表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/207

第八章 魔王の力

 時はユウナ達と別れた後。

 場所はウルフェルトが陣取っている城――その城門前。


「何度も見てもすごい城だな」


 この城はミアの為に作られたものであり、ウルフェルトにはまるで相応しくない。

 街と同じく、和風建築で作られた巨大な城。

 膨大な敷地をフル活用しているだけでなく、空まで届く程の高さを誇っている。


(まったく。ウルフェルトがここの玉座に腰掛けていると思うだけで、本当に不快な気分になるな)


 とはいえ、ジークがそんな事を考えるのも――そして、ウルフェルトがミアを冒涜していられるのも、あと少しの運命だ。


(ユウナ達には『ミハエルから奪った資料』を渡してある。あれにはご丁寧に『城の見取り図』と《勇者の試練》の配置も書かれていたから、まず迷う事はないだろ)


 それになにより、ユウナには《光の紋章》がある。

《光の紋章》と《勇者の試練》はきっと引き合うに違いない。


 となれば、そもそも地図などいらない可能性が高い。

 などなど、ジークはそんな事を考えた後、大きくため息を吐く。


「要するに、後は俺の開始待ちってわけだ」


 派手に立ちまわり、ユウナ達が潜入しやすい様に陽動する。

 となれな、大量の冒険者を相手する事になるに違いない。


(雑魚を相手するのは、本当に作業感がすごいから面倒くさいが……)


 ユウナ達のためだ、文句など言っていられない。

 ジークは「よし」と一言、気分を一新。

彼は目の前の城門へと手を伸ばし、それを軽くノック――その直後。

 

 風船が割れたかのような、けれどもそれより数倍大きな音。

 パラパラと降ってくる、無数の木だった物の破片。


(まずいな、もっと派手にやった方が陽動になったか……反省して次に生かそう)


 そんなジークの目の前にあった城門は、綺麗に消滅していた。

 理由は簡単。

先ほどのジークの凄まじいノックの衝撃に、門が耐えきれなかったからだ。

 と、ジークがそんな事を考えていると――。


「ひっ」


 と、ジークの前の方から聞こえてくる声。

 見れば、冒険者がジークの方見て、完全に固まってしまっている。

 ジークが扉を壊した際、偶然近くに居たに違ないない――まったく気がつかなかった。


(ちょうどいい、さっきの失敗をこいつで取り戻すか)


 入場を派手に出来なかったのなら、その後を派手にすればいい。

 例えば……と、ジークはなるべく邪悪な笑顔を浮かべて冒険者へと近づいていく。

 そして、ジークは冒険者の顔の横に手を翳しながら言う。


「恐怖しろ、魔王が攻めて来たぞ」


 直後、ジークの手から放たれたのは高密度に圧縮され、光線のようになった魔力。

 それは冒険者の頬をかすめ、一瞬でその冒険者の背後へと飛んでいき。


 巻き起こったのは、フロアを破壊しつくす程の凄まじい爆発。


 気がつくと、ジークの前に居た冒険者は消えていた。

 それだけではない――周辺から太く巨大な柱を残し、あらゆる壁や床板などが消え去っていたのだ。


(さっきの冒険者に『敵襲だ!』と叫んでもらう予定だったんだが、少し強めに魔力を放ち過ぎたか……やれやれ、加減が本当に難しいな)


 現代の人間は脆すぎる。五百前の人間なら、今の攻撃程度余裕で耐えた。

 けれど、結果オーライという言葉もある。


「な、なんだ今の爆発は!?」


「おいあれを見ろ! あの爆心地に立っている男!」


「魔王だ――ウルフェルト様が言っていた魔王だ!」


「お前ら、集まれ! 敵襲……敵襲だぁあああああああああああああっ!」


 と、聞こえてくる冒険者達の声。

 奴等はまるで小虫の様に、至る所からその姿を見せてくる。


 ざっと見た限り、その数は五百を軽く超えどんどん増えていっている。

 きっと、あと少しすれば千を越えるに違いない。


(一撃で消し飛ばす事は可能だし、棒立ちしていても奴等の攻撃は、《障壁》のある俺には届かないが……そんな事はしない。俺の役目は陽動、なるべく派手に長くいかせてもらうぞ)


 考えた後、ジークは床を激しく蹴りつける。

 そして、彼は凄まじい速度で一瞬にして冒険者の群れへと突っ込んでいき。


「五百年前の人間の様に生き延びて見せろ、俺という災厄から」


 言って、すぐ傍に居た冒険者の顔を掴み、そのまま彼方へと目にも止まらぬ速度で投げ飛ばす。


 直後、巻き起こったのはその冒険者が壁を突き破る轟音。

きっと、本当に彼方へと飛んでいったに違いない。

 と、ジークがそんな事を考えていると。


「その首、もらったぁ! くらえ魔人を屠った我が奥義――無双黒炎瞬殺斬!!」


 ジークの真横から聞こえてくる声。

 見れば、冒険者の一人がジークの首目がけ、剣を振るってきている。

 見るからに渾身の一撃。


 だが遅い――止まって見える。

 ジークは近づいて来る剣の腹を、下から叩き瞬時に武器破壊。


「武器が破壊されたなら、呆然とする前に回避行動を取れ」


 言って、ジークは身体を捻り、その冒険者の腹へと音速の後ろ回し蹴りを放つ。

 それと同時――。


 パンッ!


 と、音を立てて消滅する冒険者。

 どうなったかなど説明するまでもない。


「さぁ、どんどん来い。この俺を止めて見せろ」


 ジークがそう言った直後、ジークに押し寄せてくるのは冒険者達の波。

 懐かしい。数だけで言うならば、まるで五百年前の戦場のようだ。

 などと、ジークはそんな事を考えながら、冒険者の波の中を舞う。


 背後から突きだされた槍を余裕で躱し、繰り出し手へ拳による突きで反撃。

 飛んできた矢を掴み、それを射手の額へと何倍もの速度で投げ返す。

 無数の乱打を放ってきた奴には、無数の乱打で返し真正面から粉砕。

 放たれた魔法には魔力で介入し、その軌道を逸らして全て放ち手に返して周囲ごと爆砕。


 時にはジークから近づき、冒険者を投げ、吹き飛ばし、破裂させ。

 粉砕粉砕粉砕――真正面からあらゆる敵を、堂々と撃ち破っていく。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


 そうして、戦い続けて体感にして数分。

 いくら雑魚相手とはいえ、ジークのテンションも中々に上がって来た――故に。


「どうした、こんなものか冒険者!? もっと俺に抗って見せろ!」


 言って、ジークは傍に居た冒険者へ瞬時に接敵。

そのままジークは冒険者が反応する前に、その冒険者の足を掴んで武器とする。

 そして、彼はフレイルの要領で、その冒険者を振り回す。


 回せば回すほどに巻き起こるのは破壊の暴風。

 ジークは台風の目の様に、周囲の全てを破砕していき。

 

 メキョ、ドゴンッ。

 と、突如聞こえてくる異音。

 見れば、ジークのフレイルの持ち手から先がなくなっていた。


(中々に馴染む武器だったんだが、少し乱暴に扱い過ぎたか)


 となれば、次の武器を探す必要がある。

 ジークがそうして、品定めをするが如く周囲を見回すと。


「バカな……っ」


 ジークの周囲から冒険者達は居なくなってしまっていた。

 要するに、気がつかない間に全員倒してしまったのだ。


(まずい……何分で全員倒した?)


 ジークの体感ではまだ五分そこいらだ。これでは全く陽動にならない。

 フレイルを回し続けて攻撃するのは、さすがにやりすぎたに違いない。

 少なくとも、あれをする前はまだ冒険者はかなり残っていた。


(早く次を探さないとまずいな。もっと陽動して――ん、この気配は?)


 感じる、遠くからジークの方へと近づいて来る気配。

 間違いない。この気配は――。


「勝った気になっている様だな魔王!」


 と、ジークの思考を裂く様に聞こえてくる声。

 見ればいつの間にやら、ジークから離れた位置に八人の男が立っていた。


『常勝魔王のやりなおし』の3巻の発売が決定しました!


発売日は11/1なので、皆様に読んでいただけると嬉しいです!

なお書籍版ではいつもの通り、エ○シーンを大量追加しております――具体的にいうと一万文字近くは加筆しているかと……。


これからも気合いいれて書かせていただきますので。

書籍版3巻、コミカライズ版合わせてよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ