第七章 ユウナ覚醒へ向けて2
「ウルフェルトを倒す前に、奴の呪いを解けばいい」
そうすれば、ウルフェルトを倒しても、奴に『奪われた命』は消費されない。
無事にそれらは持ち主の所へ戻るというわけだ。
それになにより、解呪すればウルフェルトは大幅に弱体化するに違いない。
まず何度も倒す必要がなくなる。
加えて、戦闘技術も大幅に劣化するのだから。
(かなり面倒じゃなくなるから、どう考えてもスマートな手段だろ)
などなど。
ジークがそんな事を考えていると。
「ん……でも、どうやって解呪するの?」
「同意です。おまえでも解呪できないから、先ほどの話になったのではないですか?」
と、順に言ってくるのはブランとアハトだ。
ジークはそんな彼女達へと、説明をしようと――。
「あたしがウルフェルトさんの呪いを解くよ」
と、言ってくるのはユウナだ。
実はここに来る道中、ジークは彼女に『解呪の方法』を話していた。
結論から言って、ジークではウルフェルトの解呪は不可能だ。
その点は、あの森で出た結論と変わらない……しかし。
「あたしが《勇者の試練》を受けて、ミアさんの力を手に入れる。そして、あたしがその力を使って解呪をする」
と、堂々とした様子で言ってくるユウナ。
これこそがジークの考えた唯一無二の手段――真の勇者として覚醒したユウナ。そんな彼女の回復魔法ならば、ウルフェルトの呪いなど瞬時に解けるに違いない。
なおかつ、これにはメリットがある。
ジークはそう考えた後、そのメリットを言う。
「ユウナが《勇者の試練》を突破して、無事に力を継承する事ができれば。ウルフェルトは『ミアの力』を確実に振るえなくなるっていうオマケもあるしな」
「え、なんでそうなるんです?」
と、ジークの言葉に対し悪魔尻尾で?マークを作ってくるアイリス。
ジークはそんな彼女へと言う。
「言っただろ。あいつは《勇者の試練》からミアの力を盗んでいるってな。例えばそうだな――盗みに入った家の中に、盗む物が何もなかったらどうだ?」
「そんなの決まって……あぁ、なるほど! そういう事ですね♪」
「わかったようだな、アイリス」
「このアイリス、わかりましたとも! ユウナがミアの力を引き継いじゃえば、《勇者の試練》の中にある『ミアの力』は空になる!」
そういう事だ。
元が空になれば、ウルフェルトへの『ミアの力』の供給はなくなるに違いない。
さて、説明も終わったところで本題に入ろう。
「たった今から、俺達はウルフェルトが居座っている城へと攻め込む」
アハトの事もあり、戦いはもはや時間との勝負。
正直、こうしている時間すらも惜しいのだ。
故にジークはみんなへと、要点だけを言う。
「まず俺が一人で城に突っ込んで、ウルフェルト含む冒険者達の注意を引くように立ちまわる――お前達はその隙に《勇者の試練》へ向かえ」
「わたし達はユウナの護衛ということですね?」
と、言ってくるのはアハトだ。
ジークはそんな彼女へと言う。
「そういう事だ。俺が陽動役をしたとしても、乗り込む場所は敵だらけの城だ――偶発的な戦闘は避けられない可能性が高い」
「そうなったときに、ユウナを確実に守り切れる振り分け――なるほど、納得しました」
「あぁ。アハト、それにアイリス、ブラン……おまえ達三人がついて居れば問題はないだろう?」
「無論です」
と、返してくるアハト。
そして――。
「あは♪ 私一人でも楽勝ですけどね!」
「ん……余裕」
「あ、あたしもいざとなったら戦うよ!」
と、アハトに続いて言ってくるのはアイリス、ブラン、そしてユウナだ。
ジークは最後者――ユウナへと念の為に言う。
「ユウナはなるべく戦うな。というか、本当に身の危険が迫った時以外は、戦ったりするな」
「ど、どうして!? みんなが戦っているのに、見ているだけなんてっ」
と、納得いかない様子のユウナ。
ジークはそんな彼女へと言う。
「《勇者の試練》がどういうものかわからない。お前にはなるべく力を温存してもらう必要がある」
勇者が作った試練だ。命の危険があるのとは思えないが、難易度は相当高いに違いない。
故にユウナにはベストコンディションで挑んで欲しいのだ。
(本当なら俺も行きたいところだが、俺には俺の役目があるからな)
それになにより、継承者以外が《勇者の試練》に付き添えるとは思えない。
魔王ともなれば当然だ。
などなど、ジークがそんな事を考えていると。
「そういうことなら代わりに――絶対に《勇者の試練》を突破してみせるよ!」
と、元気よく言ってくるユウナ。
ユウナはこの作戦の要だ――彼女が失敗すれば、全てが終る。
しかし、不思議と確信があるのだ。
「あぁ。お前なら間違いなく《勇者の試練》を突破できるよ、ユウナ」
言って、ジークはユウナの頭を撫でる。
その後、彼は改めてみんなへと言うのだった。
「それじゃあ作戦開始と行こう」
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発売日は11/1なので、皆様に読んでいただけると嬉しいです!
なお書籍版ではいつもの通り、エ○シーンを大量追加しております――具体的にいうと一万文字近くは加筆しているかと……。
これからも気合いいれて書かせていただきますので。
書籍版3巻、コミカライズ版合わせてよろしくお願いいたします!




