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第60話 やっと二人きりになれたね

上空のワイバーンの群は既に破壊されている本庁舎には興味がないようで、駐屯地北側の戦闘部隊への攻撃に血道を上げている。ワイバーンの攻撃は、1頭が降下しながら火球を放つと急上昇し、別のワイバーンが次々と同じ攻撃を繰り返して絶え間の無い攻撃を加えている。


「よし、身体強化して一気に駆けるぞ。」


俺は皆に身体強化の指示を出し、再び全員で戦闘指揮所の入口へと走る。一刻の猶予も無い状況なので、身体強化の魔法が使えないアーニャを俺は両腕で抱き上げる。


「では、失礼いたしまして、」

「!」


アーニャはいきなり抱き上げられ、俺が高速で走り出すと、驚いたのか俺にしがみついてきた。


「「「…(ずるい、後で私も)」」」



戦闘指揮所の入口に着くと、直ちに真琴が解錠に取り掛かる。俺が地上で警戒に当たっていると、防御壁の方から爆発音が連続して起こり、ギシギシガシガシという様な不快な音が聞こえてきた。遂に蟲型魔物群の先頭が地雷原を強引に突破して防御壁に到達し、乗り越えようとしているのだ。


間を置かず、次々と駐屯地内に侵入する蟲、蟲、蟲。俺の前には2mもあろうかというカマキリが降り立った。両腕の鎌をもたげ、今にも襲いかかろうと構えている。


戦闘指揮所の入口に続く地下への階段には、解錠作業をする真琴、そのサポートをする舞、アーニャが入っている。従って、今地上にいるのは俺とエーリカだけ。


「リュータ、やっと二人きりになれたね。」

「あまりロマンチックなシチュエーションじゃないけどね。」


エーリカが言ったように久々の二人だけの時だが、目の前には文字通りのお邪魔蟲が一匹。カマキリは二人だけのシチュエーションを邪魔せんと俺に鎌を振り下ろし、俺はカマキリの内懐に入り込んで雷丸で胸部と腹部の結合部を両断。続いてこちらに向かって跳躍して来た巨大カマドウマを火炎放射で燃やし飛ばした。


エーリカは光の矢ではなく、風魔法の風刃で襲い来るカマキリを次々と切断。カマキリの身体は細いので、光の矢(=光線)よりも風刃をカマキリに対して斜めに当てて切った方が効率がいいとの事。



その間にも、とうとうダンゴムシの魔物が防御壁を、重なり合った仲間の身体を足場にしてよじ登り、駐屯地内へ侵入を開始した。


黒く硬そうな外殻に覆われたミニバンほどもある巨大なダンゴムシ。きっと何かしら名前があるのだろうが、エーリカにもガーライルにも尋ねる機会を失して今に至る。ダンゴムシの名前なんてどうでもいいのだが、外殻は頑丈そうなので内側から念力発火で燃やしてやろうとかと構える。


と、突然凄まじい発砲音が響き、ダンゴムシは横に吹っ飛んだ。発砲音がした方を向くと、砲塔を防御壁に向けている一台の10式戦車が見えた。自走砲などはワイバーンの攻撃で全滅したようだが、機動性が高い戦車や戦闘車は健在のようだ。


その後、俺とエーリカがカマキリとカマドウマを屠っている間、10式戦車は防御壁を乗り越えて来るダンゴムシを駐屯地内に侵入する前に次々と狙い撃ちして撃ち殺していった。


"竜太、エーリカ、開いたわよ!"


真琴から解錠に成功した念話が送られてきた。しかし、ダンゴムシは戦車が一体一体狙い撃ちにして侵入を阻まれているが、カマキリとカマドウマの侵入は続いている。そして俺とエーリカも、襲い来る其奴らとの戦闘でとてもこの場を放棄して地下へ行く余裕はとても無かった。


"真琴、俺達はこの場を離れる余裕が無い。指揮所へ行って新村司令と接触してくれ"


"舞はアーニャを連れてラミッド達と一緒にいてくれ"


"わかったわ"

"わかりました"


一方、ダンゴムシの侵入を阻み続けている10式戦車にワイバーンが攻撃を加え始め、10式戦車はダンゴムシへの攻撃を中止して空襲からの退避行動に移ってしまった。その結果、遂に駐屯地内にダンゴムシの侵入を許す事態になってしまった。


俺は火炎を放射して接近するカマドウマを燃やし続け、エーリカは風刃でカマキリを刻み続ける。しかし、蟲の侵入は続き、俺達は徐々に包囲の輪を狭められていった。


(不味いな、流石にこの状況は)


俺はこの事態に、またエーリカに地下へ行ってもらって外から扉を閉めようかと思案していると、


"リュータ、良からぬ事は考えない事ね"


先に釘を刺されてしまった。


このままでは皆の身が危ない。俺の力もたかが知れたものだ。俺にもっと強力で広範囲に及ぶ魔法が使えたら、ここに斉藤がいたら、二人の魔力を合わせて大技が使えるのだが、そんな追い詰められた者の思考に捉われ始める。


と、その時、強力な魔力を感じると共に、凄まじいブレスが地上を舐めた。


突然の事にエーリカは「きゃっ」と悲鳴を上げて蹲る。壁を乗り越え、飛び越えて侵入した蟲型魔物群はブレスにより焼かれ、見た限り動くものは無かった。


俺はこの魔力を知っている。何度もあった事があるのだ。すると、俺達の頭上を巨大な影が過り、その姿を現した。


"バーン、ゾフィー、来てくれたのか!"


"リュータ、間に合って良かった"


バーンとゾフィーは翼をはためかせて地上に降りる。そして、それぞれの背中から二人の人物が降り立った。二人共、俺もエーリカもとても良く知る人物だ。


「リュウ、騎兵隊の到着だぞ。」

「タケ!」


「お姉ちゃん、助けに来たよ。」

「ユーリカ?」


このタイミングで、何とも心強い援軍の到着だ。ここは何と言うべきか。「もう何も怖くない!」か、いや、この場合は「なんか行ける気がする!」だな。







お読みいただきまして、誠に有難うございま

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