ユウナとブランと冒険者6
そうして数時間後。
あれからも、ユウナとブランは色々な場面を目撃した。
『ひ、ひぃ! 誘拐される! 助けて!』
『うるせぇ! いいところに連れて行ってやるって、言ってんだろうが!』
などなど。
迷子の子供を、冒険者が親のところに連れていこうとしている場面に遭遇したり。
『ど、どこから入って来たんだ! で、出て行け!』
『死にたくなかったら、黙ってりゃいいんだよ爺!!』
なんて。
火事の家から、お爺さんを救おうとしている冒険者に遭遇したり。
『い、いや……やめて、来ないでっ』
『おい、嬢ちゃん――いいからよぉ、ちょっと服脱げや』
そんな。
怪我をした少女に、回復魔法を使おうとしている冒険者にあったり。
あったりあったり。
あったりあったりあったり。
まぁ、これ以外にもとにかく沢山の事があった。
そうして、ユウナとブランはその全てに対処してきた。
ざっくり言うと、住民の誤解を全部解いてきた。
「ん……疲れた」
と、隣から聞こえてくるのはブランの声だ。
現在、ユウナとブランはアルスの街の広場――噴水前の椅子に、並んで座っている。
言葉足らずの冒険者と、勘違い住民の仲持ちがだいたい終わったからだ。
「ユウナ、お疲れ様」
と、再び言ってくるブラン。
ユウナはそんな彼女へと言う。
「あたしこそ、付き合ってくれてありがとね」
「ブランは付き合いたくて付き合った……それに、ブランはユウナの守護竜。ん……お礼はいらない」
「それでもありがと」
言って、ユウナはブランの頭をなでなで。
すると、瞳を閉じ気持ちのよさそうな表情をするブラン。
とても可愛らしい。
(それにしても、住民さん達が冒険者さんの事を受け入れ始めてくれて、本当によかったな)
正直、住民の冒険者に対する態度が軟化するのは、もう少し先かとおもったのだ。
もちろん、まだまだ冒険者を信頼していない住民もいる。
だがしかし。
「あ、あのこれ……飲みます、か?」
「え、俺に? サンキュー! 貰うわ!」
と、聞こえてくるのはそんな住民と冒険者の声。
見れば――街路の清掃をしていた冒険者に、その近くの家に住んで居る住民の一人が、差し入れをしている。
きっと、以前なら信じられない光景に違いない。
これを見れただけでも、ユウナの疲れは吹き飛ぶ気分だ。
「ねぇねぇ……ユウナ」
と、聞こえてくるブランの声。
彼女はジトっといつもの様子で、ユウナへと言葉を続けてくる。
「この街の冒険者……もう大丈夫だと思う?」
「きっと大丈夫だよ!」
「ん……どうして?」
「あたしの想像以上に不器用だったけど、今日一日みんな本気でやってくれてたもん! あんな一生懸命にやるのは、その場限りの感情じゃ無理だよ」
「これからも頑張る?」
「うん! 冒険者さん達は、きっとこれからも頑張ってくれる。それに、住民さん達もそんな冒険者さん達を受け入れてくれるよ!」
「ん……だったら、なんだかブランも嬉しい。ユウナと頑張ったかいがある」
ほくほくと、満足そうな表情をしているブラン。
そんな彼女を見ていると、ユウナもなんだかほくほくしてくる。
(冒険者さん達を信じて、本当によかったな)
などなど。
ユウナがそんな事を考えていると。
「こ、殺される! 冒険者に殺される!」
「てめぇ、止まらねぇとただじゃおかねぇぞ!」
と、聞こえてくる住民と冒険者の声。
見れば――剣を構えた冒険者が、住民を追いかけ回している。
一見、犯罪現場。
しかし、ユウナにはわかる。
(あの住民さんの背中に、大きな蜂がくっついてる)
きっと、あの冒険者はそれを倒そうとしているに違いない。
なんにせよ。
「ブランさん、もう一仕事いける?」
「ん……余裕」
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