第三章 淫魔のご褒美
時はエミールとの一件から数時間後
場所はあの洞窟から少し離れた場所にある宿屋。
ジーク達はもう夜も遅いので、宿を取ろうとここにいやってきたのだ。
なお、エミールはあのまま放置した。
けれど、洞窟の中のキャンプに、冒険者の仲間が居るので死ぬことはないに違いない。
(もう一度だけチャンスをやると言って、死んだらそれはそれで俺が恥ずかしいからな。ユウナ以外にもヒーラーは居るし、きっと回復してもらえるだろ)
今が好機とばかりに、冒険者達がエミールの暗殺を企てなければだが。
地味にありそうなのが怖い。
(まぁ、どうなるにしろ、あいつの身から出た錆ってのは違いない)
と、ジークがエミールのことを思い出し、大きな溜め息を吐いた。
その時。
「お風呂に入り終わったアイリス。身も心も綺麗にしてやってきましたよ!」
ノックと共に聞こえてくるのは、そんなアイリスの声だ。
ジークが入室を促すと、彼女はすぐさま室内へと入ってくる。
その後。
彼女は現在ジークが腰かけているベッド――彼のすぐ隣へと腰を下ろしてくる。
「ユウナは?」
「もう! 女の子を呼び出しておいて、第一声がそれですか!?」
と、ぷくーっと頬を膨らませるアイリス。
彼女は「ぷんぷん!」と言いながら、ジークへと言葉を続けてくる。
「魔王様が言った通り、精神的に疲れていたんでしょうね。私がお風呂に入っている間に、寝ちゃってましたよ――今はいい夢を見ているはずです」
「魔法は使ったのか?」
アイリスは精神操作魔法を得意としている。
彼女の手にかかれば、対象を幼児退行させることも、いい夢をみさせることも可能だ。
ジークがそんなことを考えていると、アイリスが先の質問に答えてくる。
「お風呂入る前に、少し心が落ち着く魔法を使ったくらいですかね。魔王様に『同室なんだから、面倒見て欲しい』な~んて、頼まれなかったら絶対しませんけど!」
「なんだかんだ面倒見てくれて、助かったよ」
「もう! 照れますね! このこの~! 魔王様は女心を掴むのが上手いんですから~!」
ぐいぐい。
ずいずいずい。
アイリスはしばらくジークを肘で押しまくって、やがて満足したに違いない。
彼女は足をぱたぱたさせながら、ジークへと言ってくる。
「にしても魔王様、なんだか昔と変わっちゃいましたね」
「そうか? そういう自覚はないんだが」
「えー、めちゃくちゃ変わってますよ! 昔は敵に情けをかけるようなこと、絶対にしませんでしたし! なんだか、人間と混じったせいか、優しくなっちゃいましたよね……」
アイリスが言っているのはエミールの事に違いない。
たしかに、ジークはあの時エミールに情けをかけた。
けれど、あれはエミールだからだ。
仮にも同じギルドで戦った仲間だからこそ、最後のチャンスを与えたに過ぎない。
「どの敵にも情けをかけるわけじゃない。基本的に敵は殲滅、容赦はしない……というか、お前は今の俺のことが嫌いなのか?」
「嫌いなわけないじゃないですか! でも……なんというか」
と、足を余計にパタパタさせるアイリス。
彼女は不貞腐れた様子で、ジークへと言葉を続けてくる。
「魔王様が私の知らない魔王様になっちゃうのがその……えと、あぁもう! こんなこと考えるの私らしくないんですよ!」
「つまりどういうことだ?」
「つまりも何もないですよ! 魔王様の新しい部分は、これからどんどん好きになっていくんで、問題なしです! アイリスの心はいつもいつまでも魔王様のものです!」
ふんすっと、鼻息荒いアイリス。
彼女はさらにずずっとジークへと近づいてくると、言葉を続けてくる。
「それで魔王様! 落ち着いたら部屋に来てほしいって言ってましたけど、何かお話でも? 私としては、魔王様と夜の営みをジュル……っと、涎が」
昨日も言いましたが
書籍化決定しました!!
みな様、よろしければ引き続き応援、よろしくお願いいたします!
さて……これは毎回、言ってることなのですが
面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。
また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。
ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。
冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。
すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。




