ジークは巻き込まれてみる5
時はあれから数分後。
現在、ジークはアハトを伴い、街外れの森へとやってきていた。
その理由はもちろん。
「ここに仮面の悪魔が居るのですね?」
と、言ってくるのはアハトだ。
ジークはそんな彼女へと言う。
「あぁ、例の紙に残されていた魔力と、同じ質の魔力がこの近くから感じられる」
「それならば作戦ですが、街を離れる前に軽く言っていたものでいいですか?」
「ここからはお前だけで進んで、俺が隙を伺ってユウナを救出――ってやつか?」
「はい。ユウナを救出出来たら、何か合図を送ってください。それまで、わたしは仮面の悪魔との戦闘をなるべく引き延ばします」
「…………」
完璧な作戦だ。
ただし、相手が仮面の悪魔ことアイリスでなければ。
アハトは魔力がなく、魔力耐性もないに等しい。
そんな彼女とアイリスの相性は最悪だ。
(まぁ、精神操作魔法で一撃でやられるだろうな)
故に、事は迅速に運ばなければならない。
まずユウナと速攻で合流――助ける体で、今回の事情を聞く。
その後。
アイリスがしようとしていることが、ジークの想像通りならば。
(お仕置きをかねて、アイリスにはアハトに負けてもらうか。俺が陰からフォローしてやれば、アハトでも十分にアイリスに勝てるからな)
などなど。
ジークがそんな事を考えていると。
「それではジーク、いったんここで別れましょう」
などと。
アハトのそんな声が聞こえてくるのだった。
…………。
………………。
……………………。
そうして、時はさらに少し後。
現在、ジークは――。
「あ、ジークくん!」
と、にこにこ笑顔のユウナと再会していた。
なお、彼女はゆるゆるの縄で、木に軽く縛られていた。
「どうしてジークくんがここに居るの?」
と、首をかしげてくるユウナ。
彼女は「よいしょ」と一声、ゆるゆる縄を自らパージ。
その後、ユウナは立ち上がるとジークへと言葉を続けてくる。
「アイリスさんには『魔王様は忙しいから、今回のサプライズには参加できないんですよ!』って言われたんだけど」
「真相を話す前に聞きたいんだが、そのサプライズってなんだ?」
「なんかね。アイリスさん、アハトさんと仲良くなりたいんだって! それには、あたしが捕まってるふりをしないといけないみたいで」
「なるほど」
完全に想定通りだ。
やはりユウナは――。
「アイリスに騙されてるぞ」
「え!?」
と、驚いた様子のユウナ。
ジークはそんな彼女へと言う。
「アイリスの目的は、アハト仲良くなることなんかじゃない。というか、そもそもアイリスとアハトは、もうすでに仲がいい――アイリスの嫌いなやつに対する態度はわかるだろ?」
「た、たしかに……名前を間違えたりもしないし、スキンシップも普通に多い……かな。でも、だったらどうしてアイリスさんは――」
「アイリスは昔から、お気に入りの女騎士が酷い目に遭ってるのが好きなんだ。アハトは剣士だが、あいつにとっては些細な問題だろうな」
「そ、それってつまり?」
「まぁ百聞は一見に如かずだ。そろそろ二人の戦いが始まる頃だしな」
言って。
ジークはユウナを伴って、アイリスのアハトの下へと向かうのだった。




