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第二章 底辺冒険者は最強の魔王になる6

書籍化決定しました!

詳しくは後ほど

 そうして、ジーク達がやってきたのは洞窟の外――入口付近。

 当然、そこで待っているのはエミールご一行だ。


「遅かったな貴様! 俺様を待たせるとはいい度胸だ! 俺様を誰だと思っている!? 俺様は至高の魔法使いにして、王をも超える権力を持つ存在! ギルドだけでなく、自らの街をも持つ生ける伝説!! そう、この俺様こそが――」


「勇者ミアの末裔様だろ?」


 と、エミールの言葉に対し、ジークは苦笑しながら言う。

 すると、エミールはすっと笑顔を消し、ジークへと言ってくる。


「貴様、この俺様をバカにしたな!? 許せん! この俺様をバカにした奴は死ね! 全員処刑だ!」


「短気だな、エミール。前から言いたかったんだが、お前は勇者の器じゃない」


「黙れ! このクソガキが! 俺様はエミール・ザ・ブレイブ・七世様だぞ!」


「あぁそう、それはすごいすごい……で、アイリスはユウナと一緒に離れてろ。すぐ終わると思うが、俺はエミール達の相手をしなきゃいけないからな」


「だから! 俺様を! 無視! するなぁああああああああああああああっ!」


 と、雑魚は雑魚なりに精一杯と言った様子の怒気を放つエミール。

 彼は紅玉の杖をジークへと向け――。


「勇者の魔法を見せてやる! 本来複数人でなければ撃てない上位魔法、その中でも最高レベルの難易度と威力! 初代勇者ミアがかつて使った魔法――究極にして美麗、魔道の極み、受けてみるがいい! 上位光魔法 《エクス・ホーリーレイン》!」


 直後、ジークの頭上に降り注ぐのは拳大の光の雨。

 それらは凄まじい勢いで地面を抉り、砂埃を巻き上げる。


「あ、あんな威力の魔法を人に……っ、アルくん! アルくんっ!」


 と、聞こえてくるユウナの悲鳴。

 きっと、ジークがエミールに殺されたと思ったに違いない。


「あーもう、うるさいですね! 魔王様なら大丈夫ですよ」


 と、続いて聞こえてくるのはアイリスの声だ。

 彼女はユウナへと言葉を続ける。


「いいですか? 魔王様は常に特殊なバリアを身に纏っているんです」


「ば、ばりあ~?」


「はい、バリアです。それは魔王様の意思と関係なく常に張られていて、悪意ある攻撃は全部防いじゃうんですよ!」


「え、えと……それってつまり」


「簡単だよ、ユウナ」


と、ジークはアイリスの後を引き継ぎ続けて言う。


「俺はどんな攻撃を受けても、絶対にダメージを負うことはない。例外として《ヒヒイロカネ》という金属で作られた、使用者を覚醒させる武器というのがあるが……まぁ、あれは世界に数本しかない――滅多に手に入らないから、心配はない」


「そう、つまりそういうことですよ! 我らが魔王様は完全無欠なのです!」


 と、尻尾をふりふりアイリス。

 ジークはそんな彼女を見たのち。


「さて、エミール」


 と、ジークは肩に着いた埃を払い落とし。

その後に、エミールへと言う。


「次はどんな攻撃をしてくる? 勇者の末裔なんだろ? 俺をもっと楽しませてくれよ」


「ひっ――き、貴様等! 貴様等が行け! 俺様が能力アップの補助魔法をかけてやる!」


 と、エミールはさっそく人を使いだした。

さすが性根が腐っている人間は違う。

 けれど、命令された二人は未だジークの実力を、よくわかっていないに違いない。


「二人がかりなら……それもエミール様に補助魔法をかけてもらえるなら、楽勝っすよ!」


「じゃあ、今回の見せ場、俺達がエミール様の代わりに貰っちゃいますよ!」


 と、ノリノリといった様子の二人。

彼等は剣を手に取り、ジークの方へ駆けてくる。


 正直なところ、ジークがこのまま棒立ちしていても、彼等がジークにダメージを与えることは不可能だ。

 なんせ、ジークには先ほどアイリスが言っていたバリアがある。

 だがしかし。


(ユウナに手を出そうとしていたこいつらには、それなりに痛い目に遭ってもらわないとな……でもどうする?)


 ジークが剣技を繰り出せば、確実にこの冒険者達は絶命する。

 それこそ何が起こったかもわからないうちに。


(それじゃあダメだ……はぁ、手加減するのって大変だな。とりあえず、相手が持っている剣を弾き飛ばしてから考えるか)


 と、ジークは自らも剣を抜く。

 そして、なるべく力を込めないよう気をつけ、冒険者二人の剣へ順に打ち合わせる。

 その瞬間、想定外の出来事が起きた。


 なんと。

冒険者二人が消えたのだ。


「!?」


 いったい何が起きたのか。

 まさか、ジークの知らない魔法でも使われたのか。


 そんな物があるはずない――ありえない。

などなどと、ジークはいろいろ考え出すが。


「打ったぁああああ! 魔王様、雑魚冒険者を見事にかっとばす! 冒険者は……伸びる、伸びる……行ったぁああああ! 特大ハイパー魔王様ホームランだぁああああああ! すごい、すごいぞ魔王様! さすがは魔王様! 常人を超えた腕力に痺れる憧れる!」


 と、空を見ながら喚いているアイリス。

 ジークもつられてそちらを向くと、全ての謎が解決した。

 アイリスが言ったことを、わかりやすくまとめるとこうだ。


 ジークの剣と打ち合った衝撃が強すぎたに違いない。

 彼等は剣どころか、体ごと遥か遠くへ飛ばされ、お星さまになってしまったのだ。


「おいおい……今のでもダメなのか、これは戦うときに苦労しそうだな」


 というか、現代の人間が弱すぎる。

これならば五百年前の人間の赤子の方が強いに違いない。


「さて、残ったのはエミール……お前だけなわけだが?」


「うっ」


と、引き攣った表情で後ずさるエミール。

ジークはそんな彼へ、続けて言う。


「この場で土下座して、ユウナに謝れ。そして、もう二度とユウナに絡まないと誓え。そうすれば、命まで取りは――」


「……めろ」


「なに?」


「その上から目線をやめろ! 俺様を誰だと思っている! 俺様はエミール! 勇者ミアの末裔、至高の存在! 魔法使い達にとっての神! そう、俺がエミール・ザ・ブレイブ七世様だぞ!」


 言って、再びジークへ杖を翳して来るエミール。

 けれど、今回の彼は先ほどとは違った。

というのも――。


「『万人を睥睨し、何者よりも高き頂に君臨する王者よ! 我に至高の玉座より光の力を貸し与えたまえ!』ふふ、くはは……さっきは詠唱破棄をしたが、今回は完全詠唱――魔力を込めに込めた完全無欠の力だ! 直撃すれば、要塞すらも一撃で消し去る威力!」


 直後、エミールの杖が光る。

 そこには、エミールの全ての魔力が集められているのを感じる。


 おおよそ、先ほどジークが飛ばした冒険者の内包魔力の一万倍近く。

 この時代の人間の中で、エミールが最強クラスと言われるのも納得の圧だ。

 並みの魔物ならば、相対しただけで消滅してしまうに違いない。


「くはははは! 俺様はかつてこの魔法で、魔物の大群を一人で屠って最強となったのだ! さぁ、受けてみろ! 我が至高の上位光魔法 《エクス・ホーリージャッジメント》!」


 そんなエミールの言葉と同時、放たれたのは極大の光線だ。

 口上から考えても、これはエミールにとって必殺の技。


 きっとこれまで、あらゆる敵をこの魔法で倒してきたに違いない。

 さて……なにはともあれ、これでエミールに反省する気がないのは理解した。


(まったく、どうしようもない奴だな……エミール)

 

 などなど。

 ジークはそんな事を考えた後、エミールへと手を翳し。


「下位闇魔法 《シャドーフレア》」


 その瞬間、エミールの放った光は、闇の炎に飲みこまれる。

 それは凄まじい速度で光を伝い、ついにはエミールの元まで到達する。

 そして、彼に触れたと同時――巨大で黒く、禍々しい火柱をあげる。


「あぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」


 と、聞こえてくるエミールの声。

 これでも大分手加減したのだが、所詮はエミール。


「あらゆる面で期待外れだ。この時代において、伝説の勇者と呼ばれているミアなら、その程度の魔法――指先一つで弾き返してみせた」


「あ……っ、うぁ」


 と、徐々に収まってきた炎の中、聞こえてくるのはエミールの声だ。

 腐っても勇者と言うべきか、真っ黒焦げだがまだ息はあるようだ。

 故に、ジークはそんな彼に近づいていき、耳元で囁く。


「最後にもう一度だけチャンスをやる……ユウナに、俺達に二度とかかわるな。そして、これからはまっとうに生きて行け。五百年前の勇者――ミアの名を汚さないように」


「き、さま……だれ、だ。この力……アルでは、ない……な」


 ジークは立ち上がる。

そして、エミールへ背を向けながら言うのだった。


「俺の名はジーク。五百の眠りから目覚めた魔王……覚えておけよ、現代の勇者」



HJ文庫様から、本作品の書籍化が決定しました!

読んでくださった皆様のおかげです!!


この作品

だいぶ丁寧に書き上げた作品なので、だいぶ嬉しいです!!

ありがとうございます!!


書籍化した際には、ここでは書けなかった『エ◯シーン』大量追加をしたいと思います!!

どうか、楽しみにしていてくれると幸いです!





さて……これは毎回、言ってることなのですが


面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。


また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。


ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。

冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。

すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。

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