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第61話 総反撃だ!

「リュウ、話は後だ。」


タケとユーリカ、バーンとゾフィー。助けに来てくれた経緯は気になるところだが、それは後でゆっくり聞く事にする。しかし、これだけは聞かないと。


「お前達がここに来て、満峰山は大丈夫なのか?」


「詳しくは後で話す。向こうも状況が変わった。問題無い。」


一体俺達がいない間に満峰山に何があったのか。非常に気になる。



エーリカはユーリカと抱き合って再会を喜んでいる。色々な事が起こりすぎて、もう満峰山を出発してから随分時間が経過しているように思えるが、まだ7時間も経過していない。そういえば昼飯も食っていなかったな。


「わかった。お前がそう言うのなら大丈夫なんだろう。」


"リュータ、俺達、炎龍様の眷属にしてもらったんだ。上の亜竜どもは俺とゾフィーに任せてくれ"


"済まない、バーン、ゾフィー。君達には助けられてばかりだな"


"そんな事無いよ。炎龍様の眷属になれたのはリュータのお陰だし"


そう念話を送ると、バーンとゾフィーは飛び立ち、ワイバーンの群と空中戦を始めた。空の事は彼等に任せて大丈夫だろう。何で俺のお陰なのか、それも気になるところなんだけど。


と、何故かバーンだけ戻って来た。


"大事な事言い忘れてた。炎龍様からリュータに言付けを頼まれていたんだった"


バーンは俺の頭上で翼を羽ばたかせながら静止し、その言付けとはなんぞやと尋ねる前に念話を続けた。


"我は炎龍なれど炎のみにはあらず。汝、炎に捉われる事なかれ、だってさ。意味は俺わかんないから自分で考えてね"


それじゃね、とバーンは再び飛び立って行く。


う〜ん、また意味深な事を、またこんな時に伝えられても困るな。きっと俺の今の状況を打ち破るヒントなのだろうが、落ち着いて考える余裕なんて無い。


そうしている間に地下の避難シェルターに行っていたラミッド達が舞と真琴と一緒に地上に出て来た。皆、地上の惨状を驚きと共に見ている。


「竜太、司令部は健在よ。新村司令は既に援軍要請済み。どんな戦力かわからないけど。」


真琴がそのように司令部について早口に教えてくれる。それによれば援軍が来るとの事で、バーン達がワイバーンの群を潰しつつある今、バーンのブレスで俺達を包囲する蟲型魔物は焼き尽くされ、生き残りも掃討した。防御壁の外には、まだ後続する蟲型魔物の群と第一波のオーガなどの群が残っているが、別に俺達は何もしなくても後は援軍に任せてもいいはずだ。


魔物の群がこの駐屯地を襲撃したのが魔王国軍による作戦である事はほぼ間違い無い。奴らが向こうの世界にいるのか、こっちの世界にまで出張っているのか知らないが、自分達が計画したこの作戦の成否をどこかで監視しているに違いない。


モンスターアタックの発生以来、世界中で直接的、間接的に多くの人命が失われている。この戦いで国防軍の被害も甚大で、多くの将兵が戦死しているのだ。


だんだんと腹が立ってきた。今までは自分達に降りかかる火の粉を払うように、襲いかかってきた魔物を倒してきた。言ってみれば受け身の姿勢だったと言える。しかし。今のままでは、結局魔王国軍に振り回されてこちらの打つ手は後手後手に回り、終わりの見えない消耗戦に社会は疲弊、やがて衰退して行く。それこそが魔王とやらの狙いの一つなのだろう。


ここで、まだまだ魔物が多くいるこの状況で、援軍が来るから後は任せようという考えでいていいのか?否だ。俺は、俺達は戦える。戦う術がある。どこに魔王国軍の斥候が潜んでいるのか知らないが、必ずしも見ているはずだ。奴らの目の前で残りの魔物を屠って目に物を見せてやる。



「リュウ、この後はどうするんだ?」


流石は親友。いいタイミングで聞いてくれる。幸い、俺の周りに満峰神社から来たメンバー全員がいる。みんなに俺の考えを聞いて貰うには良いシチュエーションだ。


「タケ、俺は今、非常に腹を立てている。」


「うん、何にだ?」


「無論、魔王国軍にだ。」


全員が俺と斉藤を囲み、俺達の会話を聞いている。


「魔王とやらが何を考えているのかは知らん。ただ、其奴のせいで異世界でもこっちの世界でも実に多くの人命が失われた。住んでいた家を失い、生まれ育った故郷を失い、国を失った。多くの人々の生活、希望、未来が奪われた。異世界の人々が、この世界の俺達が其奴に一体何をしたか?何もしてやしない。にも関わらず、この様だ。こんな理不尽な話があっていいのか?いいはずがない。」


「リュウが他人のためにそこまで怒るなんて珍しいな。で、お前はどうしたいんだ?」


斉藤は茶化すでもなく結論を促す。


「異世界でも、この世界でも、俺達は魔王国軍に一方的にやられて来た。」


皆を見回すと、一様に口を噤んでいる。思い出しているのかもしれない。この世界の者はモンスターアタックの惨劇を。転移者達は魔王国軍からの侵略を、失った家族や友達、向こうの世界にいてもう会えない人々を。


「そして、今日も俺達は追い詰められていた。負けていたんだ。しかし、状況は変わった。タケとユーリカ、バーンとゾフィーが来てくれて潮目が変わった。今の俺達なら十分に戦える。ここにいる俺達の力を結集して残りの魔物を討つ。今、この瞬間から魔王国軍に対し反撃に出よう。みんな、どうだ?」


俺は自分の思いの丈を皆に伝えた。沈黙。そして一瞬なのか、数秒なのか、定かではない短い時間が経過した後、


「やろうぜ兄貴!」

「兄貴、俺も戦うぜ。あいつらふざけやがって!」


ラミッド、アミッドの虎兄弟が叫んだ。


「大将、俺も戦う。あいつら絶対許さない。」

「父上の仇、領民達の仇、必ず討つ!」

「その言葉待ってたぜ、大将。戦友(あいつら)の無念晴らしてやるぜ。」


「やろう、リュータ。やられっぱなしなんて、もうたくさんよ!」

「先輩、私先輩にどこまでも付いて行きます。」

「私も反撃に賛成。攻撃は最大の防御っていうしね。」


転移者達も舞も真琴も賛同してくれた。


「タケ、お前はどう思う?」


俺は斉藤の目を見ながら奴の考えを問う。それに対して斉藤は表情も変えず、何を当たり前な事を聞くんだと言わんばかりに淡々と答える。


「お前がよくよく考えて決めた事に、俺が反対する訳無いだろ?」


「そう言ってくれると思っていたさ。」


戦闘の後で、気分が高揚していた事は否めない。そんな時は客観的な意見が欲しいものだ。もしかしたらとんでもない事を言っているかもしれないから。だが、斉藤が賛成してくれて良かった。尤も奴の事だから、俺がそうする事くらい既に読んでいたかもしれないけどな。


「よし、それじゃあみんな、今から総反撃だ!」


「「「おおっ!!」」」



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