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第三章 アハトの冒険5


 アハトは痛みと疲労を堪え、全力で抜剣――狙うはミハエルのがら空きの胴。

 しかし、そんなアハトの攻撃は、ミハエルへは届かない。


「おっと、危ない危ない! 危うく、殺されちゃうところだったじゃないか!」


 バックステップでアハトの斬撃を躱した後、そんな事を言ってくるミハエル。

 アハトはミハエルの言葉を無視して、彼へと言う。


「わたしは今ここで、おまえを倒す。頭のおまえを倒せば、他の冒険者は烏合と化す!」


「やってみるといいよ、アハト」


「言われなくとも!

 言って。

アハトはミハエルを追撃するため、足を前へと踏み出し――。


 パリンッ。


 聞こえてくるのは、ガラス瓶が割れるような音。

 発生源は、アハトが先ほど踏み出した足の下。


(これは……錬金術で作った爆弾――っ)


 直後、巻き起こる凄まじい爆発。

 同時、聞こえてくるのは――。


「安心するといい。キミを殺すつもりはないですからね、威力は低めにしてある」


 そんなミハエルの、余裕しゃくしゃくと言った様子の声。

 きっと、今のでアハトを行動不能に出来たと、そう信じているに違いない。

 大きな間違いだ。


「手加減も、油断もするべきではなかったですね!」


「なっ!?」


 と、驚いた様子で上空を見上げてくるミハエル。

 要するに、アハトは爆弾が爆発する前に、上空へと逃げたのだ。

 当然、ただジャンプしただけでは、こうまで高くは飛べない。


「っ……爆風を利用したのか!?」


 と、まさにといった事を言ってくるミハエル。

 なにはともあれ、あとはもう簡単だ。


 上空から落下する勢いを剣に乗せ、ミハエルへと振るのみ。

 すなわち――。


「わたしの勝ちです、ミハエル!」


 アハトへと迫る地面。

同時、彼女は剣を振り下ろす。


 ミハエルは片腕を上げ、防御態勢を取って来る。


けれど、当然そんなものは防御になどなりはしない。

 体感でわかる。


この剣速ならば、鋼鉄すらも容易く両断できる――ミハエルの腕など、紙切れ同然だ。

と、アハトが一瞬のうちに考えた僅か後。


アハトの両手に感じるのは、肉を引き裂く感覚。

 高速の斬撃が、ミハエルへとついに届いたのだ。

 それはどんどん進んでいき、ついに骨へと達したところで――。

 

「!?」


 全く動かなくなる。

 アハトは更に力を込め、剣を押し込もうとしてみるが、それでも剣は動かない。


「悪いね、僕の身体は特別製なんですよ。それとアハト……キミは勘違いをしているんじゃないかな?」


 と、聞こえてくるのはミハエルの声だ。

 まずい……何かマズい予感がする。


 アハトは一刻も早く、ミハエルから離れようと、今度は剣を引こうと力を入れる。

 しかし、それすらも動かない。


「僕は並み大抵の錬金術師とは、立っている次元が違うんですよ……勇者ですから」


 と、更に言ってくるミハエル。

 彼はカラカラと気持ちよくも、醜悪な笑みを浮かべて、アハトへと言葉を続けてくる。


「そして、キミはそんな僕の創造物に過ぎない」


「なにが……いったい何が言いたいのですか、おまえは」


「理解ができないかな、ホムンクルス。最高の錬金術師であり、最強にして至高の勇者である僕が、作った物よりも弱いと思いましたか?」


「ぐ――っ」


 アハトの横っ腹に襲ってくる痛み。

 同時、アハトの身体は吹っ飛び、何度も転がってようやく止まる。


(判断を誤りました、ね……蹴りが来るのは見えていたのに、剣への執着から回避が遅れてしまった)


 などなど。

アハトがそんな事を考えた瞬間。


「っ……これ、は!?」


 アハトの服から突如、大量のスライムが現れたのだ。

 奴等はアハトの身体の至る所にまとわりつき、彼女を拘束しようとしてくる。


「キミを蹴り飛ばす際にね、僕が付けたんですよ」


 と、腕にめり込んでいる剣を抜き、それを放りながら言ってくるミハエル。

 アハトはそんな彼を睨み付けながら言う。


「この程度の拘束、抜け出せないと思っているのですか?」


「思っていないさ! キミは僕の創造物の中でも、かなり上位に位置する存在だ! 決して過小評価なんてしない!」


「それなら――」


「ただね、キミは抜け出さないよ」


 言って、ミハエルがパチンと指をならすと。

 これまで周囲で待機していた冒険者達が、彼の周りへと近づいて来る。

 そして、そんな冒険者達はそれぞれが、アハトが解放した人々を人質にとっている。


(わたしがミハエルと戦っている間に……っ)


 油断していたのは、アハトの方だった。

 手加減しているミハエルなら、瞬時に倒せると判断してしまった。

 そして、その一瞬ならば問題ないと――人々から目を離してしまった。

 それら全てが、この状況を招いてしまった。


「それでどうする、アハト? その拘束から抜け出せば――彼等冒険者に命令して、人質を殺させるけど」


 と、そんな事を言ってくるミハエル。

 答など決まりきっている。

故にアハトは視線を下げ、ミハエルへと言う。


「わたしの、負けです……ですが、どうか彼等は解放してあげてください」


面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。


また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。


ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。

冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。

すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。


あと……。

五月一日発売の『常勝魔王のやりなおし』2巻を予約してくれたりすると、ものすごく嬉しかったりします。

そしてこちらも、すでに予約してくれた読者様はありがとうございます!

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