第七章 祝勝会2
「おっほん!」
と、ふいに聞こえてくるのはユウナの声。
来た――ハイパー焼きもちユウナ褒め褒めアタックタイムだ。
「ジークくんの魔法や技術は、たしかにすごかったよ! 詳しくないわたしでも、直感的に『これは凄いやつだ』って思うくらいに!」
と、言ってくるユウナ。
彼女は「でもね」と一言呟いたのち、ジークへとさらに言葉を続けてくる。
「あたしが一番すごいなって思ったのは、ジークくんの優しさかな! だって、ジークくんは街に被害が出ない様に、《グラビティ・オーメン》の効果範囲を変えてくれたんだよね?」
「え、えっとだな」
「アイリスさんの説明でわかったけど。街の人のために、そんなに難しい事をやってくれるなんて……あたし、感動したよ!」
「い、いや……俺は城の中にある『ミハエルの研究資料』が消えるのが嫌で――」
「ジ~~~~~~~ッ」
「…………」
「ジ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!」
「うっ」
「はい! 今、目を逸らした! ジークくん嘘ついたでしょ?」
と、ジトっとした様子で言ってくるユウナ。
けれど、そんな彼女はすぐにパッと太陽の様な笑顔を浮かべてくる。
そして、彼女はそのままの様子でジークへと言葉を続けてくる。
「あたし、知ってるよ。ジークくんは人を守るために、常に最善を尽くせる人だって」
「それなら、別に俺じゃなくたって――」
「たしかに、人を助ける為に最善を尽くそうとしている人は、他にもいるかもしれない。でも、ジークくんみたいに『常に』は無理だよ」
「…………」
「タイラントを倒した時もそう。被害が出るのが嫌だから、攻撃されるよりも先に倒してくれた――ジークくんはどんなに強い敵と戦っている時も、常に被害を抑えることを考えてくれる。普通は無理だよ。きっと戦いに必死になって、被害なんて考えられなくなる」
そんな事はない。
もしもユウナが、ジークと同じ力を持っていたとしたら。
きっと、彼女はジークと同じことをする。
(いや待て。『俺と同じこと』ってなんだ? じゃあ何か? 俺は本当にユウナが言う通り、常に被害を考えて戦っているとでも言うのか?)
ありえない。
ジークは血も涙もない魔王のはずなのだから。
などなど、ジークが黙ってそんな事を考えていると。
「ほら、何も言い返せない。あたしが言っている事が、全部本当だからだよ――つまり、ジークくんは世界で一番優しいんだよ」
と、イタズラっぽい様子で言ってくるユウナ。
彼女は事あるごとに、ジークを優しいと言ってくれる。
無論、ジークにはそんな実感はない。
けれどやはり、彼女にそう言われて悪い気はしない……むしろ。
(心が温かくなるというか、誇らしくなるというか)
不思議な気分だ。
などなど、ジークがそんな事を考えていると。
「それと! ミハエルさんがアハトさんを罵倒した時、あれをかっこよく遮ったのも感動したな!」
「あれはその……わたしも嬉しかった、です」
聞こえてくるユウナとアハトの声。
彼女達はまるで姉妹の様に、いつかの再現の様に。
わーわー。
きゃーきゃー。
と、ジーク優しい談義で盛り上がり始める。
そして一方。
「いやぁ! やっぱり魔王様は天才なんですよ! 凡人とは出来が違う!」
「ん……まおう様しか勝たん」
と、聞こえてくるアイリスとブランの言葉。
彼女達は未だ、ジークを褒めちぎっている。
「…………」
なんだか恥ずかしくなってきた。
それに酔いが回ったのか、少し眠くなってきた。
ジークはみんなに声をかけたのち、一人席を立つ……そして。
酒場の二階に併設された宿――そこに借りた自分に部屋へと向かうのだった。
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