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第56話 モスマンとガーゴイル

アラン兄さんは剣を振るって2頭目のワイバーンを空中戦で仕留めたが、その間に3頭目が火球を放ち、駐屯地の本庁舎に直撃した。本庁舎はこれにより全壊し、屋内から戦闘指揮所へ交通する地下通路の出入口は完全に潰れてしまった。


俺達は屋外に避難していた事が幸いし全員無事であったため、そのまま屋外から徒歩で戦闘指揮所を目指す事に。本庁舎から直線距離にして200m程あり、避難シェルターもあって官僚さん方や駐屯地の非戦闘員が避難しているという。


竹内中尉と真琴の先導で戦闘指揮所の出入口に至ると、3頭目のワイバーンを屠ったアラン兄さんが上空から降りて来た。


「凄いなアラン兄さん。」


「あれぐらいどうってことねぇよ、と言いたいところだが、流石に魔力がすっからかんだ。大将、後は頼むぜ?」



円墳のような小山に戦闘指揮所の出入口は設けられていた。地下に向かって下る階段は分厚いコンクリート壁で囲われ、その奥に鋼鉄の扉が鎮座している。竹内中尉の話だと、その向こうに通路があり、戦闘指揮所や避難シェルターがあるのだという。


すると、俺は再び上空から夥しい魔物の魔力を感知した。


(ワイバーンの次は何だ?)


見上げると、上空には人型の黒い影が幾つも現れて羽ばたきながら飛んでいる。


「あれは一体何て魔物なんだ?」


俺は手っ取り早く一番近くにいたアーニャに尋ねた。アーニャはいきなり尋ねられて驚いたのか、「えっと、えっと」と焦ったようになってしまいながらも上空の魔物について教えてくれた。


「あれはモスマンっていう蛾の魔物よ。単体では大して脅威じゃないんだけど、毒の鱗粉を辺りに撒くから厄介よ。」


大雑把だが一度でモスマンという魔物について説明出来るとは、アーニャはなかなか頭がいい娘のようだ。


「わかりやすい説明だった。有難うな。」


「べっ、別に知ってる事を言ったまでだから。」


アーニャはそう言うと、またプイっとそっぽを向いてしまった。アーニャには嫌われたままのようだった。



モスマンとは、確かアメリカのUMAだか都市伝説でもあったような。ばっさばっさと羽ばたいているが、あの一ばっさにつきどれだけの毒鱗粉をばら撒いているのやら。遠目を用いて見てみると、何やら全身黒い粉っぽい体毛だらけで、頸部が極端に短く、その上に赤く光る大きな両目が目立つ頭部が乗っている。背中から同じく黒い両翼が生え、身長は2mくらいあるだろうか、意外とでかい。そんなのが何十体と上空を飛んでいるのだ。実に不気味な光景と言えるだろう。


空中戦が得意なアラン兄さんは、先程のワイバーンとの戦いで魔力を使い果たしたため、「魔力がすっからかんだから無理だ」との事だった。地上からモスマンを撃墜しようにも、案外とモスマンは動きが早く避けられてしまう。


地下の戦闘指揮所や避難シェルターの空気取り入れ口がどのようなエアフィルターを使っているのかわからないが、毒を撒かれていいという事ではないだろう。


と、その時、一体の黒い影が急降下で俺達に向かって襲い掛かって来たのだ。


「水刃!」


すかさず舞が得意の水魔法「水刃」で襲撃者の胴を払い、胴を両断された其奴はグエッと呻いて地上に落下して絶命した。


其奴は全身黒い角質の皮膚に覆われ、爪は鋭そうに長く、蜥蜴と人を掛け合わせたような頭部には前額部から一本の角が生えている。そして、コウモリのような両翼が背中から生え、身長は猫背のようなのでわかり難いが150cmほどだろうか。


「なんなの、この魔物は?」


舞は自分が倒した魔物を気味悪そうに見ている。


「大将、これはガーゴイルです。」


ガーライルによると、この魔物はガーゴイルというらしい。こっちの世界でガーゴイルといえば、ヨーロッパの古い建築物で見る怪物のような石像だが、同じ名前のこの魔物は幾らか愛嬌が無くもない石像と比べて如何にも凶暴そうで、且つ圧倒的な邪悪さを感じる。


上空にはよく見ると、モスマンに混じってガーゴイルも多く飛び、ギャーギャーと不快な鳴き声を上げていた。

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