「ジークくん、あれが罠だってわかってたんだよね?」


「あぁ、身体の魔力が乱れていたし。以前言ったように、あの老人がそんな場所から逃げ出せるわけがない」


「うん♪ やっぱりジークくんは偉いよ!」


「すまん、話の繋がりがわからないんだが」


「だって、ジークくんはあのお爺さんを――あのお爺さんの村を救うために、わざと罠にかかったんだよね?」


 と、キラキラした瞳のユウナ。

 彼女はジークが反論する間もなく、言葉を続けてくる。


「自分の身が危険にさらされるってわかっているのに、他人を助けようとする――それって、普通はそんな簡単に出来ることじゃないよ?」


「俺が村に来たのはそんな理由じゃない。俺はただ単に、俺達の周りをうろつく小虫を巣穴ごと駆除したかっただけだ」


「はいはい、ジークくんってそういうところあるよね――かっこつけっていうのかな?」


「……なんかユウナって、どことなくアイリスに似て来たよな」


「え、どこが!?」


「そうですよ! 私を人間なんかと一緒にしないでくださいよ!」


 と、始まるユウナとアイリスの言い争い。

 二人はお互いを軽くポコポコ叩きあったり、実にみていて和む。


 まるで仲のいい姉妹のようだ。

 ジークがそんな事を考えたその時。


「……ジー」


 と、そんな視線を感じるのだった。


さて……これは毎回、言ってることなのですが


面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。


また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。


ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。

冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。

すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。

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