第三章 淫魔のご褒美2
「それで魔王様! 落ち着いたら部屋に来てほしいって言ってましたけど、何かお話でも? 私としては、魔王様と夜の営みをジュル……っと、涎が」
と、そんな事を言ってくるアイリス。
ジークはそんな彼女へと言う。
「残念だけど、今からするのはもっと真面目な話だ」
「真面目な話……真面目な話!」
と、アイリスはニッコリ笑顔で、ジークの手を両手で包み込んで来る。
そして、彼女はそのままジークへと続けてくる。
「私としたことが、真面目な話をするのを忘れていましたよ! いや、申し訳ないです!」
「は――?」
「先ほどのウザ男――なんでしたっけ、ミエール! ミエールとの戦闘は驚嘆驚愕雨嵐というやつでしたよ!」
ジークがしたかった話は、決してミエールとの戦闘についてではない。
しかし、アイリスが止まらなそうなので、もう少し静観するのがいいに違いない。
あと、ミエールではなくエミールだ。
「まず上位光魔法 《ホーリーレイン》。当たったもの全てを貫通する無数の光線を降らせるあの魔法――あれの避け方が秀逸でした」
と、目をキラキラさせて言ってくるアイリス。
彼女はそのまま続けてくる。
「本来、あの魔法に対処するには回避しかありません! 例え防御魔法を使って、壁などを作り出しても貫通してしまいますからね! それを魔王様は――」
と、やたら溜めを作るアイリス。
そして、彼女は弾けるように言ってくる。
「雄々しくその場に立っていたんですよ! 魔王様の王子砲の様に♪」
さらにさらに。
そんな彼女はそのまま、ジークへと言葉を続けてくる。
「いや~すごい! 凄まじい戦略的行動ですよ! その辺の凡人では、あの場で『ただ立っているだけという選択』は絶対に出来ないでしょうね! なんせ、魔王様以外があれをすれば死ぬか、よくて大ダメージですから――このアイリス感服いたしました!」
ビシッと、敬礼ポーズを取るアイリス。
そんな彼女は笑顔で尻尾ふりふり、ジークへとまだまだ続けてくる。
「あとあと、最後に魔王様が使った下位闇魔法 《シャドーフレア》もすごかったですよね!」
「あれがすごい? まさか本来、闇魔法が苦手とする光魔法を喰らい潰したからか?」
「そうですよ! それしかないじゃないですか! まだありますよ! 魔王様は――」
「エミールが放ったのは光上位魔法 《エクス・ホーリージャッジメント》。一方、俺は通常ならば、決して上位魔法に勝てない下位魔法で、それを撃ち破った……」
「わかってるじゃないですか! 魔王様がした一連のことは、魔王様の魔力……そして巧みな魔力コントロールセンスがあってこそですよ!」
と、身体をぷるぷる震わせるアイリス。
彼女は数秒間それを続けたのち、再び弾けるように言ってくる。
「しかもあれ、ミーエルが即死しないように魔力を調節しましたよね? 上位魔法を喰らい尽くしたところで、ちょうど威力が弱まるよう魔法を放つなんて――常人じゃできない針の孔を通すような魔力コントロールと計算能力ですよ! 尊い……魔王様尊すぎます!」
尊い、尊い。と、その後も呟き続けるアイリス。
けれど、彼女は喋りとおしたことで、ようやく落ち着いたに違いない。
ジークはその機を狙って、アイリスへと言う。
「褒めてくれてありがとう。でも、俺が言いたい真面目な話っていうのは、アイリスに褒めて欲しいっていうことじゃない」
「え、そうなんですか!? じゃあなんですか? あ、まさか私と子作りしたいとか、そういうあれですか! いいですよ、いいですとも! このアイリス、いつでも魔王様を孕ませる準備はできております!」
「…………」
「反応うっす! え~も~、わかりましたよ~! ちゃんと聞きますから、そんな冷ややかな目を向けて来ないでくださいよ~!」
と、今度こそ話しを聞く態勢になったに違いないアイリス。
ジークはそんな彼女へと言う。
「真面目な話っていうのは、今後の方針についてと《隷属の剣》についてだ」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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