ブランのお金稼ぎ
時は早朝。
場所はイノセンティアの宿屋の一室。
ブランが布団の中でぬくぬく微睡んでいると――。
「ジークくん、見てこれ!」
「こんな朝早くからどうしたんだ?」
と、聞こえてくるのはユウナとジークの声。
前者のユウナは後者のジークへと、さらに言葉を続ける。
「うん! 実はちょっと朝市に行ってみたんだけど」
「朝市か。ウルフェルトが居た時は、そんな事をやっている余裕はなかっただろうからな……順調に復興が進んでいるようでよかった」
「あたしもそう思う! それでね、そこで美味しそうなお菓子が売ってたから買ってきたんだ……ほらこれ、ジークくんに!」
「俺にって、くれるのか?」
「当り前だよ! ジークくんにお疲れ様で賞!」
と、ここまで聞いた瞬間。
ブランの脳内はショックで吹っ飛んだ。
その理由は簡単だ。
(ブラン……魔王様にお疲れ様で賞してない!)
これは非常によくない事態だ。
魔王様ことジークは文字通り魔王様なのだ。
そして、ブランが使えるべき王。
そしてそして、一人の人間としても慕っているのだ。
にもかかわらず。
(ん……ブランがお疲れ様で賞をしないなんてありえない!)
などなど。
ブランはそんな事を考えた後。
シュタ。
とベッドから離脱。
そして、凄まじい速度で着替えを済ませると。
「ブラン、どこに行くんだ?」
と、聞こえてくるジークの声。
ブランはそんな彼へと返すのだった。
「ん……ブランにはしなければならない事ができた」




