第五章 魔王は殴りこむ3
それから数分後。
ジーク達はミハエルの城を、中庭目指して進み続けていた。
「それにしても、ジークくん。どうして、ミハエルさんが居る場所がわかるの?」
「ん……ブランも気になった。まおう様、ひょっとして匂いで探してる?」
言って、ひょこりと首をかしげてくるのはユウナとブランだ。
ジークはそんな彼女たちへと言う。
「さすがの俺も、匂いじゃ無理だ。ただ単に気配と魔力を追っているだけだ」
「そんな遠くの気配と魔力って、正確に追えるものなの?」
「ん……まおう様が特別なだけ。近くはともかく遠くは普通、ふんわりとしかわからない」
「そんな事はない。ユウナとブランも、練習すれば出来るようになる」
「あ、あたしに!? できるのかな……」
「まおう様がそう言うなら……ブラン、頑張って出来るようになってみる」
もっとも、ミハエルの場所が分かった理由はともかく。
こうして、そこまでの道のりを迷わず歩けているのは、アハトの存在が大きい。
「次は右です。はい、そこを曲がってください」
この様に、アハトが道案内してくれるのだ。
さすがは彼女、数日前までミハエルの城で暮らしていただけある。
などなど、ジークがそんな事を考えていると。
「でもジークくん、このお城なんだかおかしくない?」
「ん……ブランも思ってた。冒険者が誰も居ない……それこそ気配が感じられない」
と、聞こえてくるのはユウナとブランの声だ。
ジークはそんな彼女達へと言う。
「昨日の一件もあったし、大方冒険者全員に愛想を尽かされたんだろ」
「たしかに、ここに向かう最中――大通りにすごい沢山、冒険者さんが居たもんね」
「ん……みんなユウナを応援してた」
「ただ、アイリスにも言った通り油断はするなよ」
「え、それってどういうこと?」
「まおう様、これ」
と、後者のブランは気がついたに違いない。
彼女は杖を構え、交戦体勢に入っている。
そして、その直後――現れたのは。
醜悪で、悪臭を放つ怪物達。
ある者はヤギの胴体にライオンの頭、そして蛇の尻尾が生えている。
またある者は馬の胴体に竜の頭、そして蝙蝠の羽生えている。
キメラだ。
人造竜タイラントには遠く及ばないまでも、どの個体からもかなりの戦闘力を感じる。
少なくとも、並みの魔物とは次元が違うレベルの強さだ。
(こいつらが居るから、ミハエルは冒険者が居なくても困らないってわけか)
もっとも、この程度でジークは止まったりしない。
考えた後、ジークは剣を抜こうとし――。
「待って下さい、ジーク」
などと。
ジークの思考を裂くように、アハトの声が聞こえてくるのだった。
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