第三章 淫魔のご褒美3
「真面目な話っていうのは、今後の方針についてと《隷属の剣》についてだ」
「今後の方針って、現代の勇者達を倒すで決まってるんじゃないですか?」
と、そんな事を言ってくるアイリス。
ジークはそんな彼女へと言う。
「あぁ、それは変わらない。だけど、本質的なところが少し変わった……というより、変えざるをえなかった」
「どういうことです?」
と、ひょこりと首をかしげてくるアイリス。
簡単にわからせるため、まず話すべきことは決まっている。
「五百年前の勇者――ミアのことは覚えているか? あいつがどれだけ凄かったか」
「ミアだぁ~あ? ひょっとして、魔王様を倒してくれちゃったクソ勇者のことですか?」
と、ものすごく嫌そうな顔のアイリス。
彼女はそのままジークへと言葉を続けてくる。
「あいつを忘れるわけがないじゃないですか! まぁ……凄い奴なんじゃないですか? 魔王様を倒すくらい強いですし、嫌いですけど。おまけに可愛いですし、嫌いですけど」
想像以上にミアが嫌いに違いない。
ジークは一度咳払いし、再びアイリスへと言う。
「それでそのミアなんだが、お前の言う通りあいつはすごかった」
「前から聞きたかったんですけど、魔王様はあいつのどこをそんなに評価して――」
「高潔さももちろん、特筆するべきは強さだ! ミアは人間のくせに、この俺を完封した! さらに、あいつがホワイト・ルナフェルトを倒した戦いを覚えているか!?」
「あぁ……人間共の城に攻め込んで、一網打尽にしようとした」
本来ならば勝てる戦いだった――それほどの優位があったのだ。
しかし、ミアは単身人々の盾となり、ホワイト・ルナフェルトを逆に打ち取った。
(今思い返してみると、あの戦いがターニングポイントだったように思う)
以降。
ミアは軍神のように崇められ、多くの兵士とともに魔王城まで一気に攻めてきた。
「その末に俺は負けた」
「毎度毎度、人間の癖にすごい戦いぶりでしたよね。魔王様との最後の戦いなんて特に」
と、言ってくるアイリス。
ジークはそんな彼女に頷きながら、言葉を続ける。
「まさか三日三晩戦い通しになるとは、俺も思わなかった……というか、何度も言うがたかが人間とは思えない体力と、戦闘能力だった」
だからこそジークは認めたのだ。
あいつこそが真の勇者――あいつにならば、倒されても文句がないと。
しかし。
「だからこそ、現代の勇者は許せない!」
「ユウナから聞きましたけど、現代勇者って堕落してたり弱かったり、やばいんですよね?」
アイリスの言う通り、一言で表すとまさに堕落だ。
ミアが持っていた強さ、そして高潔さは完全に失われている。
魔王が考えるべきではないが、現代勇者からは優しさも消えている。
感じるのは私利私欲のみ。
故にジークはアイリスへと言う。
「現代の勇者――奴らの一番の問題は、ミアの名を汚しているところだ」
「たしかに聞いた限り、現代では『勇者にはかかわらない方がいい』流れっぽいですしね」
「あぁ。現代の勇者がそんなだと、この時代の人間、そして後世の人間達も確実にこう思う――『きっと、現在過去未来通して、勇者ってやつは全員ろくでもない』」
ありえない。
考えただけで、吐き気がしてくるレベルだ。
ジークはイライラを押し殺しつつ、アイリスへと言う。
「いいか、アイリス! 俺を倒したミアをバカにすることは、この俺が絶対に許さない!」
「え、マジですか!? 私、結構バカにしてますよね!? っていうか、別によくないですか? あんな奴、バカにされて当然――」
「いいのか? お前は俺がそんなくだらない奴に倒されたと、世間からそう思われても」
「…………」
完全にフリーズするアイリス。
それから数十秒後――彼女は身体をピクンと揺らした後、ジークへと言ってくる。
「現代の勇者の存在は悪ですよ! 偉大なるミアちゃんを汚すとか、とんでもないギルティじゃないですか!」
「ようやくわかったか」
言うなら、現代勇者は病巣だ。
その存在のせいで、ミアの歴史がどんどん犯されている。
対処法はただ一つ。
「今後の方針は現代の勇者の絶滅だ――血筋だからというだけで、権力を振りかざす愚かな連中には、早々にこの世から消えてもらう」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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