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ジークとユウナと狐娘族5

「うぉおおおおおおおお! じゃあ、ウルフェルトは二人で協力して倒したんだな!」


「と言っても、あたしは最後の一撃を譲ってもらった感じだけど……」


 と、背後から聞こえてくる八重とユウナの声。

 八重はそんなユウナへと、さらに言葉を続ける。


「最後の一撃が大事なんだ! だからやっぱり、ユウナ様はすごいんだ!」


「あはは……そう言ってくれると嬉しいけど、ジークくんの良さもわかってくれたかな?」


「ユウナ様が信じてるなら、八重も信じるぞ!」


 ジークはそもそも、八重から『ユウナを騙している疑惑』をかけられていた。

 だとしたら、八重的に『今のユウナを信じるのは危険』と判断した方がいいのでは?


 などと。

 ジークは内心思ってしまうが。

 まぁいい。


(八重が若干ポン……素直なのは一連の会話ではっきりとわかった)


 下手に何か言ってしまえば、また警戒心マックスになるに違いない。

 それにそんな事をすれば、ユウナに申し訳ない。

 彼女はジークのために、八重の警戒心を解こうとしてくれているのだから。


「今更なんだけど、一ついいかな?」


 と、聞こえてくるユウナの声。

 見れば、彼女は八重へと話しかけている。


「あたしの呼び方なんだけど……」


「呼び方? ひょっとして、何か失礼な呼び方をしちゃったか?」


 と、返す八重。

 ユウナはそんな彼女へと言う。


「えっと、そうじゃなくて……もっと失礼でいいというか」


「?」


「八重さんって、あたしの事なんて呼んでる?」


「ユウナ様だ! もしくは勇者様だ! とっても偉いんだぞ!」


「…………」


 と、なんとも言えない顔つきのユウナ。

 ユウナは性格的に、『様』をつけられるのが慣れないに違いない。


 そういえば、ミアもそうだった記憶がある。


 そしてジークは知っている。

 狐娘族は昔から勇者『様』づけ過激派だ。

 当時など、ミアが『様はつけなくていい』と言っても、永遠に様をつけていた。


 要するに。

『勇者には様をつけるべし』というのは、狐娘族の本能――遺伝子に刻まれた情報に違いない……実際。


「『ユウナ』って呼び捨てでいいよ?」


「ダメだ! そんな事をしたら、不敬で八重は狐娘族失格になる!」


 と、聞こえてくるユウナと八重の声。

 思った通りの展開だ。


 などなど。

 ジークがそんな事を考えていると。


 きゅるるるるる~~~~~っ。


 と、唐突に聞こえてくる可愛らしい音。

 その発生源は――。


「八重さん、お腹空いちゃったの?」


「あ、うぅ……」


 と、聞こえてくるユウナの声。そして、それに続く八重の恥ずかしそうな声。

 要するにそういう事に違いない。

 故にジークは二人へと言うのだった。


「ちょうどそこに茶屋がある、寄っていくか?」


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