ジークとユウナと狐娘族3
「八重は知ってるんだ! おまえの正体は魔王……八重が成敗してやる!」
ズビシッ!
と、ジークの方へ指をさしてくるのは八重だ。
彼女はコロシアムの時と異なり、奴隷服は当然着ていない。
狐娘族の正装――巫女服のようなものを着ている。
それになにより。
「八重さん、元気になったんだね!」
と、聞こえてくるのはユウナの声だ。
彼女はニコニコ笑顔で、八重へと続ける。
「でも、ジークくんを成敗するってどういうこと? ジークくんはとってもいい人だよ? ほら、八重さんの事も助けてくれたでしょ?」
「うっ……そ、それはそれなんだ!」
と、ユウナに返す八重。
彼女は警戒しているに違いない――尻尾を立てながら、ユウナへと言葉を続ける。
「そいつからはすごいオーラが出てる! どす黒い闇のオーラだ!」
「オーラ?が出ても、良い人なのには変わりないよ?」
「でも魔王は危ないんだ! 勇者様はきっと騙されてるんだ!」
ふしゃーと、狐なのに猫の様な八重。
と、ここでジークは気がついてしまう。
(なんだ? さっきまで感じていた、周囲からの視線が変わったような……)
考えた後、ジークは八重をユウナに任せ、周囲に意識を集中させる。
すると聞こえてくるのは。
『また八重が暴走しているわ……止めなくていいの?』
『魔王に思うところはあるけど、助けてくれたから疑う必要はないのにね』
『なにより、勇者様が安全と判断してるから、一緒に居るのよね?』
『誰か八重を止めた方がよくない?』
『あたしは嫌よ……あの子、なかなか止まらないもの』
なるほど。
どうやら、先ほどジークが思った事は間違いじゃないに違いない。
要するに。
八重は若干アホの子入ってる。
さてどうしたものか。
などなと、ジークがそんな事を考えている間にも。
「闇のオーラはわかったけど。それだと、どうして危ないの?」
「あ、危ないからだ! 危ないから危ないんだ!」
と、聞こえてくるユウナと八重の声。
そんな彼女達は、順にさらに言葉を続ける。
「えー、そんなことないよ?」
「八重達は知ってるんだ! 魔王はすっごい悪人なんだ!」
「それって、昔のジークくんでしょ? 今のジークくんは優しいよ! それに……昔のジークくんも、そんなに悪人には思えないけど」
「うぅ……でも、でもそうなんだ!」
と、なんだか駄々っ子の様になってきた八重。
若干面倒になってきた。
こうなれば、ユウナと共にここから逃亡するのもありだ。
いくら八重の身体能力でも、ジークとユウナには追いつけまい。
と、ジークが考えた……まさにその時。
「そうだ! じゃあ、あたし達と一緒に街を散歩しようよ!」
と、まさかまさかな事をおっしゃるユウナ。
彼女はそのままニコニコ笑顔で、八重へと言うのだった。
「きっとジークくんがイイ人だってわかるよ!」
『常勝魔王のやりなおし』書籍版3巻
めちゃくちゃ早いところだと、もう読者様の元に届いているみたいです!
エ○シーンが見れるのは、書籍版のみです!!
それはもうかなり加筆しているので、よろしければ読んでみてください!!




