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アハトのミニミニ冒険9

 時はあれから十数分後。

 場所はアルスの街――噴水前のベンチ。


「それじゃあ、キメラはもう大丈夫なの?」


 と、言ってくるのはアハトの隣に座っているユウナだ。

 彼女は心配そうな様子で、アハトへとさらに言葉を続けてくる。


「怪我とかもしてない? もししてるなら、あたしに任せて! すぐに回復するから!」


「大丈夫ですし、怪我もしていませんよ――心配はいりません」


「よかった……でも、キメラを倒しに行くなら、あたし達にも言ってくれればよかったのに」


「申し訳ありません、ですが急いでいたので。それに、わざわざおまえ達を呼ぶ程の事でもないでしょう?」


「でも心配だよ!」


 と、なにやらユウナはむぅっとした様子だ。

 そもそも、ユウナがこんな事になっているのには理由がある。


(あの洞窟でキメラと戦った時、少しやりすぎましたね)


 アハトがキメラに向け放った、渾身の斬撃二発。

 洞窟の天井を消し飛ばした初撃。

 洞窟そのものを消し去った第二撃。


 どうやらあの二発。

 街からも見えていたらしいのだ。


 結果。

 それを見たユウナが、アハトが居ない事に気がつき、慌てだしたというわけだ。


「ジークくんに知らせたら『見てくる』って言って、どこかに行っちゃったし……本当に心配したよ!」


「あぁ、そういう事だったのですね」


 アハトは全てを理解した。

 キメラを倒した後。

 アハトはキメラの卵を、しっかりと破壊して回っていた。

 その際、何故かジークが合流して手伝ってくれたのだ。


 当初、アハトは――アハトには魔力がないため、キメラの魔力を検知してジークが来た。

 そう考えていたが。


(ユウナがジークに知らせてくれたおかげで、キメラの卵の処理を早く終えることができました)


 到着したジークに、事情を説明すると。

 彼は瞬時に、キメラの卵を焼き払ってくれたのだから。


 なおその後。

 アハトとジークは一緒に、街まで帰ってきた。

 そしてジークは――。


「『アハトは心配ない。あいつなら噴水広場に居る』って、ジークくんまた寝ちゃうし……何度も言うけど、本当に心配したんだよ!?」


 と、ぷんすかユウナ。

 そこでアハトはさらに気がつく。


 最近、ジークは夜遅くまで『勇者の試練』について調べている。

 そのため日中よわよわモードになっているに違いない。

 だから、やや気だるげですぐにダウンしてしまったのだ。


(そんな状態で、わたしを心配してきてくれるなんて……)


 おかしい。

 なんだか、胸がどきどきする。


「…………」


 なんだかわからないが、悪くない気分だ。

 それもこれも、ユウナが心配してくれたおかげだ。


「ユウナ」


 言って、アハトはユウナの頭をなでなで。

 さらに彼女へと言葉を続けるのだった。


「おまえのおかげです、ありがとうございます」


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