表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/207

第九章 勇者の試練3

「っ!?」


 気がつくと、ユウナは見知らぬ空間で一人立っていた。

 どこを見回しても何もない――けれど、温かい光と空気に満たされた空間。


(いったい、ここってどこなんだろう?)


 ユウナの記憶に間違いがなければ、ユウナは《勇者の試練》の扉に触れた。 

 その瞬間、気がつくとここに――。


「こんにちは。おまえがユウナですね?」


 と、ユウナの思考を断ち切るように聞こえてくるのはアハトの声だ。

 ユウナがそちらへ視線を向けると、当然のようにそこに居たのはやはりアハト。


 しかし何かがおかしい――アハトの像が全体的にぼやけているのだ。

 ユウナはそんな彼女へと言う。


「どうしてアハトさんがここに居るの? それになんだか身体が……」


「私はアハトではないですよ、ユウナ」


「え、でも――」


「初めまして。私の名前はミア・シルヴァリア……もっとも、その残留思念の様なものですが」


 と、ミアが言ったその直後、今まであやふやだった彼女の像がしっかりと形を成す。

 そうして現れたのは、アハトそっくりの女性。


しかし、その身を包む美しく荘厳な黄金の鎧が、別人だという事を意識させてくる。

 要するに、目の前に居るのは本物の勇者――真の英雄というわけで。


「ぁ、あ、あたし、は――その、ゆ、ゆゆ、ゆうっ」


「緊張しなくてよいですよ。言ったでしょう? 今の私は残留思念、何の力もありません」


 と、優しく笑いながら言ってくるミア。

 彼女はそのまま、ユウナへと言葉を続けてくる。


「というより、緊張するのは私の方ですよ。こうして、後継者と話すのは初めての経験ですので」


「え、ミアさんでも緊張するの!? というか、あたし以外の後継者って、この《勇者の試練》でミアさんと話してないの!?」


「もちろん緊張しますよ、おまえと一緒です。後者についてですが――そうですね。例えるなら《勇者の試練》には、案内役の様な者が居るのです」


「それがミアさん?」


「その通り。そしてその案内役は毎度、歴代後継者の中から無作為に選ばれる」


「あぁ、それで後継者と話すのが初めてって……」


「そういうことです。ところで、緊張はとれましたか?」


 言って、首をかしげてくるミア。

 ユウナはここで気がつく――彼女はユウナの緊張を取るために、話してくれていたのだ。

 などなど、ユウナがそんな事を考えている間にも。


「それでは私の役目を果たします」


 言って、ミアはユウナへと《勇者の試練》の内容を説明してくる。

 その内容をまとめるとこんな感じだ。


 神獣と呼ばれる、試験官の様な者と一騎打ちをし、それを打ち倒す。

 何度負けても、勝つまで挑んでいい。

 挑戦者はこの空間の中でのみ、死んでも生き返る。

 この空間は外と隔絶されている――そのため、時間が経過しない。

 試練を諦める時は、何のリスクもなく外に出られる。

 そして、試練を突破した際には継承が始まる――歴代全ての勇者の能力を、当代の勇者が引き継ぐのだ。


 そこでユウナは気になったのは。


「神獣って、どういう感じなの?」


「それは形ですか? それとも強さの事でしょうか?」


 と、ひょこりと首をかしげてくるミア。

 彼女はそのままユウナへと言葉を続けてくる。


「よければ、もう戦ってみますか?」


「え、戦えるの!? それなら戦いたいかも……時間の経過がないとはいえ、あんまり時間をかけるとジークくんに悪い気がするし」


「……ジーク、くん? ジークとはまさか――」


「あ、えっと……は、早く戦ってみたいな!」


「なんだか誤魔化している気がしますが、いいでしょう」


 と、ミアが言ったその直後――ミアの姿がまるで霞の様に消えていく。

 そしてそれと同時、ユウナの前へと現れたのは。


 二階建ての家よりもなお大きな獣。

 白く美しい体毛を持ち、九つの尾を持ったその姿。


『ユウナ。その神獣《九尾の狐》を倒す事が、試練の内容です』


 と、どこからか響いて来るミアの声。

 しかし、ユウナは目の前の神獣から目を離す事が出来ない。


 凄まじい魔力、凄まじい圧力――完全にユウナよりも格上、ひっくり返っても勝てない。

 逃げた方がいい。これは戦ってはダメなものだ。

 生存本能が全力で逃げる事を――。


「……っ」


 ユウナは唇を噛む事によって、なんとか正気を取り戻す。

 そんな彼女はなんとか剣を引き抜き、それを神獣へと構える。

 そうしてその直後。


 ユウナは死んだ。


『常勝魔王のやりなおし』の3巻の発売が決定しました!


発売日は11/1なので、皆様に読んでいただけると嬉しいです!

なお書籍版ではいつもの通り、エ○シーンを大量追加しております――具体的にいうと一万文字近くは加筆しているかと……。


これからも気合いいれて書かせていただきますので。

書籍版3巻、コミカライズ版合わせてよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ