第四章 少女の対抗心2
時はあれから数分後。
場所は変わらず宿屋の一室。
「えへへ、嬉しいな……」
と、言ってくるのは、ベッドにちょこりと座っているユウナだ。
彼女はシーツを身にまとい、自らのお腹をなでなでジークへ続けてくる。
「ねぇねぇ、これであたしってジークくんのものになれたんだよね?」
「あぁ、そういうことだ。そして、ユウナのあらゆる能力は俺も使えるようになった」
「そっか♪」
「……さっきから思っていたんだが、どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」
アイリスのような脳みそお花畑ならばともかく、ユウナは普通の女の子だ。
そんな彼女が男の――それも魔王の奴隷にされたのだ。
常識的に考えれば、それは最悪レベルで嫌なことに違いないのだが。
「え、嬉しいに決まってるよ! あたしはジークくんのことが好きだから」
と、にこにこユウナ。
彼女はそのまま、ジークへと言葉を続けてくる。
「ジークくんものになれたって印を刻まれて、嬉しくないわけがないよ! それに、これはあたしが望んだことだし!」
「そういう、ものか?」
「そういうものなの! それに、これであたしもジークくんの役に立つし、置いて行かれずに済むかなって……」
「置いて行かれずにって……俺は最初からユウナを置いていくつもりなんかない」
きっと、ユウナはジークがアイリスと二人で旅立ってしまうと思ったに違いない。
けれど、どう考えてもユウナを置いていくことは非合理的なのだ。
なんせ。
(あんな一件のあとじゃ、ユウナも確実に冒険者ギルドにマークされる。あいつらに捕まったら、どんな目にあわせられるかわかったものじゃない)
ようするに。
ユウナを今一人にするのは危険すぎるのだ。
「それに、俺はユウナのことを役立たずなんて思ったこと、一度もない。いつも俺を庇ってくれたし、いつも傍にいて元気づけてくれた……そんな人を置いていくわけがない」
「そっか……うん、そっか♪」
と、嬉しそうなユウナ。
しかし、ジークはここでとあることに気がついてしまう。
「ん、その手の甲――右手のそれは?」
「え、これ?」
と、ユウナが見せてくるのは、薄っすらと輝く紋章の様な金色の痣だ。
彼女はその痣を撫でながら、ジークへと言ってくる。
「なんだか生まれつきあるんだ、これ。普段は見えないんだけど、魔力を使ったり感情が昂ったりすると、薄っすらと今みたいに見えるんだ」
「…………」
「でもどうして? 興味あるの?」
「いや……これは、そんな」
「?
」
ひょこりと首を傾げているユウナ。
けれど、ジーク自身衝撃が強すぎて、説明している余裕がない。
なぜならば。
ユウナの右手の甲――そこにあるのは、真の勇者のみに現れる光の剣の紋章。
闇の紋章と対を成す、光の紋章に間違いないのだから。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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