ブランは興味を持ってみる8
「それでは、最初の課題は~~~~こちらっ――好き好きゲ~~~~~~~~ム!」
どんどんぱふぱふ~!
と、効果音を口で言いながら、そんな事を言ってくるアイリス。
ブランはそんな彼女へと言う。
「ん……なにそれ?」
「え、好き好きゲームを知らないんですか!?」
「ん、知らない……聞いたこともない」
「おほんっ! ではでは、この私が懇切丁寧に教えてあげますとも!」
と、自慢げな様子で胸をはるアイリス。
彼女はそのまま説明をしてくる――それをまとめると、こんな感じだ。
ブランとアハト。
二人のプレイヤーが、互い違いにアイリスへと『好き』と言う。
そして、アイリスが『より萌えた』方が勝ち。
要するに。
とんでもない闇のゲームだ。
この手のゲームに疎い、ブランですらそれは容易にわかる。
そして、そう考えるのはブランだけではないに違いない。
なんせ――。
「ば、バカな! どうして、わたしがおまえに『好き』と言わなければならないのですか!?」
と、聞こえてくるのはアハトの声。
彼女は必死な様子で、アイリスへと言う。
「だいいち、『好き』という言葉は大切なものです! ゲームとして使っていいようなものでは――」
「え、ショックなんですけど……アハト、私の事が好きじゃないんですか?」
「そ、そうは言っていません!」
「じゃあ、私の事好きですよね?」
「それは、ですね……ま、まぁ好き……です、よ」
「あは♪ かわいい! 照れ顔でもじもじ、視線を逸らしながらのアハトちゃん! すっごい可愛いじゃないですか!」
「ちょっ――抱き着かないでください!」
「百点! アハトには百点をあげましょう!」
瞬間、ブランは自らの致命的なミスを悟った。
それは――。
(っ! 好き好きゲームはもう始まっていた?)
しかも、アハトは狙ってか狙わずか。
アイリスから百点を引き出してしまっている。
これはまずい。
もし、百点中の百点だとしたら。
すでにブランがアハトに勝てる見込みはゼロだ。
つまり。
戦う前から負けた。
(そんなのダメ!)
それだけはダメだ。
なぜならば。
(ブランはまおう様のブラン! ブランはまおう様の配下であることに、誇りを持っている。仮に負けるとしても……ブランは誇り高く、最後まで戦う!)
けれど、いったいどうすればいいのか。
アイリスはどうすれば、ブランに萌え?と思ってくれるのか。
そもそも萌えとはなんだ――ブランには、その概念がよくわからない。
(分析……こういう時こそ分析すればいい)
アイリスの先の言葉を思い出せ。
彼女は先のアハトに対し『かわいい』、『照れ顔』、『もじもじ』という言葉をあげていた。
これすなわち、この三点は『萌え』なるものと、密接にかかわっているに違いない。
となると。
ブランがするべき事は簡単。
『照れ顔』しながら『もじもじ』して、アイリスに『かわいい』と思わせればいいのだ。
(重要なのはきっと、セリフのピックアップ……)
思いだせ。
五百年前から今に至るまで、アイリスの趣味嗜好。
彼女が収集している薄い本に書かれていた内容――さらには普段の言動を。
魔王の右腕にして、ルナフェルト族の長。
魔法使いブラン。
(ん……参るっ!)
ブランは決意を胸に宿し、アイリスの下へと歩いて行く。
そして、ブランは彼女の悪魔羽をくいくい、言うのだった。
「アイリスお姉たん……ブラン、お姉たんのこと、しゅき!」
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