幕間15 あれから1年…②
それじゃあ、私、竹内優子中尉が引き続き知られざるモンスターアタックから1年後の世界について解説するわね。ユーラシア大陸の次は南北アメリカからにしようかしら。
北米に現れた魔物はゴブリンやオーク、オーガなどの人型だけじゃなくて、北米ならではのモスマンも現れたし(チュパ何とかはいなかったわね)、巨大な昆虫型の魔物や硬い鱗に覆われて背中に翼を生やした巨大なワニみたいな魔物も現れたの。
米軍とカナダ軍は都市に出現した魔物の鎮圧には成功したものの、殲滅には至らなかったから魔物は北米各地に拡散してしまったから、その後が大変。
特に巨大なワニみたいな魔物が問題で、硬い鱗は小銃弾なんて余裕で弾き返して通用しないし、群れなして飛び、口から炎を吐くから"サラマンダー"と呼ばれるようになったの。このサラマンダーが住宅地に飛来しては人や家畜を襲って食い殺し、更に家々を炎で焼き払うから特に厄介ね。何と言ってもサラマンダーは飛行するから軍隊が来る頃にはとっくに飛び去ってしまって、正にいたちごっこになってしまって被害が拡大してしまったわ。
国内が魔物による混乱状態となりながらも何とか政府機能を維持出来ているカナダと米国に対し、メキシコは残念だったけどメキシコシティは魔物によって壊滅させられて全土が無政府状態になってしまったの。国内難民も発生している米加両国にはメキシコからの難民を受け入れる余裕なんか無くて、米墨国境では米国側の州兵、警察、民兵隊と北上するメキシコの武装難民との間で戦闘まで起きてしまったわ。
メキシコからの難民は以前の米国大統領が築いた国境線の壁で阻止する事が出来たけど、米加両国内は魔物の被害と難民の流入を防ぐために孤立して武装したコミュニティが多く出来たし、自警団や民兵隊が陸上交通を遮断したりもしているからある意味行政も司法も中世並みに退化してしまった感じね。
中米から南米にかけてはブラジルのリオデジャネイロとサンパウロに魔物が現れて両市を壊滅させ、その後魔物は南米各地に拡散してしまったわ。拡散した魔物に蹂躙されて多くの犠牲者が出て、経済破綻と食糧不足による暴動や略奪も多数発生。こちらもドミノ式に南米各国は無政府状態となってしまったの。
結局、一年経過して中米から南米にかけて国家機能を維持出来ているのはキューバ、ウルグアイ、アルゼンチン、チリの4カ国になってしまったわ。
アフリカ諸国には魔物は現れなかった。だけど中国が消滅して西側先進国も多くが無政府状態となった今、どこからも援助が無くなってしまって。それによって経済破綻、暴動、民族紛争、テロ活動が頻発・激化して最早アフリカ全土がほぼ無政府状態の混沌状態ね。
ただ、後述する我が国も加盟している海洋国家連合が海上通商路確保のために南アフリカとマダガスカルを援助して維持、ソマリアとジプチを占領確保しているわ。
最も幸運だったのはオーストラリアとニュージーランドでしょう。こちらも魔物は現れなかったからね。ただ、その後で二度目のモンスターアタックが起きて状況は一変。この二度目のモンスターアタックでは東南アジアに海棲の魔物が現れてね。この海棲の魔物というのがマーマンとか人型の魔物もいたのだけど、問題となったのが大型のクラーケンとか島ダコ。
この大型の海棲魔物は沿岸の街や村を襲って鯨なども捕食するばかりか、この海域を航行する船舶を襲って沈めたの。この海域にはマラッカ海峡なで海上交通の要衝となっているから、それによってこの海域の海運が一斉に止まってしまったの。これは全世界の海運が止まった事も意味する訳ね。
それは生き残った国々、特に日米を始め海洋国家群にとっては大死活問題。そのため日米台と英連邦、そしてインドは有志連合を組んで海軍を東南アジアの海域に派遣、海棲魔物群の討伐を行ってね。それによってこの海域の海運が正常化したのだけど、そのまま再発防止のため有志連合海軍が常駐となり、安全保障と海上通商路確保を目的として有志連合がそのまま海洋国家連合という国家連合体となったの。
その結果だけど、このモンスターアタックから一年後の世界では、中国を始め多くの国家が消滅して国連も機能停止してしまっている。そして世界はロシアを中心としたユーラシア大陸同盟と日米英印を中核とした海洋国家連合の二極構造となってしまったわ。
この大陸国家群と海洋国家群に分かれた構造は、ソビエト連邦が瓦解して冷戦構造が解消されて以来、巡り巡って再びの二極構造だけど、両陣営は特に対立したりせず、協力するところは協力しているから冷戦時に比べて遥かにマシだけどね。
モンスターアタックから一年後の世界はざっとだけど、こんな感じかしらね。モンスターアタック自体は今も世界各地で五月雨的に続いているし、時々私が秩父で体験したような大規模なものも起きているから、まだまだ油断は禁物。
だけど、我々人類もこの一年で魔物との戦いで多くの戦訓を得ているわ。魔物には通常兵器で十分対処可能だし、我が国始め生き残った先進国では新兵器の開発を急いでいるしね。それにあまり大きな声じゃ言えないけど、我が国には魔法という他国には無いアドバンテージがあるしね?
世界はモンスターアタックによって闇に閉ざされてしまっているけど、真っ暗闇ではなく足元を照らす灯りくらいは有るといった感じかしら。
それじゃあ、私の解説はこれくらいで。私は暫くは朝霞の陸軍広報施設にいるから、国防と陸軍と兵器に興味があるお友達は小さくても大きくても大歓迎よ、是非見学に来てね。
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