第五章 圧倒的な力の差2
「率直に言いますよ、魔王様。真の勇者詐欺にあっていませんか? 偽の光の紋章翳して『ほらほら、俺が真の勇者だぜ!』的な奴ですよ!」
「あ、あたしはそんなことしないよ!」
と、アイリスの言葉に対し、思わずといった様子で言い返すユウナ。
けれど、これはユウナの方が正しいに違いない。
ユウナがそんなことする人間でないというのもあるが、判断材料は他にある。
「多分だが、現代の人間は真の勇者について――光の紋章について知らない。だから、詐欺をしたくても詐欺のしようがない」
「それは、おかしな話ですね? 五百年前は光の紋章が現れれば、人間たちは四六時中お祭りレベルの騒ぎだったじゃないですか。世界を救う勇者が現れたって」
と、言ってくるアイリス。
ジークはそんな彼女に頷いたのち、アイリスへと言葉を続ける。
「隠しているんだよ。俺はアルとして、この世界を十七年生きてきたわけだが、光の紋章については一度も聞かなかった」
「そんなこと、ありますか? 五百年前なら誰でも知っているレベルでしたよ」
「五百年の間に情報統制したんだろうな。『光の紋章がある者が真の勇者』なんて情報があったら、『勇者の末裔も勇者を名乗る』っていうのがおかしくなってくるからな」
そうなれば、現代の勇者があそこまで幅を利かせることは出来ないに違いない。
長い時間をかけて、奴らは伝説の勇者ミアの記録を一部改竄したのだ。
「あはは! なんだ、じゃあ今この世界に居る勇者は、全員パチもんじゃないですか!」
アイリスの言う通りだ。そして、奴らは先祖を汚す最悪な輩だ――本当に許し難い。
と、ジークがそんなことを考えていると。
「あ、あのさ……ジークくん」
と、おずおずといった様子で手をあげるユウナ。
彼女はそのままの様子でジークへと続けてくる。
「二人の話を聞いている限り、あたしが本物の勇者……なんだよね?」
「あぁ。勇者ミアにも、ユウナと同じ光の紋章があったからな。それに、さっき話した通り五百年前――光の紋章は、すごく有名だったからな……間違えるはずない」
それこそ、人間だけでなく魔物側の書物にも残るほどに。
だからこそ、ジークは昨晩すぐに気が付いたのだ。
「あたしなんかが、本当に勇者なのかな……」
ジークはそんなアイリスを見て、彼女が言いたいことをようやく理解する。
故に彼は彼女をフォローするために言う。
「大丈夫だよ、必要なことは俺が色々教える。それに、真の勇者になるには、様々な試練をこなして力を覚醒させる必要があるんだ――少なくともミアは、試練をこなす度にどんどん強くなった」
「そうじゃないよ! 真の勇者っていうのが、誰よりも強くて優しい人のことなら……この紋章が現れるべきなのは、真の勇者はあたしなんかじゃなくてジ――わふっ!?」
「ユウナはさっきから気にしすぎだ。俺の目に狂いはない、ユウナなら立派な勇者になれる。だから、当面は仲間を集めつつ、ユウナが真の勇者として覚醒できる方法を探そう」
「き、急に頭を撫でるのは卑怯だよ!」
「まぁとりあえず、ユウナは気にしないで大丈夫だ」
「なんだか丸めこまれた気がするけど……でもあたし、ジークくんのためなら頑張るよ! けど、もしあたしが真の勇者として覚醒して、ジークくんと戦うことになっても、殺し合いにはしないからね!」
「あぁ、わかってる。俺もユウナと殺し合うのは御免だ。だから、その時は全力で試合をしよう。魔王と勇者の世界をかけた試合――面白そうだろ?」
とまぁ、そんなこんなでジーク一行の今後の方針が決まったのだった。
最初の目標はとりあえず、勇者の力を目覚めさせる試練の場を見つけることだ。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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