第四章 魔王は助けてみる5
時はあれから少し後。
場所はアルスの街――広場。
「お前達はもう自由だ、好きにするといい。俺が居る以上、ここで暮らそうと逃げ出そうと――もうミハエルがお前達に手を出すことはありえない」
「ありがとうございます、本当に感謝をします」
と、言ってくる住民達。
そして、その周囲を守るように立っているのは。
「おう! 安心しろよ! 罪滅ぼしの意味も込めて、てめぇらアルスの住民は俺達が守ってやるからよ!」
調子よくからから笑っている冒険者達だ。
彼等はユウナへと向きなおると、順に彼女へと言う。
「ユウナちゃん! 俺、しっかり心を入れ替えて正義を為すよ!」
「俺も俺も! これからはちゃんと、まともなクエスト受けて金を稼ぐぜ!」
「ってかさ、ジークさん達がミハエル倒したら、俺達でまっとうな冒険者ギルドを作り直さねぇ!?」
「あ、それな! 今のままだと、クエスト依頼料高すぎて、住民のためにならねぇ!」
「ぎゃはははははははははっ! ちげぇねぇ!」
本物のバカなのか何なのか。
とても都合よく笑っている冒険者達。
ジークとしてはあまり信用できたものではない……が。
「わぁ~! ありがとう、みんな! あたし、みんなの事を信じてよかったよ!」
言って、祈る様なポーズをしているユウナ。
まぁ、冒険者を助けて欲しいと言ったのはユウナだ。
であるなら、冒険者の命もユウナのもの。
(俺が後から口出しする道理はないな。それに、ユウナが楽しそうな所を見ていると、不思議とこれでよかった気になって来る)
などなど、ジークがそんな事を考えていると。
くいくいっと引かれるジークの服。
見ればそこに居たのは――。
「まおう様……そろそろアハトが限界そう」
「そうですね。私が見た感じ、精神的にもそうとうまいってますよ、あれ」
首をかしげながら言ってくるブランと、それに続くアイリスだ。
当のアハトは住民達のお礼を聞いたりで、にこにこ幸せそうにしている。
けれど、ブランとアイリス達の言う通り――その表情はどこか生気にかける。
(本当に無粋だとおもうけど、頃合いを見てアハトを連れ出すか)
明日はミハエルに招待もされている。
要するに、いい加減ミハエルを潰す頃合いでもある。
となれば当然、アハトも付いてくるに違いない。
(さすがにしっかり回復してもらわないとな――俺と戦った時みたいに、いきなり倒れられたら危ない)
ジークはそんな事を考えた後、アハトの方へと歩いて行くのだった。
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