アハトの災難7
「それではミアの話を始めようじゃありませんか!」
と、元気よく喋り出したのはアイリスだ。
彼女は身振り手振りを交え、そのまま言葉を続ける。
「それでは、私が『一番ヤバい』と思ったミアの話からしましょう!」
「うん、うん!」
と、瞳をキラキラ返すのは柚だ。
アイリスはそんな彼女へとさらに言葉を続ける。
「あれはそう……ミアがまだクソザコ勇者だった頃の話」
「え、ミア様って最初から強かったんじゃなかったの?」
「それはそうでしょうが! まぁ、最初はちょっと……本当にちょっと強いくらいの人間でしたね……まぁはい、私よりギリギリちょっと強いくらいでした!」
「アイリスお姉ちゃんは弱いの?」
「何を言っているんですか! 私は滅茶苦茶強いですよ! なんせ、魔王様に次ぐ実力者ですからね!」
「わ~~~~! じゃあ、ミア様はとっても強いんだね! だって、とっても強いアイリスお姉ちゃんに勝てるくらいだもん!」
「……うぐっ」
と苦い表情のアイリス。
きっと、意図せずミアを持ち上げる展開になったことが辛いに違いない。
だがしかし、アイリスは微塵も諦めていない様子。
彼女はむむっとした表情で、柚へと言う。
「それでは話を戻しますが、ミアの一番やばい話です!」
「うん!」
と、キラキラ瞳を輝かせる柚。
アイリスはそんな彼女へと言葉を続ける。
「ミアの一番やばいところ……それは!」
「それは?」
「まだたいして強くないくせに、魔王様にたてついてきたんですよ! しかも、占領下の村を解放するとかいうくだらない理由で!」
「かっこいい!」
「そう、かっこいい! え、かっこいい? いや、ださださのださじゃないですか!」
「そんなことないよ!」
「そんなことあるんですよ! むぅ、どうやら柚は常人と感性が違うようですね!」
と、困った様子の表情をするアイリス。
なんだか妙な雲行きになってきた。
(前から思っていましたが、アイリスの感性は常人からだいぶずれているみたいですね)
案外これは放置していても大丈夫かもしれない。
などなど、アハトがそんな事を考えている間にも。
「ええい! では次の話です! 次こそが一番やばい話――より酷いミアの無様な醜態の有様の様子を話そうじゃありませんか!」
と、机を一叩きアイリス。
彼女は瞳に炎を灯し、熱く語り始めるのだった。
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イラストはひよひよ先生が担当してくれており、エ○シーンや戦闘シーンを見応えバッチシに表現してくれております!




