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第84話 ただいま研修中

想定外の感動?な出会いに調子が崩されてしまった魔法研修初日。俺がオークキングを倒した動画を見て人生を立て直す事が出来たというフレデリカ・ラングレーとオスカー・ワイルダーの両名、二人の興奮が冷めるのを待って他の三名の紹介も行われた。


もう一人のアメリカ人研修生はトッド・ヘイワード(25)。ボストン出身の白人男性。プリンストン大学を出て国務省に勤務しているという。他の二人とは違い荒事には向いていない感じで、東部のエリート然としている。実質、このヘイワード氏がアメリカ組のリーダーというところで、他の二人とは一線を引いている感じがする。俺達にはどこかビジネスライクな対応だった。


陸軍からの研修生は二人とも24歳の一般大学出身の少尉だ。一人は山本沙織少尉。身長は160cmくらいで、髪型はショートにしている。丸顔で大きな二重の目がくりくりとしている可愛い童顔の女性士官だ。原隊は大宮駐屯地の中央特殊武器防護隊。


もう一人は武田泰信少尉。戦国武将のような氏名の彼は大柄で身長は180cmくらい。丸刈りのよく日に焼けてハンサムな顔立ちで、引き締まった身体をしている。レンジャー課程を終了し、原隊は習志野の第一空挺団だという。



魔法研修生の部屋は宿坊に二部屋と、駐車場に建てた簡易構造の多目的棟に三部屋確保してある。簡易構造とはいえ、この建物は最新の断熱防音効果のある壁体を使用し、もちろん冷暖房は完備。そしてトイレは水洗式ではなく新素材を使ったもので、糞尿などをタンクが勝手に分解してしまう優れものだ。風呂が無くて入浴には宿坊まで行かなくてはならないのが玉に瑕だ。



研修初日はガイダンスと荷物整理等に当てられ、本格的な研修は翌日から始まる。研修生五人に俺一人では効率悪いので、助教として大沢軍曹が付く。また、座学では斉藤、ユーリカ、アックス、舞が協力してくれている。


テキストなどは作っていない。何故かといえば、まだ世間一般では魔法は認知されていないし、政府から公式にその存在も認められていない。つまり魔法は公式には存在していない未知の技術であり、斉藤等が研究をしているが、一つの学問として体系化出来ていないのが現状だ。魔法とは、魔力とは何か?この基本的な事すら説明出来ず、ただ存在する現象を利用して、応用しているに過ぎないのだからテキストなど作りようが無い。


だが、幸いな事に最近になり転移者達の中に魔法学の学者がいる事がわかったのだ。エルフでサバール村の長老の一人だそうで、かつてはサラクーダ市のサラクーダ大学の魔法学の教授だったという。本人はその事についてあまり語らず、サバール村でも知っていたのは長老衆と家族のみだったとか。現在、斉藤が教えを受けている。長老といっても見た目は30台後半くらいで偏屈でも何でもなく、教授を引退したのは単に故郷でのんびりしたくなったから、らしい。その辺はやっぱり少し変わり者臭がするような…


研修二日目は午前中に座学を行い、午後は魔法のデモンストレーションを行い、研修生達に実際に魔法を目の当たりにして貰う。まずは手始めに俺が雷と炎を放ち、エーリカが風魔法で旋風を巻き起こした。次いで雪枝が水球を幾つか空中に浮かべ、それ等をそのまま氷結させて見せる。


「土方教官、この研修で自分達もこうした魔法が使えるようになるのでしょうか?」


と興奮気味に質問するのは武田少尉。魔法の実演中も凄えを連発していた。


「研修を受けて皆が皆出来るようになるとは限らない。だが、最近の研修生は今のところ全員が魔法を発現させている。一度魔法が発現出来たら後は訓練次第だな。」


「はい。俄然やる気が出てきました。」


すると、武田少尉のハイテンション振りを見た大沢軍曹から念我が送らせて来た。


"土方中尉、毎度の事ですが妙にテンション高い奴って必ずいますよね?"


「全くだな。」


俺はかつての大沢研修生を思い出し、お前もな!という意味を込めて、会えて音声言語で答えた。


かつて、この大沢軍曹が研修生として来た時も同じように魔法のデモンストレーションを見せたのだが、その時のこいつの興奮っ振りは武田少尉の比ではない、周りもドン引きするほどだったのだ。だから俺に言わせれば、どの口が言うかなという感じた。まあ、彼はその分熱心に魔法を学んで訓練も人一番行っていたから、今こうして魔法助教としてここにいる訳だが。


「嫌だなぁ中尉。自分がそうだったみたいじゃないですか?」


「みたいじゃないですか?じゃなくて、そうだったの!」


まあ、そうは言いつつも俺はこのデモンストレーションを見た後の研修生達の反応を重視している。この魔法を見た後で研修生それぞれがどのような反応を見せるか、それが研修生それぞれの今後の成果を占う目安となるからだった。かつての大沢伍長や今回の武田少尉のように興奮してハイテンションになる者は、魔法に対して素直に憧れ、魔法を手に入れようと必死に努力する。例えあまり魔法の素質に恵まれていなかったとしても、努力と筋肉と流した汗の量は裏切らないの言葉通りにやがて魔法を手にし、得意分野で突出した成果を出している。


それに対し、この時に腕なんか組んじゃって、ふぅん、へぇ、ほぅ?とした反応を見せる者は、最近の研修では無いものの魔法が発現しなかったり、発現しても周りよりも出遅れ感が否めず、結果を残さない場合が多い。


だから、この時の反応は必ず見ておく必要がある。妙に斜に構えていたりする者がいたら要注意だ。この事は助教である大沢軍曹にも徹底させている。派遣元も人員の遣り繰りしたり予算を手配したり、一人の研修生を出すために人も動き事務仕事も増えるので大変なのだ。その人達のためにも研修生には十分な成果を持ち帰って欲しい。まあ、流石に現代は上司の元をスタンプラリーするような事は無いだろうが。


魔法のデモンストレーションはまだ続いている。最後は身体強化したラミッドとアミッドによる模擬戦だ。ラミッドは19歳、アミッドは17歳になった。二人とも身長が伸びて俺と並んでも遜色ない。そんな二人の身体強化しての模擬戦はまさにド迫力。


武田少尉、ワイルダーの二人は食い入るように見ている。山下少尉とラングレーの二人は固唾を飲むように見入っている。そしてヘイワードはというと、一見興味ありそうに見ていたが、時折模擬戦から視線を外す。その視線の先はというと、エーリカだった。


確かにエーリカは思わず凝視したくなる程美しく、可愛い。大抵の男なら、いや、女性であっても見てしまうだろう。それは良くわかるにしても、ヘイワードのエーリカを見る眼差しはそうしたものではなく、じっくりと観察するかのような冷徹なものが含まれていた。少し警戒しなければならない。


この後は多目的棟に戻り、明日行う予定の魔力交流についての説明を行う。この魔力交流が魔法が発現するか否かの試金石となる。


いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きありがとうございます。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


次話もぜってぇ読んでくれよな!

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