ジークとユウナと狐娘族2
そうして時はあれから少し後。
現在、ジークとユウナはイノセンティアの大通りへとやってきていた。
「すごい、全然違う!」
と、周囲を見ながら言ってくるのはユウナだ。
彼女が驚いた様子なのも無理がない。
(少し前にちらりと見た時よりも、さらに復興が進んでいるな)
少なくとも、先日の夜にあった奴隷売買の店。
あれなどは現在、跡形もなくなっている。
それどころか、跡地にまったく違う建物が建っている。
夜のイノセンティアはとても静かだった。
すなわち、徹夜で狐娘族達が作業したとは考えづらい。
(今朝の内に建物一つ建てたのか?)
恐ろしい事は、そんな様子の建物が何軒もあることだ。
ハッキリ言って、ジークの想像以上の建築速度だ。
(戦士としてだけでなく、こうまで建築関係で優秀とはな……かつてミアと戦った際、ミアの側につかれたのは損失だったな)
などなど。
ジークがそんな事を考えていると。
くいくい。
くいくいくい。
と、引かれるジークの袖。
見れば、ユウナが何か言いたそうな表情で、ジークを見て来ている。
ジークはそんな彼女へと言う。
「どうしたんだ?」
「えっと、その……」
と、ちらちら周囲を見ながら言ってくるユウナ。
彼女はそのままの様子で、さらにジークへと言葉を続けてくる。
「なんか、周りからすごい見られている気がするんだけど……」
「周りから? あぁ、それは当たり前だろ」
「え、どうして?」
「狐娘族はミア――真の勇者に仕えた一族の末裔だぞ? 言い方は悪いが、ミアの熱狂的信者の一族ともいえる」
「つまり?」
「お前はミアの後継者。狐娘族達からしたら、ミアとほぼほぼ同一の存在だ」
「あたしも信仰されてるってこと!?」
と、なおさら周囲を見回し始めるユウナ。
ジークはそんな彼女につられて周囲を見る……のだが。
「……ん?」
と、ジークはここでとある事に気がついてしまう。
狐娘族達の視線がどうにもおかしいのだ。
(どこを見ているんだ、あいつら)
確かに狐娘族の視線はこちらの方に向いている。
しかし、そこからさらに突き詰めてみると。
(あいつら、俺の方を見ていないか?)
もちろん、狐娘族達はユウナの方も見ている。
けれど、ユウナの方を見た後にそのまま、ジークの方に視線がスライドしてきているのだ。
しかもしかも。
そんな狐娘族達の視線は、ジークのところで固定されている様に見える。
「…………」
まずい。
なんだか嫌な予感がする。
狐娘族はかつて魔王から離反した魔物。
となれば、コロシアムで出会った八重のように、ジークが魔王と直感的にわかるに違いない。
さて狐娘族達。
信仰する勇者ユウナが、魔王と一緒に歩いて居たらどう思うか。
無論、狐娘族はバカではない。
ジークがウルフェルトを倒した事は、狐娘族だって知っているに違いない。
けれど、『勇者ユウナとどういう関係?』とは思っているに違いない。
勘違いしていた。
狐娘族にとって。
ある意味では、ジークの方が好機の的に違いな――。
「勇者様から離れろ!」
と、ジークの思考を断ち切るように聞こえてくる少女の声。
同時、ジーク達の目の前に上空から着地してくる狐娘族――八重だ。
さきほど話たばかり、ジークがコロシアムで出会った狐娘族の少女だ。
彼女はジークを指さし。
どこかアホの子っぽい様子で、言葉を続けてくるのだった。
「八重は知ってるんだ! おまえはの正体は魔王……八重が成敗してやる!」
『常勝魔王のやりなおし』書籍版3巻
めちゃくちゃ早いところだと、もう読者様の元に届いているみたいです!
エ○シーンが見れるのは、書籍版のみです!!
それはもうかなり加筆しているので、よろしければ読んでみてください!!




