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154/207

ブランは興味を持ってみる9

 結論から先に言おう。

 勝負は決した。


「アイリスお姉たん……ブラン、お姉たんのこと、しゅき!」


 と、ブランが言い放った直後。

 アイリスは手のひらくるーして、ブランに二百点を与えてきた。

 故に。


 アハトとの勝負は、ブランの勝利に終わったのだ。


 だがしかし、問題もある。

 さてさて、時はあれから数時間後。

 場所はアルスの街、宿屋に併設された酒場。


 現在、ブランはカウンター席に座り、飲み物をちびちび飲んでいる。

 そして、その隣に座っている人物こそが件の問題。


「もう一度『お姉たん』って呼んでくださいよ!」


 と、言ってくるのはアイリスだ。

 ブランはそんな彼女に視線を向けずに言う。


「や!」


「え~~~~! 意地悪言わないでくださいよぉ!」


「…………」


「私とアイリスの仲じゃないですか! ほらほら、一回言ったんですから、二回目も三回目も変わりませんって!」


「…………」


「『アイリスお姉たん』って、媚びた感じか照れた感じで言ってください! こんどは私の記憶のメモリーにしっかり保存するんで!」


「……はぁ」


 要するに、これこそが問題なのだ。

 ブランはアハトに勝利してから、アイリスに数時間これを言われ続けている。

 どこへ行くにもついて来て、ひたすら同じことを連呼されるのだ。


 嫌なら言ってやればいい。

 そう思うかもしれないが……。


「ブランはもう騙されない……アイリスはそう言って、ブランに何回もその言葉を言わせて来る。ん……ブランはもうアイリスの要望に何回も答えてる」


「あは♪ だから、これが最後ですって!」


 と、ブランの言葉に返してくるアイリス。

 これは詐欺だ――最後最後詐欺だ。

 前回も前々回も同じことを言って、ブランを騙してきた。


(ん……アイリスお姉たんって、何回呼ばされたかわからない)


 思い返してもため息がでる。

 アハトとの勝負の際に、あんな呼び方をしなければよかった。


 試合に勝って、勝負に負けた。


 ブランの脳内では、何度もその言葉が響いている。

 こんな事ならば、アハトに勝ちを譲ればよかった。


 などなど。

 ブランがそんな事を考えている間にも。


「最後! これが本当に最後です! 本当に最後のラストですから!」


 と、手を合わせてくるアイリス。

 ブランは盛大にため息をついたのち。


「……はぁ」


 と、ジトっとした視線をアイリスへと向ける。

 すると、アイリスは期待した様子でブランへと言ってくる。


「わくわく! わくわく♪」


「ん……本当に、これで最後?」


「もちろんですとも!」


「じゃあ……言う」


 おほん。と一声。

 ブランは照れた表情を作り、瞳をうるうるアイリスへと言う。


「アイリスお姉たん……ブラン、お姉たんのこと、好き」


「ぶほっ」


 と、変な声を出してくるアイリス。

 彼女は興奮した様子で、カウンターをバンバン叩いている。

 きっと、頭がおかしくなったに違いない。


 けれどなんにせよ、これで終わり。

 ブランはアイリスから解放さ――。


「もう一回! もう一回お願いします!」


 と、聞こえてくるアイリスの声。

 瞬間、ブランはわかりきっていた事を悟るのだった。


「ん……もうアイリスの事は信じない!」


本日…厳密には昨日発売!

秋田書店様の『どこでもヤングチャンピオン』にて、本作品のコミカライズ連載が開始されております!!


コミカライズを担当してくれているのは、ひよひよ先生になります!

戦闘シーンだけでなく、ラノベ限定加筆エ○シーンもとても素晴らしく漫画に落とし込んでくれています!!


読者の皆様

よろしければ、ぜひ読んでみてください!!

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