ブランは興味を持ってみる3
時はあれから十数分後。
場所はアルスの街――鍛冶屋。
「お待たせしました、ブラン」
と、聞こえてくるのはアハトの声だ。
彼女はブランへとさらに言葉を続けてくる。
「さすが錬金術の街と言うべきか、剣はすぐに治るそうです……ところで、先ほどから何を見ているのですか?」
「ん……杖」
「そういえば、ブランは魔法使いでしたね」
と、何か考え込む様子のアハト。
ブランはそんな彼女へと言う。
「ブラン、今日はアハトと沢山お話したい……だから、何か気になることがあるなら……ん、ブランがなんでも答えてあげる(むふぅ)」
「それではお言葉に甘えて。といっても、たいした事ではないのですが――魔法使いにとって、杖とはどういうものなのですか?」
「……?」
「例えば剣士にとっての『剣』は、戦闘に不可欠なものです。切れ味、強度、様々な要因で使い手をサポートしてくれます」
たしかに、剣士に剣は必要不可欠に違いない。
なんせ、剣がなくては剣技を披露できない。
アハトほどの使い手になれば、剣がなくても戦えはするだろう。
しかし、その戦闘力は大幅に下がるに違いない。
などなど。
ブランがそんな事を考えていると。
「ですが杖は? ジークなどがいい例です――あいつは杖がなくても、強力な魔法を使いこなします」
と、そんな事を言ってくるアハト。
そこでブラン、なんとなくだがアハトの言いたい事を理解した。
要するに。
「魔法使いにとって、杖が戦闘面でどういう増強要素になるか……ん、アハトはそれを聞いてる?」
「はい、そういうことです。わかりにくくて、申し訳ありません」
と、苦笑いをするアハト。
ブランはひょいひょい首を振り、アハトの謝罪を否定。
ブランはアハトと話したいのだ――何も苦ではない。
故に。
ブランはアハトへと言う。
「前提として、まおう様は別格。まおう様の事は頭から消し去ってほしい……そうしないと、ブランの説明がおかしくなる」
「あ、あはは。ジークはまぁ……やはりそうでしたか。とりあえず了解しました」
「ん……じゃあ、ブランの魔法講座を開始する」
と、ブランは杖と魔法使いの関係について説明していく。
それをまとめると、こんな感じだ。
魔法使いは杖がなくても、魔法を使う事は出来る。
しかし、アイリスの様な魔物を除き、人間で杖を使わない人間はほぼいない。
理由は簡単。
人間は魔力を出力できる値が小さいのだ。
要するに。
蛇口が小さいため、一度に出せる水の量が少ない。
「ん……だから、より強力な魔力を使うためには、追加の蛇口が必要」
「なるほど、それが杖ということですね?」
と、言ってくるアハト。
彼女はさらに、ブランへと言葉を続けてくる。
「ですが、おまえは宿魔人――魔物ではないのですか? そんなおまえが、どうして杖を?」
「昔のブランは魔物。でも、今のブランはアハトが言った通り宿魔人……この身体は人間、変身した時は別だけど」
「なるほど、宿魔人の身体はあくまで人間。たしかにジークの事を考えると、矛盾が生じてきますね」
「ん……まおう様は別格。『魔法で蛇口を強制的に増やす』という作業を、何度も瞬時に行って魔法を行使してる。普通そんな事したら……脳みそが焼ける」
「さすがは伝説の魔王ですね」
「ん……まおう様はすごい!」
むふぅ。
と、この瞬間。
ブランはとんでもない事に気がつく。
(っ……ブランばっかり喋ってる! アハトの事を知りたいのにっ)
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