第四章 魔王は助けてみる7
空間を裂くように、聞こえてくるのはユウナさんの声。
わかる――絶対にアイリスへの対抗心も混じっているユウナさんボイスだ!
「まずジークくんさ。最初に下位闇魔法 《シャドーフレア》を使ったよね?」
「あ、あぁ……使ったな。地下実験施設に侵入するため、地面を爆発した時だろ?」
「そう! あの時さ――ジークくん、アイリスさんに言ってちゃんと人払いしてくれたよね? あれって、周りの人を傷つけないようにしてくれたんでしょ?」
「う、ぐっ」
「あと、まだまだあるよ!」
と、瞳をきらきらユウナさん。
彼女はお祈りポーズで、ジークへとさらに言葉を続けてくる。
「地下実験施設での最後――爆発が起こったときに、住民だけでなく冒険者達も助けてくれたよね?」
「いや、それはユウナの勘違いだ」
「でも、あたしが『冒険者達も助けて』って言ったら、ジークくんはしっかり、冒険者達も助けてくれたよね?」
「そこが違う。あれは結果的に『冒険者を助けるような、選択肢を取った様に見えただけ』で、実際は微塵も助けようとしてなんて――」
「ん……嘘」
と、ジークの言葉を断ち切り聞こえてくるのは、ブランの声。
そんな彼女はジトットした様子で、ユウナへと言う。
「ブランはまおう様の配下……でも、ユウナを守る守護竜でもある」
「え、えっと、ブランさん?」
「ん……ユウナは今、まおう様に騙されようとしている」
「それって、どういうこと!?」
「ブランは魔法使いだから、魔力の流れくらいはわかる」
ま、まさかブラン――あれを言う気ではなかろうな。
と、ジークがドキドキしていると。
「まおう様はユウナに『冒険者も助けて』って言われた瞬間……ん、使おうとしてた魔法を止めた」
そんな事を言ってくれるブランさん。
要するにこれはアレだ――終わった。
「それって、本当!? つまり、ジークくんは冒険者を助ける為に、しっかりと行動してくれたってことだよね!?」
と、はしゃいだ様子のユウナ。
ブランはジトっとした様子で、そんな彼女へと淡々と言う。
「ん……本当。まおう様、最初は冒険者ごと魔法で地下実験施設の錬成陣を吹っ飛ばそうとしてた……でも、ユウナに言われたからやめてた」
「やっぱり、ジークくんはとっても優しくて、立派な人なんだね!」
「まおう様は立派……ブランもまおう様みたいに、優しくなりたい」
「じゃあ、一緒にジークくんを目標に頑張っちゃおうか?」
「ん……ブラン、ユウナと一緒に頑張る!」
えいえい、おー!。
と、何やら騒いでいるユウナとブラン。
ブランはともかく、真の勇者であるユウナ。
(あいつに目標にするとか言われるのは、なんだか複雑というか)
すごく照れくさいし、恥ずかしい!
けれど、不思議と悪い気はしない。
(むしろ、どうしてか心地の良さを感じるな)
などなど。
ジークは一人、そんな事を考えるのだった。




