ジークは巻き込まれてみる4
「ブランが脅されている理由を、ジークが知っている? それはいったい――どういうことですか、ジーク?」
と、ジークをジっと見てくるアハト。
彼女はそのままの様子で、さらにジークへと言葉を続けてくる。
「まさかおまえ、ブランが困っているのを見過ごしていたのですか?」
「い、いや――」
「何を焦っているのですか、ジーク」
「別に焦ってるわけじゃない!」
ただ、ブランからキラーパスをもらって……うん、正直焦っている。
アハトに下手な事を言うと、相当面倒な事になる。
例えばこのまま無言でいたとして――。
『まさかおまえ、あの仮面の悪魔とグルではないしょうね? だとしたら、どうしてユウナをさらったのですか!』
とか、聞かれ始めたら本当に面倒だ。
ある意味では、真実なのでなおさらに。
いっそ、早々に打ち明けることもなくはない。
けれど、そうなると以前考えた通り――ここまでやる気を出しているアハトが少しかわいそうだ。
「では、どういう事なのですか? おまえ……ひょっとして、あの仮面の悪魔について何か知っているのですか?」
と、だんだん確信的な事を聞き始めるアハト。
やばい。
(考えろ。俺は魔王だ……あのミアの好敵手)
この程度の問題は完璧に対応する。
そうでなければ嘘になる。
「ジーク、何を黙っているのですか?」
ジーっと、ジークになおも向けられてくるアハトの視線。
瞬間、ジークは起死回生の一手を思いつく。
それは――。
「お、俺は仮面の悪魔の居場所を知っている」
「それは、いったい……」
と、怪しんだ様子の顔をしてくるアハト。
ジークはそんな彼女へと言う。
「ブランも言っていただろ――『俺が知ってる』ってな。あれは俺が仮面の悪魔の居場所を知っているって意味だ」
「どうして、おまえが仮面の悪魔の場所を知っているのですか? やはりおまえは――」
「簡単だ。自分で言うのもアレだが、俺は魔力の扱いに優れている。つまり、仮面の悪魔の魔力を探知するくらいわけがない」
「っ! そ、そういう事だったのですね! おまえは『仮面の悪魔が残した紙に、残留していた魔力』を読み取って、それと似た魔力がどこにあるかを調べた……そういうことですね!?」
「そ、そういうことだ! な、そうだよなブラン!」
「っ! っ!」
と、こくこく頷いているブラン。
改めて思うが、こんなに焦っているブランは本当に珍しい。
これはこれで可愛らしい。
などなど。
ジークがそんな事を考えていると。
「でも、だったらどうしてブランは、あんなに焦った様子だったのですか?」
非常にまずい事を聞いてくるアハト。
彼女はひょこりと首をかしげた後、ジークへと言ってくる。
「ユウナが攫われた事に焦っていたのか。はたまた、仮面の悪魔の居場所が分からない事に焦っていたのか……どうにも腑に落ちません」
「な、なにがだ?」
「前者ならば、焦るタイミングがおかしいのです。最初から焦っているならわかりますが、ブランは話しの途中から焦り出した。そして、後者は言わずもがな――仮面の悪魔の居場所をジークが知っている――その事をブランが知っていたのなら、焦る理由がありません」
「…………」
「それに……」
「そ、それに?」
「どうしておまえは、微塵も急ごうとしないのですか? おまえにつられて、わたしもこうして話し込んでしまう程、おまえからは余裕が感じられます――まるで、ユウナが絶対に安全だとわかっているような」
なるほど。
これはあれだ。
「アハト! まずい! あっちの方から、凄まじい魔力の波動を感じる!」
と、ジークは仮面の悪魔こと、アイリスの魔力を感じる方向を指さす。
そして、彼は全力で慌てた様子でアハトへと言う。
「このままじゃユウナが危ない! さっきまでは様子見していたが、もう一刻の猶予もない!」
「さきほどまでは様子見していたのですね! ならば急ぎましょう!」
「あぁ、いくぞアハト! ついて来い!」
「はい!」
と、ジークはそんなアハトを伴って走り出す。
そして、彼は我ながら思うのだった。
(どうして俺は、こんな阿呆みたいな事をしているんだ……まるで道化だ)




