第三章 淫魔のご褒美4
「今後の方針は現代の勇者の絶滅だ――血筋だからというだけで、権力を振りかざす愚かな連中には、早々にこの世から消えてもらう」
「おぉ! 粛清ってやつですね!? おもしろそうじゃないですか! ミアのリスペクト始めた時はどうなるかと思いましたけど、さすがは魔王様です! 私はそんな魔王様に一生ついていきますよ!」
と、言ってくるアイリス。
彼女はそこまで喋ると一転――。
「そ、それで魔王、様ぁ……もう一つの件、なんですけどっ」
などと、蕩けた様子のアイリス。
彼女は身体をもじもじ言葉を続けてくる。
「《隷属の剣》についてって、ひょっとしてアレ、ですか?」
「あぁ。五百年前に俺が死んだせいで、《隷属の剣》の力も切れたからな。もう一度、お前に《隷属の証》を刻みたい……もちろん、アイリスが嫌じゃなけれ――」
「嫌なわけないじゃないですか!」
と、アイリスはささっとベッドで仰向けに寝転がる。
そして、彼女はお腹を見ながら、ジークへと言ってくる。
「あは♪ 魔王様ぁ……アイリスはいつでも、準備完了ですよ?」
ジークはそんな彼女に頷く。
そしてその後、彼は《隷属の剣》を取り出す。
(この《隷属の剣》はただの剣じゃない。むしろこの剣は、剣としてはたいした力は持っていない。この剣の本領は――)
刺し貫いた者に《隷属の証》を刻み、それを刻んだ者の奴隷すること。
そして、刻まれた者は自らが持つ能力を刻んだ者と共有することになる。
と、そんな《隷属の剣》の能力を簡潔にいうならばこうなる。
淫紋を刻んだ相手の能力を、全部使えるようになりますよ。
ようするに、アイリスに淫紋を刻めば、アイリスが使うあらゆる能力。それをジークも使えるようになるということだ。
「アイリス、いくぞ」
「は、はい……魔王様ぁ!」
そして、ジークはアイリスのお臍の下めがけ剣を突き入れる。
一見、ショッキングな光景に違いない。
だがしかし、心配は無用だ。
なんせ、《隷属の剣》は能力発動時には、対象を決して傷つけないのだから。
今の《隷属の剣》は実態がないと言った方が、わかりやすいに違いない。
などなど。
ジークがそんな事を考えている間にも。
アイリスの臍の下あたりには、《隷属の証》が浮かんでくるのだった。
さて、時はあれから数分後。
「よし、問題なくアイリスの精神操作魔法を使えるようになっている。下位から上位まで余すところなくな」
「そうですか、それはよかったです……私も、とても嬉しいです」
と、幸せそうな様子で、お臍の下をさすさすしているアイリス。
いったい彼女はどうして、こうも幸せそうなのだろうか。
ジークがそんなことを考えたその時。
「ところで魔王様、他に用事はない感じですか? あるなら、なんでもしますよ!」
と、クネクネ言ってくるアイリス。
ジークはそんな彼女へと言う。
「ん、そうだな……あとは闇の紋章を持つ者をどうするかについて話すくらいだな」
闇の紋章とは、優れた力を持つ魔物のみに現れる紋章のことだ。
その紋章は必ず左手の甲に現れ、例え転生しても消えることはないという。
(魔物からの転生体――身体に魔を宿す人間という意味を込め、便宜上『宿魔人』とでも呼ぶか)
その宿魔人の紋章引き継ぎにかんして、五百年前は書物で調べるしかなかった。
だが、実際転生した今はよくわかる。
なんせ、ジークの左手の甲には、生まれつきその様な痣があったのだから。
(そういえば、あの書物に真の勇者が持つ光の紋章について、興味深い記述も――)
と、ジークが最後まで考える前に。
それは起きた。
「ジークくん? 騒がしかったけど、だいじょ――」
なんと、ユウナさんが部屋にインしてきた。
その瞬間、ジークの頭の中は真っ白になる。
(やばい……この状況だけ見たら完全に事後じゃないか?)
なんせ、アイリスは下腹部を抑え、幸せそうな顔。
その上、なにやらくねくねしているとまで来ている。
(どう考えてもやばい)
そうこうしている間にも、ユウナはどんどんベッドの方へ近づいて来る。
そして、彼女はジークとアイリスを交互に見たのち、ジークへ言ってくる。
「アルくん、これなに!? アルくんってこういうことする人じゃなかったよね! で、でも……もしもそういう趣味があるなら、あたしにまず言って欲しかったよ!」
「えと、これは……なんていうか」
そうだ、アイリスだ。
こういうときこそ、アイリスに頼ればいいのだ。
ジークは一縷の望みをかけて、アイリスの方を――。
「それじゃあ私はもう寝るんで! ありがとうござました!」
羽をぱたぱた、尻尾をふりふり。
アイリスは飛んで行ってしまう……残されたのは。
「それで、アルくんは何してたの!?」
ぷんぷんモードのユウナだ。
ジークはとりあえず彼女をなだめるため、ありのまま彼女へ話す。
「俺はアイリスに《隷属の証》を刻んでて、それで――」
「《隷属の証》ってなに!?」
「な、なんていうか……俺の奴隷になった証みたいな感じでだな――」
「それ、あたしにも刻んで!」
「……は?」
「いいから、それを早くあたしにも刻んで!」
事態はますます混迷化していくのだった。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。
また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。
ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。
冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。
すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。




