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153/207

ブランは興味を持ってみる8

「それでは、最初の課題は~~~~こちらっ――好き好きゲ~~~~~~~~ム!」


 どんどんぱふぱふ~!

 と、効果音を口で言いながら、そんな事を言ってくるアイリス。

 ブランはそんな彼女へと言う。


「ん……なにそれ?」


「え、好き好きゲームを知らないんですか!?」


「ん、知らない……聞いたこともない」


「おほんっ! ではでは、この私が懇切丁寧に教えてあげますとも!」


 と、自慢げな様子で胸をはるアイリス。

 彼女はそのまま説明をしてくる――それをまとめると、こんな感じだ。



 ブランとアハト。

 二人のプレイヤーが、互い違いにアイリスへと『好き』と言う。

 そして、アイリスが『より萌えた』方が勝ち。



 要するに。

 とんでもない闇のゲームだ。

 この手のゲームに疎い、ブランですらそれは容易にわかる。


 そして、そう考えるのはブランだけではないに違いない。

 なんせ――。


「ば、バカな! どうして、わたしがおまえに『好き』と言わなければならないのですか!?」


 と、聞こえてくるのはアハトの声。

 彼女は必死な様子で、アイリスへと言う。


「だいいち、『好き』という言葉は大切なものです! ゲームとして使っていいようなものでは――」


「え、ショックなんですけど……アハト、私の事が好きじゃないんですか?」


「そ、そうは言っていません!」


「じゃあ、私の事好きですよね?」


「それは、ですね……ま、まぁ好き……です、よ」


「あは♪ かわいい! 照れ顔でもじもじ、視線を逸らしながらのアハトちゃん! すっごい可愛いじゃないですか!」


「ちょっ――抱き着かないでください!」


「百点! アハトには百点をあげましょう!」


 瞬間、ブランは自らの致命的なミスを悟った。

 それは――。


(っ! 好き好きゲームはもう始まっていた?)


 しかも、アハトは狙ってか狙わずか。

 アイリスから百点を引き出してしまっている。


 これはまずい。

 もし、百点中の百点だとしたら。

 すでにブランがアハトに勝てる見込みはゼロだ。


 つまり。

 戦う前から負けた。


(そんなのダメ!)


 それだけはダメだ。

 なぜならば。


(ブランはまおう様のブラン! ブランはまおう様の配下であることに、誇りを持っている。仮に負けるとしても……ブランは誇り高く、最後まで戦う!)


 けれど、いったいどうすればいいのか。

 アイリスはどうすれば、ブランに萌え?と思ってくれるのか。

 そもそも萌えとはなんだ――ブランには、その概念がよくわからない。


(分析……こういう時こそ分析すればいい)


 アイリスの先の言葉を思い出せ。

 彼女は先のアハトに対し『かわいい』、『照れ顔』、『もじもじ』という言葉をあげていた。

 これすなわち、この三点は『萌え』なるものと、密接にかかわっているに違いない。


 となると。

 ブランがするべき事は簡単。

『照れ顔』しながら『もじもじ』して、アイリスに『かわいい』と思わせればいいのだ。


(重要なのはきっと、セリフのピックアップ……)


 思いだせ。

 五百年前から今に至るまで、アイリスの趣味嗜好。

 彼女が収集している薄い本に書かれていた内容――さらには普段の言動を。


 魔王の右腕にして、ルナフェルト族の長。

 魔法使いブラン。


(ん……参るっ!)


 ブランは決意を胸に宿し、アイリスの下へと歩いて行く。

 そして、ブランは彼女の悪魔羽をくいくい、言うのだった。


「アイリスお姉たん……ブラン、お姉たんのこと、しゅき!」


本日発売!

秋田書店様の『どこでもヤングチャンピオン』にて、本作品のコミカライズ連載が開始されております!!


コミカライズを担当してくれているのは、ひよひよ先生になります!

戦闘シーンだけでなく、ラノベ限定加筆エ○シーンもとても素晴らしく漫画に落とし込んでくれています!!


読者の皆様

よろしければ、ぜひ読んでみてください!!

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