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第二章 見えざる魔の手2

 そうして、時は数分後。

 現在。


「もう大丈夫かアハト?」


「はい。おまえのおかげで、すっかり身体は落ち着きました」


 と、ジークの言葉に返してくるのはアハト。

 ジークはそんな彼女と、裏路地から表通りへと歩いてきていた。


 無論、そこに残しているアイリス達と合流するためだ。

 と、ここでジークはとある事に気がつく。


「ん……なんだ? 通りがさっきよりも慌ただしいな」


「コロシアムですよ!」


 と、一際耳に響いて来る元気なアイリスの声。

 見れば、近くにアイリス率いる仲間達が立っていた。


 きっと、ジークがアハトと話している間に、向こうから見つけてくれたに違いない。

 ジークはそんなアイリスへと言う。


「コロシアム? 何か催し物でもあるのか?」


「いや、そこまでは聞いていません!」


 と、返してくるアイリス。

 彼女は悪魔尻尾をふりふり、ジークへと言ってくる。


「奴隷になってる聖獣(笑)がエッ!な目に遭わされているのを眺めて、良い気分になるのだけで精一杯でしたよ♪」


「お前な……」


 アイリスに期待したジークがバカだった。

 ジークは耳を澄ませ、周囲の会話に意識を傾ける。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


「なるほど、わかった。どうやら、コロシアムで奴隷を使った催しものがあるらしい」


「え、この一瞬でそんな事を聞き取れたの? こんなに周りがうるさいのに!?」


「ん……さすがまおう様。飛び交う人の声の中から、決まった情報だけ抜き取るなんて普通できない」


 と、ジークの声に続けて聞こえてくるのはユウナとブランの声。

 まぁ要するに、彼女達が言った通りの事をした。


 そして、ジークにとってそんな事は、息をするよりも簡単にできる。

 なにはともあれだ。


「この街の勇者に関する情報が何もないし、アハトの件もとりあえず対処できた。情報を集めにコロシアムに向かうぞ」


 催し物と呼ばれるほどのものだ。

 きっと、イノセンティアに居る多くの人が集まっている違いないのだから。


(それに運が良ければ――イノセンティアを滅茶苦茶にし、ミアの名を穢しまくっているクソ勇者本人と会う事も出来るに違いない……そうなったときは)


 容赦など絶対にしない。


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