アハトのミニミニ冒険3
時はあれから十数分後。
現在、アハトはアルスの街を出て、件の森へとやってきていた。
「飛び散った血……なるほど、ここが襲われたという場所ですか」
言って、アハトは周囲を見回す。
すると見えてくるのは、木についた爪痕。
そして、地面についた足跡だ。
「この二つを見た限り、かなり大きなキメラのようですね」
こう言うと、少し語弊があるかもしれないが。
襲われた男は、幸運だったとしか言いようがない。
これほどのキメラに襲われたのなら、死んでいてもおかしくなかった。
そして、その幸運が何度もあるとは限らない。
要するに、次に襲われる者は命を取られる可能性があるのだ。
「やはり早々に対処する必要がありますね」
などなど。
アハトがそんな事を考えていると。
「…………」
周囲の気配が変わった。
これまで聞こえていた、動物たちの鳴き声が聞こえなくなったのだ。
それどころか、森のざわめきすら聞こえなくなる。
不気味で異常な静寂。
あるものと言えば――。
(見られていますね……数は三)
キメラに違いない。
しかし、まさか複数体が森に潜んでいるとは予想外だ。
(とはいえ、十分対処は可能)
今ここで、即座に倒す。
全ては平和のために。
「何を隠れているのですが、かかって来なさい」
言って、アハトはキメラの気配を感じる場所へと視線を向ける。
その直後。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
と、飛び出してきたのは巨大な双頭の狼が二体。
奴等はアハトに目がけ、鋭利な爪を振り下ろしてくる。
「……遅い」
アハトは狼達の攻撃を紙一重で回避。
そのまま、すれ違う様に狼達の背後へと回る。
瞬間。
狼達は微塵に変わり果てた。
アハトがそれぞれの狼を、二十回ずつ斬りつけたのだ。
生命力の強いキメラと言えど、これならば完全に倒れたに違いない。
けれど、アハトにはまだやることが残っている。
「残り一体――最も強い殺気を放っていた奴は逃げましたか」
おそらく、その個体こそがリーダーに違いない。
これは面倒な事になった。
もちろん、逃がした事がではない。
なんせ、アハトは最後の一体をあえて見逃したのだから。
「狼二体をわたしに差し向け、様子を見たとこからして、おそらくこのキメラ達はかなり統率が取れている」
群れが居る可能性が高い。
ミハエルの研究熱心具合から考えても、投棄されたキメラが三体とは考えづらい。
となれば。
「この傍にキメラ達の巣があるのでしょうね……まったく、死んでもミハエルはミハエルですね」
碌なことをしでかさない。
死後の世界――というのがあるかは不明だが、存分に反省して欲しいところだ。
などなど。
アハトはそんな事を考えた後、逃げたキメラを追って歩き出すのだった。
「さぁ、巣まで案内してもらいますよ」
秋田書店様のどこでもヤングチャンピオンより、コミカライズ決定しておりますので、どうぞお楽しみに!!
ラフなど見せてもらっているのですが、ものすごくエッ!で楽しめると思います!!




