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第77話 ロスアンゼルス決戦、ならぬ籠城

行った事も無い国の描写は土地勘が無くて難しいス。

俺達が乗った海兵隊のVTOL機は編隊を組み、現在サンディエゴの海兵隊基地から非常事態となったロスアンゼルス市に向かって飛行中だ。俺、オスカー・ワイルダー伍長(20)は完全武装で機内のシートに座り小隊軍曹であるジェラル軍曹から本任務の最終ブリーフィングを受けている。


「いいか、現在に至るもロスに現れた未確認生物の正体は不明だ。わかっているのはバケモノじみたそいつらが市民を見境無く襲っているという事だけだ。我が小隊は予定通り州立歴史公園に降下し、付近のバケモノ供を排除し、市民の救出、保護、避難誘導を行う。」


降下したロスアンゼルス市内では信じられない悪夢のような光景が繰り広げられ、まさにパニック状態となっていた。醜悪な緑色の小人は集団となって人々を包囲して嬲り殺し、豚頭のモンスターや頭部から角を生やした巨人は手当たり次第に素手で、棍棒で、槍で、剣で市民達を殺し、巨大なカマキリのモンスターは鎌で捕らえた若い女性を貪り食っている。そんな凄惨な現場でコワルスキー小隊長の命令で戦闘は始まった。


結果、我が小隊は壊滅。小人共は難無く一掃出来ても豚頭は脂肪で銃弾が深く貫通せず、角生やしに至ってはM 16の銃弾では僅かな傷しか与えられなかった。そして反撃して来たモンスターによって俺達は蹴散らされ、小隊長は撤退を指示して自ら殿を守っている間に上空から飛び降りて来たカマキリのモンスターによって首を刈り取られて戦死された。


続いて小隊の指揮を継いだジェラル軍曹も豚頭に棍棒で右肩を砕かれて指揮を執る事が出来なくなってしまった。結果、小隊で最上位の下士官となった俺がジェシーから小隊の指揮を任され、俺は俺の能力"危険予知・回避"をフル活用してモンスター共が我が物顔で闊歩するロスアンゼルス市内を逃げ遅れた市民を救出しながらドジャースタジアムまで撤退した。その後、ジェラル軍曹は呼吸困難を呈して死んでしまった。メディックによると、右肩を砕かれた事による血胸だという事だった。


やがて、ドジャースタジアムには次々と市民達が避難して来た。俺達の小隊は最初にモンスター共との戦闘によって戦力は半減。こちらから市内へ積極的に撃って出るような事は出来ず、スタジアムに籠もって襲いかかって来るモンスターから市民達を守るのが精一杯だった。


その後、来援した戦力によって市内のモンスター共は撃退された。俺達の小隊は守った市民達からは感謝され、俺は半減した小隊を引き継いで市民を守り通したとして海軍十字章を授与され、且つ軍曹に昇任した。


しかし、俺がやった事といえば、小隊の指揮を引き継いで能力を使って市内を逃げ回り、たまたまいた逃げ遅れた市民を保護し、守るに適した堅牢な建物に避難民と共に籠もって守りに徹しただけだったのだ。守った市民達から感謝されたのは嬉しいが、俺は勲章を貰えるような事なんて出来ちゃいない。


ESP能力が有っても、所詮俺の能力じゃこの程度が精々。俺にもっと強い能力が有ればもっと多くの人達を守る事が出来ただろうに。クソが!



そもそも、俺は特に合衆国を守ろうとか、国民を守ろうとか、そんな大それた理想を抱いて海兵隊に入隊した訳じゃなかった。ガキの頃から運動は得意で、頑強な身体に強い腕っ節。そんな合衆国男子のご多分に漏れず、俺もアメリカンフットボールで活躍して奨学金を得て大学に進学する事を夢見ていた。


ハイスクールではアメフト部でレギュラー、タイトエンドとして活躍した。チームとしても良い成績を残したが、結局俺にはどこの大学からも声は掛からず、大学進学の夢は叶わなかった。恋人も就職でポートランドに行ってしまい、すぐに恋人が出来たようで、振られてしまった。エミリー、好きだったのに。


アメフト選手として大学進学する夢は断たれたが、当然卒業後の身の振り方を考えなければならない。セールスマンには向いてないし、工場で働くのもちょっと。両親のように地元で警察官や公務員になるのも悪くないが、何か地元に埋れてしまいそうで嫌だった。


身体能力には自身がある。頭の出来も人並みには良い、と思う。顔はチャーリー・シーンに似ていると言われるからいい方だろう。そして、俺にはハイスクール2年生の時に発現したESP能力"危険予知・回避"がある。ならば、大丈夫だろうと冒険を求めて海兵隊を志願した。


我がワイルダー家には一つの家訓がある。それは「当たって砕けろ」というものだ。何でも、母方の曽祖父が日系人で、第二次世界大戦では陸軍の日系人部隊で活躍して名誉勲章を授与されているそうだ。「当たって砕けろ」は日系人部隊の合言葉だったという。


それ以来、この言葉が母方の家では家訓となり、母と結婚した父も大いに気に入って我が家でも家訓となっている。


夢破れた俺に両親はそっと見守ろうという態度で、特に声を掛けるような事は無く、海兵隊に入隊する事についても反対する事も無かった。だけど、俺が海兵隊入隊のため家を出る朝、父も母もミドルハイスクールの弟も揃ってこの言葉を送ってくれた。「当たって砕けろ」と。



小隊はサンディエゴの基地に戻り、小隊長不在のまま、俺は仮の小隊長として部隊の再編に当たらなければならなかった。しかし、あの時感じた虚無感は俺の心の中に有り続け、何をするにも億劫で、以前ほど積極的に物事に当たる事が出来なくなってしまった。軍医は戦闘によるPTSDだと言うが、そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれないし、まあ、そんな事はどうでも良かった。


そんな時、一つの噂が基地内にもたらされた。それは、「日本にはリアルアメコミヒーローがいて、魔法の力でモンスターと戦っているらしいぞ」という物だった。そんな馬鹿な、とは言えない状況だ。何故なら、ちょっと前ならどこからともなくモンスターが街に現れて人々を襲うなんて誰も思わないし、宇宙人に誘拐されて何か機械を身体に入れられたとかいう方がまだ受けがいい。だけど現実はどうだ?ファンタジーやフィクションの世界にしか存在しないはずの様々なモンスターがわんさかと現れて、多分、今もどこかで街や人々を襲っている。


俺自身もモンスター共と何日も戦い続け、小隊長も戦友達も戦死している。これが夢物語のはずがない。ならばモンスターだけじゃなく、魔法使いだって妖精だっていたっておかしくないじゃないか。


更にケビン(新兵キャンプの同期でよくつるんでいる)がリアルアメコミヒーローが映っているという動画を俺に見せてきた。それは炎を纏った全裸の若い男が蹴りの一撃でどでかい豚頭を爆砕させるというとんでもない代物だったのだ。


俺はその動画を見て衝撃を、それも激震を受けた。そして、アメフト選手として大学進学する夢が破れて以来、初めて思い願ったのだ、「俺もこうなりたい!」と。PTSDなんてどこかに吹っ飛んだ。


しかし、それは俺の新たなる悪戦苦闘の始まりとなった。アメフトと違って何をどうすればあのような力を得る事が出来るのか全くわからないのだから。あの動画が撮影された場所は日本だという。日本に行けばあの全裸の男がいるのだろうか?でもどうやってこのご時世に日本に行けるというのか。合衆国と同盟国である日本とは空路、海路ともに確保されているが、流石に気軽に海外に行けるような時代ではなくなっている。


俺は日本にも海兵隊の基地がある事を思い出したので、イワクニとオキナワへの異動希望を出して機会を待つ事にした。それに並行して隊務の合間に同僚のエチゼンヤという日本人から日本語を勉強し、合気道の道場にも通った。もっとも、合気道かと思っていたら、そこの師範がやたらと日本を悪く言うため怪訝に思っていたところ、これは合気道ではなくハプキドだと言ったためすぐに辞めたが。


そして、遂に俺にその機会が巡って来た。それはイワクニやオキナワへの異動ではなく、なんとトウキョウに近いチチブという山奥の聖地で三年間魔法を学んで来い、という信じられないような命令だった。なんでも、俺を能力者として登録しているESP研究所からの依頼という事らしい。


少し前の自分達が誰もモンスターアタックを予想出来なかったように、この先の未来も誰にも予想がつかない。モンスターアタックがめちゃくちゃにしてしまったこの世界で、誰も明るい未来を抱く事は出来ずにいる。だけど、俺はこの巡って来たチャンスを握りしめ日本へ行く。きっとこの世界を閉ざす闇を払う何かがあると俺の能力が告げている、ような気がするのだ。多分。


日本へ出発する前、俺は休暇を取ってオレゴン州セイラム市の実家を訪ねた。家族には単に仕事で日本に留学するとだけ伝えた。そして、数日過ごした実家を出る際、両親と高校生になった弟は例によって我が家の家訓と共に俺を送り出してくれたのだ。


「当たって砕けろ!」と。




お読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、特に感想を頂きたく、宜しくお願いします。

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