ジークは巻き込まれてみる9
そうして十数分後。
アイリスが『ふがっ』と変な寝息をたて、拘束されながら爆睡し始めたころ。
『なるほど。つまり、アイリスは気に入った女騎士を、そういう目に合わせたい性癖を持っている。そして、わたしがあまりにもタイプだったので、我慢できなくなったと……そういうことですね?』
と、すっかりいつもの調子に戻ったアハト。
彼女はため息一つついた後、ジークへと言葉を続けてくる。
『アイリスの暴走に、わたしから罰を与えて欲しいという、おまえの願いは了解しました』
『そうか、それは助かる』
『礼はいりません。正直、わたしもアイリスを罰したい気分でいっぱいなので』
言って、アハトは爆睡しているアイリスをジトっと睨んでいる。
これはどう見ても、アイリスからイタズラされそうな事に対する怒りではない。
これは――。
『アイリスのせいで、ジークにわたしの恥ずかしい秘密を……っ』
と、爪を噛んでいるアハトさん。
彼女はゆっくりと、アイリスの方へと近づいていく。
そして、彼女は両手を眠っているアイリスの腋へと伸ばし――。
こしょこしょ。
こしょこしょこしょ。
両手でくすぐった。
その瞬間。
「!?」
びくんっと跳ね起きるアイリス。
だがしかし、アハトのくすぐりは止まらない。
その結果。
「ちょっ!? な、なにして――や、やめてくだ、あ、あははははははははっ!」
と、動かない身体をくねくね、悶絶アイリス。
彼女はそのままの様子で、アハトへと言う。
「わ、わかりましたっ! あ、謝り、ますっ! あはっ、ちょっ――だからっ!」
「謝っても手遅れなんですよ! おまえのせいで、わたしの秘密が……夜の楽しみがジークにバレてしまったではないですか!」
「し、知りませんよそんなのっ!?」
「いいえ、全部おまえのせいです! おかけでわたしはこんな……くっ、殺して欲しい」
「あは♪ くっ殺じゃないで――ちょ、あははははははははっ! わ、わかりまひた、わか、わまりまひゅ――あははははははははははははははっ!」
と、再び身をよじり出すアイリス。
いつもの軽口が出ないところを見ると、くすぐりはかなり効果的に違いない。
アハト、ナイス判断だ。
(これで、アイリスもしばらく大人しくなるだろ……多分)
さて。
あとはアハトに任せても問題ないに違いない。
ジークはそんな事を考えた後、ユウナへと言うのだった。
「せっかくだから、少し散歩でもするか?」
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